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しゅっぱつ

 慌ただしく、なし崩し的に決まった勇の旅だが、準備は万全だった。

 元々、自分を合わせて4人で旅をする予定だったために一人では大きすぎるテント。どうやら魔法的なものがかかっているらしくテント自体に魔物を寄せ付けない効果が付加されていて、中にはお風呂、トイレも完備されているらしい。

 魔法のマッチ。何度でも使えるらしく野営時に火がなくて困ることは、ないみたいだ。サバイバルみたいに木をこすり合わせて火をつけることにならないから良かった。普通の現代人に火起こしなんて難題だ。

 あとは数日分のパンと干し肉。

 何の干し肉かはあえて聞かなかった……。

 ノカコド村までは、徒歩で一日ほどの距離らしく街道を進むだけでたどり着ける。方向音痴でもない限り食料が足りなくなると言う事はないだろう。

 そして、これらの物を詰め込める魔法の袋。言ってしまえばよくあるアイテムバックの様なものだ。重量と質量を無視して物を運べるアレ。定番といえば定番だけど、これがあるだけで色々なものが持ち運べ、ほぼ手ぶらで済むのは現代人の勇にとって助かった。


 アイテムを貰い、お姫様から注意事項や街道からはずれたところにある森などの話を聞いていると初めて王様が喋った。

「勇者、勇よ。汝にこの装備を与えよう、この装備を使い世界に平和を与えてくれ」

 初めて王様が喋ったことにびっくりして、まじまじと王様を見る。


 見る。


 見続ける。


 じーっと見続ける。


 すると王様の顔が段々と赤くなっていく……「いつも、後ろで偉そうに座っているだけと思ったけど、もしかして恥ずかしがり屋で赤面症? 王女のアドリブの効かなさは遺伝の賜物か……」

 声が出てしまっていたみたいだ。

 周りの兵士たちが笑いを堪えている。まずいな……。

「ありがとうございます、王様。必ずや魔王を倒し世界に平和を取り戻します」

 なかったことにしよう。勇者らしいことを言っておけばいいだろう。

 装備を受け取り、着替える。

 鎖帷子を着込み、上からブリガンダインを着込む。ブリガンダインはベストのような形をしていて胴体を守るように、くすんだ色をした金属片が繋ぎあわされている。動きやすさを阻害せず、胴体のみ防御力を高めた感じだ。

 鞘に収めるのはミスリルの長剣。白銀に輝く切れ味が良さそうな両刃、鍔には細工がされていて鳥を模している。

 準備を終え、お城から出て行く。見送りは誰もいない。

 お姫様に言われたが、本来ならば華々しくパレードを行い僕の出発を、国を挙げて送り出す予定だったらしいが聖剣が女戦士に持ち出され、それを追うとなれば話は別だ。

 一人で城門へと歩いていった……。

(初めての旅かぁ。剣の型を少し習ったくらいの僕に魔物を倒すことができるのだろうか……大体、知らない世界につれて来られていきなり一人で旅をしてこいって無茶振りすぎる。一応、聖剣を取り戻す為に交渉するお金はもらってきたけど、よくよく考えると僕はこの世界の貨幣価値だって分かっていない。いろいろと無茶を言われたものだ……)

 そう考えながら歩いていると城門が近づいてくる。

 城門の側でオロオロとしている一人の少女がいた。


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