ひっこぬき
朦朧とした頭で、自分の番が来たことを確認する女戦士。
聖剣が突き刺さる台座に向かおうとすると、行列の整理をしていた神官が大声を上げる。
「勇者様ご到着です!! 伝説の聖剣チャレンジイベントはここまでになります。ここからは、勇者様が聖剣を抜き世界に平和をもたらす最初の瞬間をごらんくださぁぁい!」
女戦士の並んでいた列の後ろからは歓声が沸き、つられる様に勇が頭をかきながら聖剣へと近づいていく。
勇が聖剣の柄を握り締めた時、状況を理解した女戦士は怒鳴り声を上げる。
「ちょっと待て、次は私の番だ! 長い列を待ってやっと抜く順番になったのだ、勇者は私が挑戦してからでいいだろう!」
後ろからの怒鳴り声に、柄から手を離し少年は振り向いた。
そして声の主の女戦士を視界に入れ、呆けた顔で固まった。
「おい、ジロジロ見てないでなんとか言ったらどうだ! 私が挑戦してからでも遅くはないだろう?」
「あっすいません。そうですよね、イベントみたいですし、本気で聖剣を抜こうとしてる人だっていますよね。順番待ちしてる皆さんだって挑戦してみたいですよね。僕は来たばかりだし待てるのでお先にどうぞ」
日本人気質とでも言うのだろうか。それとも見惚れていたのを誤魔化そうとしたのか……勇は顔を真っ赤にしながら、慌てて言い繕う。
「他にも聖剣を抜きたい人いたら、お先にどうぞ。僕は最後でいいので」
「よし!! 挑戦していいのだな」
女戦士は、不機嫌そうな顔をウキウキした顔に変えて聖剣が突き刺さる台座に近づいていく。
「大剣が折れて金もないから新しい武器買えなかったけど、ちょうどこんな良いイベントをやっていて良かった。さて抜くか」
女戦士は小さく呟きながら、伝説の聖剣の柄を握り締め力をいれていく
「はぁぁぁ!」
雄叫びをあげながら聖剣を引っ張っていくが、伝説の聖剣はビクともせずに台座に突き刺さっている。
「かったいな!」
さらに渾身の力を込めて聖剣を引き抜こうとする。
すると、聖剣の刺さっている台座から砕ける様な音が聞こえてくる。
「これでどうだああ!」
硬質な破壊音を響かせながら、台座ごと聖剣を引き抜いた。
静寂に包まれる中、女戦士は声を張り上げる。
「よしっ抜けた! じゃあ、もらっていくぞ!」
台座が付いたままの聖剣を担ぎながら、彼女は神殿の入り口へと歩いていく。
神殿を出て行く後ろ姿を見送りながら、勇は思わず呟く。
「えぇーそれはないでしょ……」




