第27話『R.I.P.』
午後2時。
月原に帰る前に、俺は彩花と渚を連れて唯の墓にやってきた。
当初は真実を知ったという報告をしに俺1人で行くつもりだったけど、2人が唯に挨拶をしたいと言ってきたので連れて行くことに。
「洲崎町の景色が一望できる場所に柴崎さんは眠っているんですね」
「そうだね、彩花ちゃん。海が好きだった人には最高の場所だろうね」
「唯は海が好きだったからなぁ」
きっと、ご家族も、霊園の中でも洲崎の海がよく見えるこの場所に眠らせてあげようと考えたのだろう。唯は海が大好きだったから。
今日のように青い空と青い海を見て、唯は笑顔になっているのだろうか。海は煌めいている。
3日前に見た海は嫌だなと思っていたけど、今は2年前の真実を知ったおかげか、少しはいいなと思えるようになってきた。
唯の墓に辿り着き、3人で唯の墓を綺麗にする。
俺が霊園の受付で購入した花束を花立てに挿し、火の点けた線香を手向ける。
「唯、この2人は俺の通っている高校で出会った大切な女の子だ。赤い髪の方が後輩の宮原彩花で、茶髪の方がクラスメイトの吉岡渚っていうんだ」
俺の両隣に立った彩花と渚は、唯の墓に向かってゆっくりとお辞儀をする。
「俺は彼女達と一緒に、月原高校っていうところで高校生活を送っているよ」
ふと、唯が高校生になっていたらどんな風になっていたのかと思う。美緒と同じ制服を着て洲崎高校に通っていたのだろうか。それとも、俺と一緒に上京して、月原高校に通っていたのだろうか。
「唯、お前は笠間に助けられようとしていたんだな。俺が振っても、諦めずに俺のことを好きでいてくれていたんだな。本当にありがとう。……ありがとう」
唯が最期に抱いていた感情を知って、俺はその返事をしたかった。唯の気持ちを知ったことでいくらか心が救われた。そのことに対して、月原に帰ってしまう前にここでお礼をしたいと思ったのだ。
「じゃあ、みんなで手を合わせよう」
俺は手を合わせ、ゆっくりと目を閉じて、唯のことを想う。
唯、君は今の俺達の姿を見てどんな感情を抱いている? 俺に2人のような存在ができて喜んでいるか? それとも嫉妬しているか? 唯の顔を見られなくて、真実を知った今だって辛いよ。
「会って話してみたかったな、柴崎さんに。それで直人がどんな子供だったのかっていう話を聞いてみたかった」
「私も同じことを思っていました」
ゆっくりと目を開けると、彩花と渚は爽やかな笑顔を浮かべていた。きっと、唯も2人に笑顔を見せてくれていることだろう。
「唯ならきっと、2人とすぐに仲良くなっていたと思うよ。彼女は本当に明るくて、素直で周りを自然と笑顔にしてくれるような女の子だった」
そうだな、みんなアイドルのような存在と言えばいいか。だからこそ、彼女が亡くなったことがみんなショックで、俺のことを強く非難してしまったかもしれない。
「じゃあ、そろそろ家に戻って帰りの支度をしよう」
「そうですね。柴崎さん、またいつかここに来ますね」
「そのときは、ゆっくりと直人の話を聞かせてくれると嬉しいな」
彩花と渚は唯がまるで生きているかのように語りかけた。もしかしたら、2人は今、唯とここで友達になったのかもしれない。
「唯、またいつか来るよ」
いつの日になるのかは分からないけど、今よりも笑顔で唯と再会できればいいなと思う。
もしかしたら、唯はここで眠っていながら、俺が洲崎町に帰ってきてからずっと心配してくれていたのかもしれない。俺と笠間が2年前の真実に向き合えるかどうか。思い詰めてしまわないかどうか。でも、2年前の真実を知った今、唯がその心配をする必要はきっとないよ。
「安らかに眠れ、唯」
そして、俺達は唯の墓を後にしたのであった。




