『病院にて』
「おおきにや。おおきにやで」
アムネを崇めるように手を合わせる大吉の姿に、安堵と困惑を感じる洋平であった。
しかし、一連の事件の真実を信じてくれたのには助かった。
(とは言え、いきなり魔法を信じるとは……社長、大丈夫なのかなあ?)
などと結構失礼な心配をいている洋平自身が、アムネの魔法をすぐに信じてしまったのだが。
さておき、ここは大吉が運び込まれた救急病院である。
アムネによる治癒魔法で心筋梗塞から生還した大吉は、大事をとって緊急入院をした。
本来ならば、大吉は集中治療室で生死の境を彷徨うところ。
だが、アムネの治癒魔法が効きすぎたのか、大吉は元気溌剌である。
「お前、本当に五〇歳か?」
とは、大吉の友人で、この病院の医局長を勤める高橋医師の弁。
どうやら、現在の大吉の身体は、健康な三〇歳くらいの状態らしい。
「金持ちのくせに健康とは、けしからんなあ」
冗談で言う高橋医師と大吉は、学生時代の親友らしく、楽しげに昔話に花を咲かせている。
「PMUやら建物の事は、まかしとき。上手い事しといたる」
洋平が賠償の件を口にすると、大吉は事も無げに言う。
とは言え、PMUは全壊している。
普通に購入すれば、一台一億円を超える機械である。
やもうえない状況ではあったが、洋平は申し訳ない気持ちで一杯だった。
「洋平クンの判断でアムネさんは助かった。アムネさんが居てくれなかったワシは助からなかった」
大吉は、洋平を命の恩人と言う。
「こんな事は、金には変えられんで。感謝するのはワシの方やで」
そう言って頭まで下げられては、かえって居心地の悪くなる洋平であったが。
たしかにPMU一台分の費用なぞ、一介のサラリーマンが都合できる金額では無い。ここは大吉の言葉に甘えることにした。
さて、一方のアムネである。
大吉の容態が不安であったので、救急車で病院まで同行してきたのだ。
ちなみに、洋平は会社の営業車で救急病院へ来ている。
救急治療室から病室へと移動した大吉に、洋平とアムネは付き添っていた。
大吉は、先ほどから何やら彼の部下と打ち合わせ中。
アムネと洋平は、控え室で身を隠している。
今の病室は控え室付きの大きな個室である。
当面、身を隠すには十分だ。
だが、いつまでもこのままと言う訳にもいかない。
洋平はともかく、アムネは容姿が目立ちすぎる上に服は破れたドレスである。ここに来るまでは、洋平の作業コートで隠していたが、替えの服が至急に必要だった。
幸い、控え室には外線に繋がる固定電話があった。
洋平は、この電話から、従兄妹の吉川鈴音に連絡することにした。
遅れてすいません。
書き溜め分がないと、定期的なアップは難しいですね。
これで、現在日本側のキャラが出揃いました。
鈴音ちゃんは、名前だけだけど。
なにわともあれ、これからもよろしく。