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まほうとやえい

 覚えた二つの魔法は、雷魔法と光魔法。

 威力がどのくらいあるのかもわからない魔法を実戦でいきなり使えない。

 一度は試しておこう。

 街道から少し外れた草原に向けて攻撃魔法と教えられていた雷魔法を試す。

 勇は頭の中に浮かび上がってくる呪文を詠唱する。

「魔術師魔術修行中、魔術師魔術修行中、まじゅちゅしまじゅ…」

 詠唱って早口言葉かよ? そして噛んだ……。

 これは練習しないと戦闘中に魔法の詠唱は難しそうだ。

 もう一度、集中して……詠唱に入る。

「魔術師魔術修行中、魔術師魔術修行中、魔術師魔術修行中!」

 ちゃんと言えた!! 

 続けて勇は呪文名を唱える。

「勇者ライトニング!」

 晴れ晴れとした空から、なぜか雷が降り注ぐ。空から降ってきた雷は、勇から10メートルほど離れた前方の草原に落ち、草と地面を焦がした。

 もう一度、今度は右斜前方に向けて雷魔法を唱える。

 雷は勇の思った方向に落ちた。

 今度は、目視できる限界に雷を落とそうと雷魔法を唱える。

 雷は最初と同じく10メートルほど離れた前方に落ちた。

(どうやら雷を落とす位置は、ある程度だが操作することができるみたいだ。飛距離は10メートルほどが限界みたいだ。初めて使える魔法だし、もっと強力な魔法を覚えたら飛距離も伸びるのだろうか?

 ……通電することを考えると、落としたところ周囲の敵にダメージを与える範囲魔法と言ったところだろうか。)

 勇は、名前はともかくファンタジーな魔法が実際に使えたことに感動する。


(さぁ次は光魔法だ。光魔法は肉体を回復する魔法を覚えたみたいだ。魔法を唱える相手もいないし、自分に唱えてみよう)

 詠唱を開始する。さっきとは違う呪文が頭に浮かんでくる。

「さぁ、その疲れた体を僕の愛で包み込んであげよう。」

「イケメンの癒し(笑)」

 なんだ(笑)って? イケメンの癒やしかっこ笑いかっことじ。とか長すぎじゃね?

 完成した呪文を自分にかけてみる。

 しかし、魔法は発動しない……早口言葉とは違い、詠唱を間違えてもいない。どういうことだ?

 失敗したのか? と勇が首を傾げていると、頭の中に言葉が浮かんできた。

(自分を自分の愛で包み込むとか、ナルシストっすか? さっっすっっがぁイケメン(笑)っすね)

 無性に恥ずかしくなった。




 一時間ほど落ち込んでいた勇は、自分を励まし、引き出しの奥の方に先程の出来事をしまい込み気を持ち直す。

(もう、日が落ちてきている。野営の準備をしないと……)

 魔法を撃った草原で、そのまま野営の準備をする。

 準備と言ってもアイテム袋からテントを取り出し、地面に設置するだけだ。

 森にいた時にスライムを倒すついでに集めていた枝をアイテム袋から取り出し、地面に石を置き、囲いを作る。

 その中に無造作に枝を放り込んでいく。一本の枝に油を少量だけ浸し、魔法のマッチで火をつける。

 周囲が見通せないほど煙が出てきた。

 生木だと煙が大量に出るものだったかな? 失敗したなぁ……

 そう思いながら、何の肉かわからない干し肉を火で炙りパンと一緒に食した。

 干し肉はとても柔らかく、噛む度に繊細な味が滲み出し口の中に溶けていった。干し肉っておいしいイメージがなく保存食って感じだと思っていたけど、すごくおいしい干し肉だった。

 何の肉かは……考えないことにした。

 食事を終え、テントの中に入る。中を確認してなかったから回りを見渡し確認する。

 テントなのに内装はしっかりしていた。四つ並んで置かれているベッド。簡素だがしっかりとした作りの木のテーブル。奥にはドアがある。奥はトイレとお風呂だろうか?

 とてもテントの中とは思えない内装だ。

 そしてテーブルの近くに設置されている料理をするために作られたのであろう台所……。

 台所に近づき調べてみると食料保管庫だろうか? 冷蔵庫のような四角い箱がある。中を見ると野菜、生肉、小麦粉と色々な種類の食材が保管されていた。

 焚き火なんかしないで、まずはテントの中を確認するべきだった。

 なぜ干し肉とパンだけ別に渡したんだ……。

 城の人たちの軽い嫌がらせについて考えながら、その日は就寝した。


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