さかば
私の名前はパーネイル。
これでも国の重騎兵隊の一軍を預かる騎士隊長だ。
勇者様と女戦士を城へと招待するよう王女に命じられ、勇者様を見つけたところから記憶がない。
気がついたら城の訓練場にいた。
二度目になるがまったく記憶がない。
気がついたら勇者様と剣を合わせていた。
状況はまったく分からないが、勇者様の訓練に付き合っているのだろう。
勇者様が異世界から召喚されて、まだ数日しか経っていないが、剣を切り結んでいて思う。
たった数日で私の剣の腕を越えてらっしゃる。
力任せに攻め叩き斬るというよりも、こちらの攻撃を受け流し、隙をつき斬り返してくる。受身だが冷静にこちらの攻撃に対処し鋭い反撃を繰り返してくるスタイルは性格が現れているのだろうか?
本当に……
本当に魔王退治に同行しなくて良かった……
旅に出れば志半ばで死ぬこともあるだろう。
だが私は死ぬのが怖いわけではない。
栄誉ある魔王退治の旅だ。騎士にとってこれほどの栄誉はない。
勇者である勇様の盾となり死ねるのならば、騎士としてこれほどの誉れはないだろう。
……だが。
再度言うが死ぬのが怖いわけではない。
私は……
戦力外通告をされるのが怖かった。
能力が足りず、勇者の成長と共に自身も強くなれず、パーティーから外されたときに私はどうしたらいいのだ。
私に今以上の成長があるのだろうか? 騎士隊長となり国の騎士の中でも私の強さは上位の方だ。だが数日でここまで強くなられた勇者様に見合う成長は望めないだろう……
旅の最中に新たな仲間ができることもあるだろう。物語では大抵の場合、そういった仲間は今いる仲間よりも強い、もしくは著しく成長する。若さに溢れ、才能にも恵まれた仲間が増えていくのだろう。
魔王を倒す旅だ。
そうでなければいけない。むしろそうではないと魔王退治など夢のまた夢だろう。
才能溢れ、強くなっていくパーティーの中で、これ以上の成長が望めない私はどうすればいい。能力が足りず、成長が足りず、仲間たちに着いていけず、馬車の中でサポート役に回り、それでも空きがなくなり酒場に預けられたら、私はどうすればいいのだ!!
城に戻ることもできず、勇者パーティーに戻ることも出来ず、ただ自分をごまかすために明日迎えが来ると信じ、酒に逃げる未来しか想像できなかった。
そんな毎日が来ることが怖かった。
悩み続ける私に悪魔が囁いた。
――期待されない性格になればいい、それで重圧から開放される――
そして私は髪を茶色に染めた。
言葉遣いを城下町にいるテリーの真似をした。
同僚たちに魔王退治まじたりぃ。と嘯いた。
私の新たな人格形成は、功をなした。たまたま状況も良かったのだろう、他のメンバーたちも各々で理由を作り、勇者パーティーから外されていった……
思い耽ってしまい、訓練中にも関わらず棒立ちになってしまう。
「さぁ、ここからは俺のワンマンショーだっ!! 輝き失わない俺!!」
「勇者の目覚め!!」
突然、勇者様がわけの分からないことを言い出した。
やはり魔王退治の重圧で頭がやられたのだろうか? 人々の期待を背負っているのだ、それもしょうがないのかもしれない。
……ハッ!! 新しい魔法か!!
私は身を硬くし、未知の魔法に備える。
勇者様がまるで、スポットライトを当てられたかのように光り輝いた。
「…………」
「…………」
訓練場を静寂が包み込む。
勇者様は光り輝いている。
「……効果はなんすか?」
「……この魔法……自分が光るだけみたい……」
勇者様は光り輝いている。
「輝いてますよ、勇者様!! 存在感パネェっすよ!!」
「…………」
勇者様が輝いている。
存在感は抜群だ!!
――勇者様の輝きは、夜が更けても途絶えることがなかった。




