こうしょう
部屋に入ると、お姫様の書類へと向けていた視線が、僕らへと移る。
そして眉をつり上げ、話しかけてくる。
「どうぞ、お座りください」
僕は周りを見渡しながらソファへと腰を下ろす。女戦士も僕に続く。
ここはお姫様の執務室だろうか。よく言えば実用的な、悪く言えば豪華さがないシンプルな部屋だ。豪華な絵画や煌びやかな置物などはなにもなく、今、僕たちが座っているシンプルなソファに、飾り気のない木のテーブル。奥には広々とした机があるだけだ。
一国の王女が仕事をする場所にしては少し寂しさを感じる。
そんなことを考えていると、後ろに控えていたメイドがお茶の準備をしている最中にも関わらず、お姫様が話しだした。
「まずはお越し頂きありがとうございます、女戦士様。……それともこうお呼びした方がいいのかしら、亡きタビロホ国の王女……『ガシャン!!』様」
お茶の準備をしていたメイドがカップを落とす。驚いて注視していた僕にメイドは言葉を発さずに綺麗にお辞儀をし、カップを片付けだす。
それよりも、女戦士が王女!? 僕はびっくりして女戦士を凝視する。
「調べたのか?」
「ええ、燃えるような赤い髪は珍しいですし、赤い瞳も珍しいです。調べによると宛てもなく旅をし、行く先々で魔物を倒しているようですが、救えなかった祖国の恨みですか? それとも罪滅ぼしですか、亡き国の王女様?」
王女の皮肉めいた物言いにも顔色ひとつ変えず女戦士は答える。
「分からないな……恨みなのか償いなのか……拳を振り下ろす先が見つからず、八つ当たりしているだけなのかもな。それと私のことは女戦士でいい。すでに国はないのだ、私はただの冒険者だ」
少し寂しそうに、自嘲気味に笑う女戦士。
話の内容は良く分からないが、僕もつられて悲しくなる……が、大事なことを忘れてはいけない。さっきは聞きそびれたのだ。
「ちょうど聞き取れなかったんですけど、女戦士さんの名前は――」
言い終わる前に、お姫様の顔が鬼の様な表情に変わり、睨んでくる。
あまりに恐ろしく、憎しみが込められた、その表情に思わず口を閉じてしまう……なにか悪いことをしただろうか……
一瞬、目を離した隙に、僕を睨みつけていた鬼などいなかったかのように王女の表情が変わる。
「振り下ろす拳の先ならばあるではないですか。3年ぶりに魔王が誕生し、そして幸いなことにあなたは我が国に伝わる伝説の聖剣を持っている。恨みだとしても、罪滅ぼしだとしても、力の使い先はあるはずです。ついでにそこで座っている黒髪の勇者風の青年がお供するでしょう。彼には魔王を倒す理由があります、きっとあなたの手助けを快く引き受けるでしょう……魔王の脅威から世界を救うのです!! かつて祖国を救えなかった罪をやり直すには、立ち上がらなくてどうするのです!!」
お姫様は熱意が篭った様子で、だけどすごく投げやり気味に女戦士に熱弁する。目尻には少し涙が溜まっている。
やっぱりなにか気に触ることを言っただろうか? 勇者風の青年って……僕、勇者だったはずだよね? 聖剣を返して貰うためにここに来てもらったのではないのかな……
「……少し考えさせてくれ」
女戦士が思案気な顔を浮かべながら答える。
さっきから勇者であるはずの僕を無視して話が進んでいく……
「ええ、今日は城でお泊りください。部屋を用意いたしましょう」
そして僕は空気になった。
(ピコーン!! 勇者の目覚めを覚えたッス)
傍らで気絶しているはずのパネェの声が頭に響く。
なんか新しい魔法を覚えた!!
話も一段落したところで、僕はストレス解消……もとい剣の修行と新しい魔法の実験の為に、気絶しているパネェを訓練場へと引き摺って行った……
勇には作者の気分で色々と呪いが降りかかる
次のでなるべく、コロコロ視点変更するのを終わりにしたいな




