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ルピナス  作者: 桜庭かなめ
最終章

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172/302

第42話『再決戦の日』

 8月3日、土曜日。

 本日、午前10時よりインターハイ女子バスケットボール決勝戦の試合が行なわれる。その対戦カードは予選の最終戦と同じく、月原高校と金崎高校による対戦だ。


 予選のときと同じく、金崎高校が勝利して優勝するのか。

 それとも、予選の雪辱を果たし、月原高校が勝利してインターハイを優勝するのか。


 また、月原には吉岡渚、金崎には広瀬咲という今回のインターハイで最も注目されている選手が率いる高校の再戦。

 例年以上に盛り上がると思われるこの決戦の会場に、多くの人が集まっていた。


「なおくん、早めに来て正解だったね」

「……ああ、そうだな。ここまで多く人が来るとは思わなかった」


 いい席を取るために、私達は開場してすぐに会場入りをして、コートがよく見える席を確保できた。月原高校の生徒であるなおくんもいるので、月原高校の関係者の近くの席を取った。

 続々と観戦しにきた人達が会場に入ってきて、あっという間に席が埋まっていった。


「予選の最終戦と同じカードなんだよね。渚ちゃんも咲ちゃんも注目されているから、みんな観たくなるよね」

「ああ。俺もこの2校の対戦は観たいと思って。予選では咲の率いる金崎高校が最後の最後に逆転したけど、本当に互角だった。あの勝利で勢いを付けた金崎が勝つのか。追いかける立場になった月原が勝つのか。俺も予想がつかないな」


 なおくんは落ち着いた雰囲気でそう言っていた。月原高校のサポートをしているから、月原の方に寄ったことを言うかと思ったけど、それだけ金崎高校の実力が相当なものであると分かっているんだと思う。


『おおおっ!』


 試合前であるにも関わらず、そんな歓声が響き渡る。

 何かあったのかと思ってコートを見てみると、月原高校の生徒と金崎高校の生徒がコートに姿を現していた。

 月原高校の方には渚ちゃん、桐明さん、すずちゃんが。今大会ではマネージャーという立ち位置で彩花ちゃんと一ノ瀬さんが渚ちゃん達の側にいる。

 金崎高校の方には咲ちゃん。彼女を一番近くで見守るためか、紅林さんが彼女の側にいるのだ。月原高校の生徒はあるけど、親友を応援したい気持ちがとっても強いんだと思う。


「まさか、紅林さんが金崎高校の方にいるなんて。しかも、コートで」

「仲直りしたことで、金崎高校を応援しようと決意したんだと思うよ。咲ちゃんもそれを受け入れた。高校としては敵だけど、紅林さん個人としては心強い味方なんだと思う。金崎高校のメンバーはきっと歓迎しているんじゃないかな」

「……そうだな」


 コートに金崎高校の選手の側にいるということは、咲ちゃんとの関係が良好であることの何よりの証。それはとても微笑ましく見える光景だった。

 同じく金崎高校を応援する楓ちゃんが、コートを挟んで向かい側にある金崎高校の応援席の側に座っていることを確認する。楓ちゃんは私達のことに気付くと、ニコッと笑って手を振ってきた。


「北川は今日も金崎高校の応援なんだな」

「そうだね。昨日は咲ちゃんの家で泊まったんだって」

「……2人って、中学のときってそこまで仲がよかったっけ?」

「私も思った。でも、いつの間にか二人の仲はとくなっていたみたい」

「なるほどな……」


 中学のときの同級生が応援しに来てくれているというのは、咲ちゃんにとってとても心強いことだと思う。

 コートには両校の選手が続々と姿を現している。

 昨日まではどちらかが試合をして、どちらかが私達と一緒に応援していた。

 しかし、今日は違う。どちらも決勝というコートで戦うんだ。


「渚さん! 咲さん! どっちも頑張って!」


 美月ちゃんがそう言ってコートに向かって大きく手を振った。私やなおくんも一緒に手を振ることに。

 美月ちゃんの声に渚ちゃんも咲ちゃんも気付いて手を振り返す。どちらもなおくんの顔を見たからか、ぱあっと笑顔の花が咲く。


「さあ、そろそろ試合だな」

「なおくんは、この試合はどんな感じになると思う?」

「月原も金崎も異なるタイプのチームだ。けれど、どっちも予選のときに浮かび上がった課題を見事に修正してきているみたいだから、どっちが勝つのかはもう分からない。気持ちの勝負になるかもしれないな」

「そっか……」

「そういう美緒はどう予測しているんだ? 準決勝まで両校の試合を観てきた美緒にとってはさ」

「私にも分からない。どっちも凄いし、渚ちゃんも咲ちゃんも互いのことを凄いって言っていたから。これまでの練習の成果を出し切れた方が勝つんじゃないかな」


 どちらの高校が勝つのか、本当に分からない。

 ただ、鍵となるのはチームワークと個々の能力をいかに発揮できるか。そこなんじゃないかな、と思っている。


『ただいまより、インターハイ女子バスケットボール決勝戦を開始いたします』


 そのアナウンスが流れた瞬間に会場から歓声が上がる。

 両校の先発選手はアナウンスで名前を呼ばれた後、続々とコートに入っていく。両校円陣を組んだ後、それぞれのポジションに入る。

 試合開始のジャンプボールは、月原高校からは渚ちゃん。金崎高校からは咲ちゃんが出る。握手を交した後、審判によってボールを投げられるのを待つ。それを包む静寂の空気は緊張感に支配される。

 審判の手からボールが放たれ、月原高校と金崎高校によるインターハイ決勝戦が開始したのであった。

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