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異世界ロケット  作者: 阿波座泡介
1章 ジアース編
11/17

『ラブ・パニック』

〈あ……あの……私の手を触るのは、そんなに気持ちが良い行為なのですか?〉

 アムネ姫は、洋平におずおずと問うた。

「えっ?」

 洋平は、アムネの手をあわてて離したのだが。

「○○×△……」

 とたんに、アムネの言葉が分からなくなる。

(ああ……手を離すとダメだな)

 かといって、手を握り続けるのも気恥ずかしい。

 確かに、アムネ姫の手を握っているのは心地よかった。

 異性の手を、こんなに長く握り続けている経験は、母親以外に無いような気がする。

 また、さっきに姫の言葉から、言語化されていない気持ちまで知られのは、怖いような気もする。

 どうしようかと迷う洋平の手を、アムネの方から手を伸ばして握ってきた。

〈ごめんなさい……私、変な事を言ったみたいですね。こんな風に……その……お話をしたことがありませんから……ちょっと、あがったみたいです〉

「いや……僕の方こそ、手を離してごめん」

 洋平は、頭を下げた。

 気持ちまで伝わるのは、洋平だけでなく、アムネ姫も同様なのだ。

 お互いの気持ちがダイレクトに伝わる。

 そう考えると同時に、洋平の心拍が上がり、血が顔に集まりだした。

(うわっ……どうしよう、ドキドキしてきた)

〈あの……私も……なんだか、胸が苦しい……やだ……止まらない〉

 洋平がアムネ姫の顔を見た。

 アムネ姫の洋平を見る。

 アムネ姫も、洋平同様かそれ以上に顔が真っ赤である。

 瞳は潤み、乱れる息に唇は柔らかく開いている。

 そんな姫の表情に、洋平はますますドキドキしてくる。

 もはや生命維持が危険かと思えるレベルである。

(いやいや……大丈夫です、姫。これは、アレです。危機状態になった人間の間に起こる生理現象です……えと……バタフライ効果?)

 なんとか、平静を保とうとする洋平ではあるが、かなりテンパッている。

『つり橋効果』を思い出せないくらいに。

〈そうですわね、普通の事ですわね〉

 対するアムネ姫も、かなりパニクッている。

 異性に免疫が無いのは、洋平以上。

 それが、いきなりドラゴン退治に心話である。

 お互いの思いが、心話を通して増幅され、収集がつかなくなってきている。

 洋平は、思わずアムネの体を抱き寄せた。

 そうせずにはいられなかったのだ。

(ごめんなさい、姫。でも……僕……)

 洋平は拒まれと思った。

 だが、アムネ姫の両手は、洋平の背中に回されギュッと力が込められた。

(あう……姫、姫……胸が……あの……)

〈ごめんなさい、ごめんなさい……でも、私も……こうしていないと、立っていられないのです〉

 震えながら瞳に涙をためたアムネ姫が、洋平を見上げる。

 洋平がアムネ姫を見つめると、アムネはそっと目を閉じる。

(あの……これ……しちゃっていいって……こと?)

 洋平の思考への姫の反応は、言語化することのできない甘く痺れるような感情の波だけ。

(えっ……えと……一生たいせつにします!)

 洋平は、思い切って唇を重ねようとした。


 ドロロロロウ!


 重いエンジンサウンドが響き、タイヤが大地を蹂躙しながら回転を止めた。


「なんじゃ、これは!」


 4WDビークルが止まると同時に、飛び出してきた成本大吉は叫んだ。

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