その声の先にあるものは。
長編が最近書けないのでリハビリで短編を書きました。
短すぎますけどね。
――にゃーん――
「……猫?」
猫の鳴き声が聞こえた気がした。だけども辺りを見回しても特に猫がいる様子はない。
「なんだろ?」
すぐ後ろの方から聞こえた気がしたんだけどな。もっと離れた場所から聞こえたのかな? でも猫の鳴き声ってそんなに遠くまで届くものじゃないよね、
――にゃーん?――
「あ、また」
やっぱり聞こえた。気のせいじゃないと思うんだけど、どこから聞こえてるんだろう?
「こっちかな?」
どこから聞こえたからはよくわからないけど、なぜか呼ばれた気がした。だから何となくではあるけれど、歩いて向かってみよう。
「今日も、暑いなぁ」
この辺りは自然が豊かで、日陰が多くて涼しいほうなんだとは思うけど、クーラーの効いてる部屋にばっかりいると外ってだけで暑いや。
「にゃんこはどこかなー」
歩いている人はほとんど見かけない。お店も殆ど開いてない。まるで自分が世界に取り残されてしまったようだ。なんちゃって。
――みゃーん――
「あれ、鳴き声が変わった?」
なんか子猫に変わったような感じがする。といっても、鳴き声しか聞こえないからわかんないんだけど。聞こえる鳴き声の大きさも最初から変わらないから、近づいているのか遠のいているのかもわかんないし。
「佐山さん?」
「あ、柊君」
うん。やっぱり取り残されていたりなんかないよね。当たり前。
猫を探す道すがらあったのは同級生の柊君。恰好よくて、面倒見の良い、クラスで人気の男の子。だけど……
「佐山さんはこんなところでどうしたの?」
「うんとね、なんか猫の鳴き声が聞こえた気がしたから、探しがてら散歩中かな。柊君はどうしたの?」
「……猫の声? あ、ごめん。僕はちょっとね、なんかこの付近で変な気配を感じたから確認しにきたんだ」
……とまぁ、こんな感じでちょっと電波の入ったことを言うことがある。
「そ、そうなんだ? 頑張ってね?」
「うん。なんか気配が希薄で時間かかりそうだけど、がんばるよ。佐山さんも気を付けてね? できれば今日は帰った方がいいと思うけど……」
あ、この感じ、長くなりそうかも。
「うん、ありがとう! 邪魔したら悪いから私はもう行くね!」
「あ……」
柊君には悪いけど、電波な話を聞く気はないよ! 本当にそれがなければいい人なんだけどなぁ。
「んー、だいぶ歩いたなぁ」
柊君と別れてから一時間くらい歩いていただろうか? その間猫の鳴き声は聞こえなかったので、離れてしまったかな?
「そろそろ帰ろっかな。せっかくの休みに私、なにしてるんだろうなぁ」
――なー――
「あれ? 帰ろうとした途端かぁ」
――にゃーん!―― ――みゃー!―― ――なーなー!――
「わっ! な、なによもー……」
そして突然の大きな鳴き声。いきなりなんなの?
「え、こっち? こっちに来いって?」
――にゃー――
確かに最初に聞こえた時にも呼ばれた気がしていたけど、今度はもっと確かに“こっちに来て”って言われた気がした。そんなわけはないんだろうけど、なんか気になる。
「どこに連れて行こうって言うのかなぁ」
歩くこと数分。着いた先は寂れた公園だった。休みだというのに、人っ子一人いない。
「なんか、この公園、涼しい?」
いや、むしろ薄ら寒い? なんなんだろう、この公園。というかこんなところに公園なんかあったっけ?
――にゃーん――
「あ、いた!」
最初に聞こえた鳴き声と同じ声が聞こえた先を見てみると、黒猫がいた。
「かわいー!」
そしてその周りには数匹の猫がいた。子猫もいるみたい。可愛いなぁ。
――にゃーん――
「え? こっちに来い? 行ったら撫でていいかなぁ?」
可愛いにゃんこ。せっかく時間をかけてこんなところまで来たんだから撫でていきたいなー。可能なら飼いたいところだけど、たくさんいるから無理だもんなー。
――ざざ――
「え?」
何かが聞こえた。雑音? 気のせい?
「なんだろ? いや、それよりも撫でさせてねー?」
多分気のせい。そんなことどうでもいいからにゃんこですよ、にゃんこ。そして黒猫に手を伸ばした、その瞬間。
――ざざ――
「え?」
――ザザザザ――
「……え?」
そこには黒猫が一匹。あれだけたくさんいた他の猫たちは見えない。いや、そんなことよりも。
――ザザザザザザ――
雑音が耳に響く。五月蠅い。なに? なんなの? 私はにゃんこを撫でようとしただけ。なんで、その、向けた手が、なくなっているの?
――なー――
待って、どこに行くの? そっちに行けばいいの?
――ザザ……――
でも、身体が動かないよ? それに、そこにいる、しろいかめんをかぶったあなたは、だあれ?
――ザー…………――
そこにはもう。だれもいない。
▼▼▼▼
ある、夏の日。いろいろな種類の猫に囲まれた女の子の死体が見つかった。その死体には右手がなかった。
“佐山 恭子” 享年17歳。
死因は不明。手を斬られたことによる失血死と思われたが、その右手は斬れたというよりも、最初からなかったかのようにあまりにも綺麗な断面で、かつ出血の様子はなかったという。
自殺か他殺かもわからない、謎の死を遂げた少女は。翌年、またその翌年、たびたび町で見かけるとこがあるという。その際には必ず、か細い猫の鳴き声が聞こえるという。
猫の姿は決して見えない。少女は笑って何かを撫でているかの様子だというのだから、きっとそこには猫がいるのだろう。見えないのは猫だけではなく、その右手も、であったのだが。
……まぁ大して怖くはないですよ?
というかホラーが苦手な私がなんでホラーを書こうとしたのか。
意味が分かりません。




