『マジック・ストライカー』
お姫様の手から放たれた光球は、一直線にドラゴンへと飛んでゆくのだが。
「うわぁ! なんて……おそい」
洋平から見ても、それは攻撃というにはあまりに遅かった。
光球は、それでも一直線にドラゴンへとむかって飛んで行き。
ドラゴンは光球をヒョイとよけた。
「まあ、当然だよなぁ」
ドラゴンを通り過ぎた光球は、そのまま直進して解体を待つビルの壁へと当り。
ドゴゴゴゴオォォォンン!
ビルの一角を大きく抉るような爆発が起こる。
爆風は、周囲の埃を巻きあげて突風となって洋平らを襲う。
「威力は十分みたいだけど……当たらないとなあ」
洋平が爆発に気をとられていると、ドラゴンが接近してきた。
「うわぁ来たぁ」
咄嗟に腕をクロスした動きをトレースしてクラッシャーアームも目の前でクロスして視界を隠す。
「しまった!」
さっきのドラゴンの一撃で分かる事だが、ドラゴンブレス以外ならPMUの外装はドラゴンの攻撃に耐えられる。今の瞬間に恐れるべきは、視界を遮り、情報が制限される事。
(うかつには動けないぞ。横にはお姫様がいるんだからな)
チラリと横を見ると、ドラゴンを避けるようにお姫様は後ろに下がった。
アームに隠された視界からドラゴンの動きを読む。
(左から右に来る!)
と予想して、PMUのキャタピラから上を右に動かすが。
「うわぁ!」
ガンと、左から衝撃が来た。
PMUのフレームが大きく軋む。
ドラゴンが右に動く後から尻尾が動く。
(くそっ。ドラゴンの動きに気をとらえて、尻尾を失念していた)
体長の半分を占めるドラゴンの長い尻尾が、すり抜けざまに巻きつくようにPMUを叩いた。
さらに、ドラゴンは体を回転させて大きく尻尾を廻し。
また、PMUの左を叩く。
鞭のような尻尾の打撃が、繰り返し左アームを襲った。
『警告! 警告! 左腕過負荷です』
AIが左アームの損傷を警告するが。
「この状況で、どうしろってんだよ」
この隙に、お姫様が何処かに逃げてくれればよいのだが。そうもいかなかった。
ドラゴンの回転する尻尾は、PMUだけでなく周辺の瓦礫も叩いていた。
尻尾に叩かれた瓦礫は、雨霰と周囲に飛び散っている。
唯一の安全地帯は、PMUの内部と後ろしかない。
(考えろ洋平。多少の知恵はあるようだが、相手はPMUの事を知らない)
洋平は、ある攻撃方法を思いついたのだが。
(それには、あのお姫様が……)
バックモニターを見た洋平は、PMUの後ろに隠れたお姫様が小型のナイフを取り出すのが見えた。
「何をするつもりだ?」
お暇様は、自分のドレスにナイフをつきたてスカートを短く切り始めた。
「身軽に動くためか?」
どうやらお姫様は、まだまだ戦うつもりらしい。
「それなら、こちらも……」
「設定。スクリプト起動」
『設定、了解しました。スクリプト起動します』
洋平は一連の設定をスクリプトにした。
「スクリプト設定完了」
『スクリプト設定完了、了解しました』
「さて、いくか」
洋平は両腕から力を抜いた。




