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そらまめ

 窓を開け、朝の清清しい空気を室内へと呼び込む。

 深呼吸をし、新鮮な空気で肺を満たし、ぼんやりする頭を覚醒させていく。

「眠たい……」

 結局、昨日は明け方まで光り続けた。自分の輝きが眩しくて眠ることができなかった……あの魔法、何の意味があるんだろう。

 光る魔法について考えていると僕の部屋に向けて足音と重たい物を引き摺る音が近づいてくるのが聞こえる。

 またドアを壊されてはたまらない。

 そう思い、ドアが破壊される前に開けた。

 タイミングが悪かったのだろう。ノックと言う名の裏拳が僕の顔に突き刺さり、窓の近くまで吹き飛ばされた――


 ゆっくりと意識が覚醒していく。女戦士に殴られ気絶してしまったみたいだ。

 どうやら女戦士に抱えられ、揺すられているようだ。揺すられる度に、僕の頬に幸せな感触が伝わってくる。

 張りと弾力があり跳ね返るというよりは、もち肌というのだろうか。

 適度な大きさのそれは、僕の頬と接する度に優しく、そして柔らかく包み込むように迎え入れてくれる。

 なんだ、この幸せな状況は!?

 もう少し、気絶した振りをしておこう……いや、不味い。僕を揺する力が、徐々にだが強くなってきている。しかしその分、さらに力強く適度な大きさの膨らみがより深く沈みこみ、僕の頭を包み込んでくれる。

 早く目を開けて起きたことを伝えなければ……

 ……いや……でも――

 僕を揺する力はどんどん強くなっていった。



 気がついたら旅の準備をして城から出て行くところだった。隣には決意に燃えた瞳の女戦士がいる。

 状況がまったく分からない……記憶が飛び飛び過ぎる。

 なぜ城から出ていこうとしているのか分からないが、僕は満足だ。あの膨らみの感触を一生忘れないように、あの時、脳内に刻み込んだ。

 眼を瞑って思い出そうとすれば精彩に甦る。

「さぁ勇、魔王を倒しに行くぞ!!」

 永久保存した記憶のメモリーを思い出そうとしていると、女戦士が力強く言ってくる。

 僕は決意を固めた目を女戦士に向け、力強く頷いた。

 再度言おう。状況はまったく分からないが、僕は満足だ!!




 城下町を通り抜け、街道へと繋がる門へとたどり着く。

「おねえちゃーん!!」

 振り返り確認すると、遠くの方からこちらへ向け走ってくる青いダチョウが見えた。ダチョウの上には少女が乗っている。

「おお、ペティ」

 近づいてきたダチョウとペティに話しかける女戦士。

「おねえちゃんたち、魔王を倒しに行くんでしょ。ジェリービーンブロッサムを連れて行って!!」

 女戦士は少し驚いた顔をしながらも答える。

「確かに、そのダチョウは速いし旅が楽になるが……しかし、いいのか? せっかく商人から取り返してきたのに、すぐに離れ離れになってしまって……それに魔王退治の旅だぞ、二度と会えないかもしれないぞ?」

「……いいの。今度はちゃんと行き先が分かっているし、ジェリービーンブロッサムはきっと役に立つわ。……それに本人が望んだことだし」

 悲しそうな顔をしながらも女戦士に答えるペティ。

 隣ではステップを踏み、踊りながら楽しそうに鳴いているダチョウがいる。

……このダチョウ、本当はペティのこと嫌いなのだろうか? すごく嬉しそうだ。

「そうか、ならば何も言うまい。これからよろしくなジェリービーン。長くて言いづらいな……」

「これからよろしくな、ソラマメ!!」

 面倒くさかったのだろう。勝手に名前を変える女戦士。

 満面の笑みのペティ。

 やっぱりペティのことが嫌いなのだろう。名前が変わって激しく喜んでいるジェリビーンブロッサム改めソラマメ。

 そして、メモリーを再生させるために瞑想へと入る僕。


 魔王退治の為の本格的な旅が始まった。

 僕たちの冒険はこれからだ!!


 勇がどんどんきもくなっていく不思議。

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