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大儀であるっ  作者: 堀井和神
第四章
111/193

魁!日本文化研究部 01

魁!日本文化研究部


「寮生全員が入部希望ね」

 放課後、申請用紙を持って職員室にやってきた俺は、六道先生にそれを渡したのだった。

 授業が終わって、希望者を募ったら、まさかの日本組も参加してきたのだ。眼中にないとまでは言わないが、ノリノリで入部希望とやってきたのには驚かされた。

「ま、奴らも、こっちの文化にゃ触れさせておいた方がいいだろうし、丁度よかったちゃーよかったか」

 六道先生が感想を述べる。

「それでですね、あと一つ重要なポジションが残っているのです」

「ほう、なんだ?言ってみろ。

「顧問が居ません。お願いします」

 単刀直入に切り込んだ。

「……なあ、中島政宗君」

「はい、ありがとうございます」

 問答する前にねじ込む。

「無理だ」

 ………ばーかばーかばーかーこんのー糞野郎。てめーが巻いた種だろうが返事は二つだろうがっ。

「まあそう睨むな。言いたいことは解る。解るがな、俺だって面倒を見てやる時間はないんだよ」

「では、六道先生の代わりに誰か顧問をやってくれる人を連れてきてください」

 伺うなんてもどろこしいことはせず、ガンガン押していく。この後、生徒会にいかなければならないんだ。遅くなると、とんでもないことになるのは解っている。

「そう急かすなって。こんなにとんとん拍子で決まるとは思ってなかったからな。声をかけては見るが…」

「今、お願いします。誰もいないのでしたら、仮でもいいですから顧問をやってください。

 生か死かではない、やるかやらされるかの空気をかもしだす。

「仮とかいって受けた日にゃ、ずるずるとやらされんの決まってんじゃねーか、やだねっ」

「では、誰か指名してください。六道先生の権限でやることなったと伝えにいきます」

「おいっまてっ中島。なんだか鬼気迫ってないか?」

 そうかもしれない。だが、彼女たちを抑えることができる人物、すなわち顧問をやってくれる人が生半可な奴ではだめなのだ。ごりごりに押し切ってでも六道先生にやってもらわなければならい。

 そういう事情なんて直ぐに読めるだろうに、この期に及んで駄々を捏ねられても困る。

「先生、なんでもすると言いましたよね。してくださいよー顧問を、なにちょっと名前を書けばいいだけではありませんか」

 記憶にある限り“めんどくせぇ”しか憶えてないが、言っている!ことにしている。

「ちっしょうがねーなー」

「それじゃぁ」

 希望を胸に申請書に止められる前にさくっと先生の名前を……。

「書くなって」

 右手を掴まれた。そのまま引き剥がしにくるが、ここで引き下がっては駄目だ、一気に名前の欄に──。

 書けませんでした。無理無理基礎が全然違う。簡単に手首を捻られ、記載することが叶わなかった。

「ったく、お前もたまに強引になるよな」

「もうあっちいったりこっちいったり、走り回りたくはないですからね」

 批難を口にする。

「解った顧問だろ。そいつにやらせることでいいだろ」

 そいつ?

 六道先生が指差した方向、俺の後ろ。振り返る。

「わっ」

 いつの間にか、隻眼の副担任、天目先生が立っていた。

「あの?なんのお話でしょうか」

 狐につままれたような顔をして聞いてきた。

「お前に仕事だ。こいつが作る部の顧問をやれ」

 なんということでしょう!

 俺を“喰った”相手に顧問だとぉ。

「先生それはっ」

 冗談じゃないぞ、命が幾つあっても足りなくなる。正気の沙汰じゃない。

「あー煩い。俺が決めた、文句は言わせない」

 聞く耳を持たなかった。

「部活?なんですかそれは」

「詳しい話は中島から聞け。ほんじゃ俺の仕事は終わったな、あとは2人で相談しろ」

 体よく追い出された。


「あの、それで部活というのはなんでしょうか」

「留学組に日本の文化を知ってもらうために、部を立ち上げようとしているのですが……」

 廊下に追い出された俺は天目先生に説明する。

「そうですか」

 ……うーむ。今更だが、本当にあの一本だたらなのか?物腰は静かだし、あの烈火のような……あれ?ちょっとまて、なにか奇怪しいような気が。

 最初あったとき、黒い12式を生み出して逃亡。彼女を捕まえていた奴はぼこっていたが、殺された訳じゃない。人は人で殺し合えと言ってはいたが、本人が何かしたかというと、うむ?

 次にあったときは喰われたが、吸収されるとかなんとかと言っていたのはジャネットで本当にそうなるのか?されてないから、事実は闇の中……“喰った”のは確かだが、それはあの場面だけで鑑みるに、攫うため?その後何かされたかというと、殺されるようなことまではされるのか?ほむ?

 確かに大暴れはした。それでも、死者がでるような事態にはなっていなかった。

 えーとこういう場合なんていうんだ?傷害事件ではあるが、そもそも彼女を拉致った奴が悪いのである。報復されても文句はいえない。いや、まぁ法治国家であるから、そういうのも不味いのだが、なんせ彼女は人外で、こっちの法律には基本縛られていない。捕獲作戦もどっちかいうと、掴まらないように逃げてただけ。被害甚大ではあったが……。となると……推定無罪?

 思い返してみると、色々な行き違いで不幸な状況に彼女は陥っただけで、断罪されるようなことまではしてないのか?だから、こっちに残れるたということ……なのですかね???

「あの、つかぬことをお聞きしますが、あの時、俺を喰ったあとどうするつもりだったんですか?」

 俺に関して言えば、問題はその点になるだろう。その返答次第で態度を決めた方が無難な気がする。

「喰った?」

 首をかしげる天目先生。

「ほらっこないだの日曜日、俺とジャネットを呑み込んだじゃないですか」

「ああ、その節は本当に申し訳ないことをしました」

 謝られた。

「そうじゃなくて、俺をどうするつもりだったのかですよ」

「あー、あの時は……」

 言いよどむ。なにかいい辛い秘密なんかがあったりするのか?

「あの時は?」

「……ノリ?」

「えっ、なんだって!?」

 聞き間違いでなければ、ノリとおっしゃったか?どういうことなんだよ。

「ほら、戦闘中だったでしょ。だから目の前に現れたからつい、ぱくっと…」

 力が抜けた。

「そんな理由で?」

「いや、中島君とは因縁があったわけだし……そのね…なんというか、申し訳ないです」

 済まなそうな顔で言ってきた。

 詰まるところ、のこのこと戦闘の現場に現れたから、俺もその仲間と判断して…いや、まぁ仲間ではあったが……、喰ったということか。なんだろう、凄くやるせなさが沸き起こった。

「それで、もう因縁のほうはお終いでいいんでしょうね?」

「それはもう、貴方に負かされたのですから、貴方の望むままに」

 へっ?

「違う違う、倒したのは六道先生たちで、俺じゃ……」

 言葉に詰まった。ってさー、倒された本人が俺に負けたと宣言しているんだ。外野が見聞きした話とは次元が違う。心当たりがありすぎるってもんだ。

「でも、ほら、実際俺が何かしたわけじゃないでしょ?」

 まぁそれでも逃げをうつ。

「ううん、貴方が居たから私を倒せた。そうでしょ」

「そんなことは無いと思うけどなぁ…」

 シラを切る。

「私から力を奪ったのは貴方。他の誰でもない、貴方がしたことよ。他の誰にできることじゃないのよ」

「奪ったって、そんなの気付けばできるもんじゃないんですか?」

 天目先生は俺をじっと見つめてきた。

「気付いてないの?」

「気付くって何を?あの時は単に…」

 あの時、自分が何をやったのか思案する。場に満ちていた天目先生のフォースパワーを吸収してジャネットに流した……だけだよな?

「単に?」

「天目先生のフォースパワーをジャネットさんに渡しただけです……よね」

 いった事を噛みしめるように、天目先生は思案する。

「それは誰にでもできることではないのよ」

「……そうなんですか?」

 言われてもピンとこない。実際できたのだから……今度は俺が狐につままれた感覚だ。

「いい?フォースパワーは個人個人で波長があるのよ。血液型のAとBが会わないように、無理やりそんなことをすれば、死ぬのよ。普通は、渡すほうと受ける方が波長を合わせて初めてできることなの」

 一瞬で血の気が引いた。実は無茶苦茶無謀なことをしていたのか、そいや腕がパンパンになって破裂寸前だったと女医さんに言われたっけな。そういうことだったのか。

「でも何故俺…いや、自分ができたのでしょうか?」

 ぶんどった相手に聞くのもなんだかなーではあるが。

「貴方の体質なんじゃないの?普通とは違う何か……私にはそれが何かは解らないけど」

 普通じゃない体質……。

 言われて思い出した、心当たりが一つあることに。FPPを測るのに、機械では測れない体質だ。いや、でもそんなことで?

 隠してもしょうがないので、そのことを告げた。

「なるほど、そういうことだったのね」

 納得された。

 つか説明してくれ~、全然わっかんねーつーの。

「そうことってどういうことなんです?」

「さっきいった血液型に例えると、A型とO型のようなもの。O型の血液はA型の人に輸血できるのは知っているわよね」

「えぇまぁその位は」

 それでも、緊急でない限りそういうことはしないもんだ。実際ABOだけで巧くいくってわけでもなし。

「貴方は、他人のフォースパワーの波長に合わせることができるか、自分の波長に合わせてしまえるか、そういうことなのですね。おそらくそれが原因で機械では計測できないのではないかしら」

「そういうもんなんですか?」

 改めて自分の体質について言及され、戸惑う。

「詳しいことは私にも解りません。単に推測だけです」

 可能性だけの話なのか…。それでもこの体質って凄く有用なものになるのか?

 ……いや無理だ。あの時は、吸収できる時間と場所であっただけだ。そんなほいほいと都合よくできるもんじゃない。本当にたまたまなだけだ、ちょっとがっくり。……いやかなり?能力があっても発揮できないんじゃ意味がない。

 宝の持ち腐れである。

「そういう訳ですので、私は貴方に破れ、ここにいます。なんなりと御申しつけ下さい、ご主人様」

 ………今なんていった?ご主人様???

「ちょっと待って、どういう意味やねん」

「貴方も既に知っていることとぞんじますが、私達の世界では力が全て。敗者は勝者の物です」

 あーそうだった。そうでしたねー、そんな設定がありましたっけ。

「いやーほら、ここは貴女たちの世界じゃないですしー、別に付き従うようなマネなどせず、自分の街に帰ればそれでいいんじゃないのかなーかなー???」

 急に縋るような泣きだしそうな顔になった。なんでっどうしてっ!

「人間に掴まり封印された一族の面汚しに帰るところなんてありません。ご主人様は私に死ねとおっしゃられるのですね」

 グサッときた。

 なんでこんなに重大な事案が発生するのですかっ。ヘヴィだ。

 誘拐されたのだから、心配するのが家族ってもんじゃないの?助かったのだから、大手を振って帰れば…って、そうか、だからこの近辺に止まっていたのか。帰れないのですかーそうですかー。独り納得してしまった。

 それにしても、生き死にを持ち出すのは卑怯だー、納得いかねー。

「……駄目……ですか……」

 はっ考え事してたら、なんかやばい方向へ想いがいってるような?

「死のう……」

「まてまてまて、死ぬな!死ぬんじゃないー」

 狡い!狡すぎるぞ。

 じと目でこちらを伺ってくる。

「解った、解ったから、とりあえずその件は保留にしてくれ。いや、してください。お願いします」

「ご主人様がそうおっしゃるなら」

 捨てられた小犬のようなつぶらな目で言ってくるなー。罪悪感がはんぱねーぞ、どちくしょー。

 あ゛ーどうすりゃいいんだってんだ。これ弥生たちに説明するのか?血の雨が降りそうだぜ……違うか、弥生なら二つ返事で了承しそうだ。それはそれで、いかんともしがたいいいようのない何かが……。

 ふっ、どうとでもなれってんだ。

「それじゃ、こうしよう」

 ………どうしませう。


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