第9話『カラメル-後編-』
ここのホテルにはバスローブが用意されていたので、お風呂に出た俺と彩花はバスローブを着て浴室を出る。
「まさか、バスローブを着る日がこんなに早く来るとは思わなかったなぁ」
「そうですね。いいホテルに泊まっている感じがします」
「それ言えてるな」
もちろん、バスローブを着るのは初体験なので、余計に非日常の雰囲気が。高校生でこんなにも贅沢な時間を過ごしていいのだろうか。
「……とりあえずベッドで横になるか」
「そうですね」
俺と彩花は寄り添うようにしてベッドの上で横になる。
いつもとは違ってベッドはふかふかだし、広いし、見ている天井も高い。そんな中でいつもと変わらないのはすぐ側にいる彩花だけ。
「彩花。俺から離れるなよ」
「……もう、先輩ったら。離れるなって何度も言うなんて。旅行に行ってから、私のことが凄く好きになっちゃったんですか?」
「彩花への好意は常に右肩上がりだよ。まあ、旅行を通じてより好きになったことは事実だけれど」
「ふふっ、そうですか。私も同じです」
「彩花……」
俺は彩花のことを覆い被さるような体勢に。
こうして改めて見てみると、バスローブ姿の彩花もとても可愛いな。普段は見られないのでこれぞ旅行って幹事だ。
「そろそろ……イチャイチャしましょうか?」
「……そうだな」
「でも、その前に……戸締まりできているかをきちんと確認しましょう。カーテンを閉めましょう。覗かれることはないけれど、万が一のこともありますので。あと、電気も消しちゃいましょう。ベッドライトの明かりだけで十分ですから」
「分かった」
戸締まりはもちろん確認すべきだけれど、カーテンを閉める必要はないと思う。でも、彩花の言うとおり万が一のこともあるので、ちゃんとやっておくか。
部屋の扉は……ちゃんと鍵が閉まっているな。窓の方も鍵は閉まっている。カーテンを閉めて、部屋の電気を消しに行く。
「彩花、ベッドのライトを点けてくれ」
「はい」
そして、部屋の電気を消してベッドに戻ろうとすると、そこにはベッドの上で横になっている彩花の姿が。
「ふふっ、バスローブを着てベッドに横になるなんて何とも贅沢な感じです」
「確かに、旅行でしかできないことかもしれないな」
俺も彩花と寄り添うようにしてベッドの上に横になる。バスローブの柔らかさとベッドのふかふかさで……あぁ、眠くなってきた。
「せっかくですから、バスローブ姿でイチャイチャしましょう」
「そうだな」
そして、俺と彩花はバスローブ姿でイチャイチャした。
しかし、このホテルに来たことや海やプールでたっぷりと遊んだ疲れが体の中に溜まっていたこともあって、今夜は寝かせないという花火大会の言葉は果たすことはなく……すぐにぐっすりと眠るのであった。




