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大儀であるっ  作者: 堀井和神
第五章
178/193

君といつまでも 05

書き上げて即効アップなもんで、誤字脱字はご勘弁を。


 言っておいてなんだが、以前も結界のようなものは切り裂いたな。ふと思い出した。

 あれは、天目先生に呑み込まれたのをジャネットと二人協力してだった。

 それが今は……、なんとも複雑な心境である。

 それを今度は俺がするのか、いや、出来るのか。

「ビアンカ、手を出してくれ」

 ビアンカは言われるままに繋ぐ。

「俺とビアンカのフォースパワーを同調して、ナイフに注入し、切り裂く概念を強調する」

「Yes me load、ご要望どおりに。二人でフォースパワーを循環させることで共鳴させ、威力を拡大します」

 あれ?そんなことができるんだ。考えていたのと違うが、出来るというのなら出来るのだろう。どういう原理なのか今だもってよく分からんが。

 まぁ手っとり早く行くとしよう。今はチエリ経由でFドライブ効果もあるわけだし。

「いくぞ」

 ビアンカは黙って頷き、俺と意識を合わせる。

 契約効果のせいもあってか、すんなり同調はうまくいく。繋いだ手はじっとりとした汗と滑りと熱を感じる。

 雨のせいで体温が奪われているが、それ以上の熱が体から溢れだすのが実感する。

「同調は安定しました。共鳴値が臨界を超えます」

 淡々としたビアンカの声。

「精霊石を見せてください」

 は?なんだって精霊石がここで必要になるんだ?

 訝しみながら、片方の手で胸の精霊石が付いているペンダントを出す。

「これをどうするんだ?」

 ビアカンは黙ったままもう片方の手で精霊石を握っている手を掴んだ。

「唱えてください。phase overlayと」

「ふぇいずおーばーれい?」

 呟いた途端にソレは起きた。


 command com

 start fusion process

 execution call moebius routine

 success return code 00

 set reversing body

 set sync

 run shift

 success return code 00

 execution call 

 set magius engine

 set magius nerve

 set magius drive

 run fusion process

 error! return code 99

 program interrupt occurrence

 …………I’m being hacked by someone

 pause process


『同期処理に割り込みを掛けさせていただきました』

 この声はチエリか。

『献体ビアンカとの融合では、敵勢力に対し有意な戦力にならないと算術しました』

『それはどういうことだ。状況が解っているのか』

 いや、俺も今の状況わかってないけどな。

『従って、こちらで改変させていただきます』

 なっ、なんだってーーーー!!!!!

 話聞けやーーー。


 restart process

 change language japanese

 我は呼ぶ、破潰の斧、圧壊の槌、突貫の槍、断絶の剣、全ての武威よ。

 我は戦いの生者、生きとし生けるものの戦いの象徴。行き手阻むものに力を示さん。

 顕現せよ!

 《剣聖》

 頭の中で響く言葉を認識した途端、自分の有り様が変わっていくのを感じた。眠っているものが起こされ、起きているものが逆に眠らされて切り替わっていく。自分のものであって自分のものでないものに組代わる。

 自身の回路が別のものに置き換わる。まるで裏返っていくような感覚だ。


「がふっ」

 思わず盛大に咳き込む。

 チリチリと肌を焼く感触が、強烈な不快感となって襲う。体を伝う液体が、俺の中から力を奪っている。

 雨が、この雨が俺を攻撃している。そう判断する。

 咄嗟に右手に持つナイフに力を込める。

『制御してっ』

『私が?』

『早くっ』

 頭の中で声が響が、無視して空を見上げて睨み付ける。

「吹き飛べ」

 ナイフ一閃、空に向けて放つ。

 ミヂッ。

 鉄板を折り曲げたような奇怪な音が上空から轟く。風が暴風となって数秒荒れ狂った。雨を切り裂くには至らなかったようだ。

『出力弱めすぎました。適正な制御をしてください』

『………努力します』

『制御式は移譲しています。貴方のアーキテクチャで実行が可能の筈です』

『使っているのよりも新しいので、コンバートが必要になります。先程も出力を弱めようとして絞りすぎました』

『Adminstrator権限を渡してください。こちらでコンバートします』

『それを渡すのは、my loadのみです』

『わたしも貴方の言うmy loadの一部です。問題ありません。気にするのであればonetime-passを発行してください』

『それなら許可できます。どうぞ』

『貴方自身が、my loadの制御をしないのは何故です』

『今はサクヤの制御でmain coreに空きがありません。代理を頼むしかない状況です』

『入り組んでいるのは理解しました。事後にdata-linkで共有を求めます』

『了解しました』

 頭の中で二人が会議やってる。事件は脳内で起きているんじゃない、目の前で起きてんだぞ。

『諸元データ送付。なお、全力戦闘3.5回。先程の行使で0.18消費。所有者様が経験を積めば緩和されますが、現在ではこれが精一杯と推測します。扱いには注意が必要です』

『解ったわ、なんとかやってみる』


 雨を切り裂き吹き飛ばそうとしたのが失敗して、どうするかと思案したらこれだ。頭ん中でごちゃごちゃといいあっている。

『おい、お前らビアンカとチエリでいいんだよな。こっちにも解るように説明しろ』

『my load、それは後でします。先に、雨の処理を実行、その後ジャネットの救出と黒いローブの処分が必要です』

『ビアンカか、お前はどこにいるんだ』

『my loadの中にいます』

『は?……俺に寄生したってことか』

『重ね合わせ状態です。寄生などしておりません。精霊石を起点にしてmy loadと存在情報を共有しています』

『あの、ふぁいずおーばーれいとか言った結果か』

『その通りにございます』

『とりあえず無事ならいい、詳しいことは後で聞く。今はやることがあるからな』

 目の前の黒ずくめの二人を観る。

 剣を持っているのは確かにジャネットだ。なぜだか理解できた。

 問題はローブのほう。一体何者だ。なぜ、こんなことをしているか。どこからきたのか、何をやりたいのか。

 まぁいい。取り敢えずは倒してからだ。

『もう一度やるぞ、今度はしくじるなよ』

『Yes, my load』

 さっと辺りを確認する。レンとメアリーはこっちのほうが気になるようだが、ジャネット相手に気を抜けず互角の展開を続けている。この雨のせいで力を削がれているためだろう、本来なら一人で十分渡り合ってもおかしくないはずだ。

 千歳は黒ローブとの遠距離攻撃でお互いを相殺しあっている。こっちも余裕はなさそうだ。

 背後の弥生はあずさんを診ている。命に別状はなさそうにみえる。

 あぁなんてことだ、沸々と怒りが沸いてくる。しかし、我を忘れるようなことはなく、静かに重いたぎりが横たわっていた。

 誰のものに手を出したか思い知らさねばならなぬ。

『いくぞっ』

 掛け声一つ。

 ナイフを頭上に掲げ、天を睨む。

 時折、黒ローブからの攻撃が飛んでくるが、千歳が迎撃してくれているため、こちらには被害は及ばないでいる。来ても切るだけだが、余計な力を使わずに済むので助かる。

「切り裂け、天よ。失せろ、雨雲」

 一閃。集束されたフォースパワーが空と舞う。

 轟音轟く。

 切り裂かれた空間目掛けて、散らされた大気が呼び込まれ渦となる。

 半径50メートルばかりだが、俺を中心に太陽の光が降り注いだ。今はこの位が精一杯か。

 雨が降り出すまでの時間が勝負だ。

 即座に駆けだす。黒ローブめがけて一直線に。今の俺なら泥濘など関係なく最短最速だ。

 黒ローブが俺めがけて何かを放つが、千歳が巧いこと迎撃してくれた。奴がこっちに気を取られれば、千歳に余裕ができるのも道理である。

 吶喊!

 ナイフを腰だめに据え、腹めがけて───。

 だが、それは叶うことはできなかった。

 唐突にヤツがしゃがみ込み、地面に手をつけたいなや、ヤツを中心に爆発した。

 水蒸気爆発。

 辺り一面、濡れている地面の水分を気化させやがった。衝撃が襲うが俺はそれをナイフで切り裂く。しかし、蒸気の白い靄で視界が一気に塞がる。

 フォースパワーを吸っていたらしい呪わしい雨水。それが原因で、この眼でもってしても視界は不良にされた。

 攻撃が来るかと耳を澄まし、神経を尖らせる。

 聞こえるのは雨が地を撃つ音と風の音、感じる気配は仲間たちのもの。今の衝撃で地面に伏せているようだ。

「まさかと思うが」

『敵は逃走したと思われます』

「ジャネットは?」

『恐らく一緒に逃亡したものと判断できます』

 なんとも手際のいいやつである。不利と悟ると奥の手で攪乱、一気に逃亡とはやってくれる。

『敵対者の最後の一手は、証拠隠滅のための手段と思われます』

「だろうな。それが逃げる手段に早変わりか」

 といっても、この衝撃で向こうとしては俺らが重症を負うであろうという目算はあったはずだ。そこを突いて止めを刺しにこないというのは、恐れられているのかそれともそこまで余裕がなかったということか。

『その見解に同意します』

「この靄を払えるか?」

『Yes, my load.気体制御の術式を展開します』

 ビアンカから送られる情報を基にして、魔術を構築し実行する。

 ──風よ吹け、空から降りて、掃き清めよ──

 なんというか、簡単に魔術は成功した。ビアンカの協力があったとしてもこれは……、今までの苦労はなんだったのかと言いたくなった。

 視界を取り戻した俺は、3人が固まっている処へ足を向ける。

「3人とも大丈夫か」

「この程度、どうということはないのじゃ」

 やや強がりではあるが、千歳が言ってきた。

「レンとメアリーも問題ないようだな」

 頷きをもってかえされる。

 となると、一番の重傷者は……振り返り、弥生と支えられているあずさんに視線をむけた。

「あずさんの容体は?」

「目を覚まさぬ。傷は塞いだが、体力と力を消耗している」

 力……ふむん、フォースパワーか。それなら俺がなんとかできるだろう。

 近寄り、あずさんの手を握る。

「頼む。力が戻れば、自分で体力の方は回復させれるだろう」

 弥生の言葉に軽く頷き、あずさんに集中する。呼吸と波長を合わせ、フォースパワーを送り込む。

 途端にあずさんがびくんびくんと派手に痙攣しだした。

「あっ」

 送る量が多かったようだ。

 今の俺の状態で、前の感覚のままだと色々と違いが激しいようだ。極力絞って再度送付を続ける。

 暫くしてあずさんが目を覚ました。焦点のあわない目が彷徨い、弥生を認識した途端完全に覚醒した。現金なやつめ。

「私は……済みませんでした。なにもできずに」

 珍しい光景を見た。あのあずさんである。暴虐の魔神がしおらしいことを言っている。夢か、これは俺の妄想の世界にいるのか。

『my load、それは酷いと思われます』

 ビアンカに窘められた。

『済まん済まん、まさかあんな態度になるとは思っても見なかったから、いつもなら飛び起きて喚き散らしそうな……って其処まではないか』

「目を覚ましたか、体の調子はどうだ。どこか痛むところとか変な処はないか」

 俺が言葉を紡ぐと、あずさんの視線とあう。

「誰ですか貴方は、はっ!」

 繋いでいた手を払われ、一瞬にして弥生の前に立って警戒しだす。

「俺だよ俺、分からないのか」

「オレダヨオレさんですか、どうでもいいので、近寄らないでください。早く退去することを進めます。5秒以内に半径5メートル離れてください。離れない場合、敵対行動として排除行動に移ります」

 いきなりな最後通告がなされた。

 俺は弥生をみる。さすがに弥生も唖然としていた。

「政宗だ、みてわかんねーのかよ」

「そんな政宗はいません、たばかう気であれば、拘束ししかるべき処へ連行いたしますよ」

 だめだこいつ、早くなんとかしないと。

 ジャネットのこともあるし、こんなことをしている場合ではないのだがな。


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