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異世界ロケット  作者: 阿波座泡介
1章 ジアース編
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『姫の名はアムネ』

〈助けていただいて、ありがとうございます。……騎士 トキ・ヨウスケ様……で、よろしいのかしら?〉

 

 どうやら、お姫様は洋介の地位が分からない様子。


「いや、僕は騎士じゃない。サラリーマン……って言っても分からない?」


〈貴方の思考からは『平民』と言うイメージが強いのですが……よろしいのかしら?〉


(平民ねえ。確かに、サラリーマンは平民だよなあ)


〈身分に対する考え方が、ずいぶん違うようですわね……あっ!〉


 お姫様は、驚いたような顔をして口元に手を添えた。

 そして、洋平の手を握った右手を離さずに、優雅に頭を垂れ。


〈申し遅れましたわ。私はアムネ・レイ・ウィンバルレと申します〉


 姫はニコリと微笑むと。


〈アムネと呼んでくださいませ。洋介様〉


「ああ、こちらこそ……えっと……アムネ姫様……」


 そう言った途端に、アムネ姫の眉がピクンと動いた。


(あれ? 何か無礼をしたかなぁ……やっぱり、ちゃんとフルネームをお呼びすべきだった?)


 洋介が、そんな心配をすると。


〈違います、洋介様。私は……いえ……アムネ姫でかまいません。貴方に落ち度はありません〉


 どうも歯切れの悪い返事だった。


 そんなおり、急に風が強くなってきた。

 春の気配があるとはいえ、まだ寒い季節である。

 ミニワンピース姿と変わらないアムネ姫の服装は、この季節では厳しい。

 アムネ姫は、寒さで震えだす。


「ちっと待ってね」


 洋介は、アムネ姫から手を離すと、すぐに作業着のオーバーコートを脱きだした。

 正直、小さく軟らかくて暖かい姫の手を離すのは、少し惜しい気もしたのだが。

 洋介は、脱いだオーバーコートをフワリとアムネ姫の肩にかけ。


「あの……もし、よければ……これを着てください。暖かいですよ」


 洋介は、あらん限りの勇気を振り絞った行動だった。

(ああ、こんな事になるなら、ちゃんとクリーニングしとくんだった)

 とか、思って後悔していたのだが。


 アムネ姫は、洋介の手をとると。


〈ありがとう、洋介様。とても、うれしいですわ……でも、貴方は大丈夫ですか?〉


 姫の返事に。

(ああ、やっぱり、この娘は優しいなあ)

 と、思う洋介であったが。


〈いえ、優しいのは、洋介様の方ですわ〉

 と、自分の思いに姫は返事をかえしてくる。


(しまった。テレパシー中だった)


 あわてる洋介の様子に、姫はクスリと微笑み。


〈私たちは『心話』と呼びます。私は、まだ未熟者ですから、直接肌を触れた相手としか心話できませんが〉


 そう言いながら、姫の頬は桜色に染まっていた。



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