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異世界ロケット  作者: 阿波座泡介
1章 ジアース編
10/17

『社長 成本大吉』

 米軍も使っている4WDビークルのシートでタバコを咥えた成本大吉なりもと・だいきちは、自分の買った土地を見ていた。

 広大な土地に、巨大な建物が建っている。

 かつては、地域最大規模のショッピングモールであった。

 成本の生家や故郷の田畑を地ならしして造られたのだ。

 このショッピングモールの完成で、地域商店の多くは閉店した。

 そして、親会社の不良債権によって、このショッピングモールも閉鎖された。

「バカが……」

 大吉は呟いた。


 大吉は、いわゆる土地成金だ。

 40年前に故郷を飛び出して、大阪で鉄鋼会社を経営していた。

 手狭な大阪の工場を閉鎖し、地方に新工場を建設したら、元の工場の土地が途方も無い金額で売れた。

 それが、切っ掛けだった。

 本業そっちのけで、土地ころがしに熱中した。

 そのうち、本業の工場は権利ごと当時の専務に売り、大吉の本業は土地ブローカーになった。

 おもしろいように金が懐に飛び込んできた。

 大吉の周りの人間も土地に手を出し始めた。

 そこで、大吉は土地を商うのを止めた。


 誰もが興味を持つ金儲けはダメだ。

 それが、大吉のポリシーだった。


 大吉が土地ころがしを止めた後、土地バブルがはじけた。

 大吉は、次に株をはじめた。

 それも順調だった。


 そして、誰もが株に関心を持った時点で、株も止めた。


 そんな風に、大吉は生きてきた。


「ワシの人生は、ほんまに大吉や」


 そう思った事もあった。


 一生涯で使い切れない資産を貯めたが。

 そこで、ふと疑問がわいた。


「わしは、この金で何をしたらええんや?」


 何も思いつかなかった。


「故郷に錦を飾って帰るものええかな」

 と思い、帰った故郷は、何もなかった。


 巨大資本に蹂躙された故郷に残っていたのは、閉店したショッピングモールだけだった。


 大吉は、そのショッピングモールを買いあげた。


 特に、目的があるのではない。

 ただ、見ていたくなかったのだ。

 故郷が、廃墟になっていゆくのを……

 

 唯それだけの為に、資産の大半を使った大吉ではあるが、まだ新しい事業を始めるには十分な資産が残っていた。

 だが、何をすべきかが、分からなかった。


「まあええわ。なんにしても、この忌々しい建物をぶち壊してからや」


 大吉は、咥えたタバコの紫煙を深く胸に吸い込んだ。

 その時……


「くっ……」


 胸の奥がチリリと焼けるように痛んだ。

 この不快な痛みは、ここ数日、大吉を悩ましてはいた。

 だが、大吉自身は、この痛みを気にするほどのものでは無いと考えている。


 その時、大地を揺るがすような轟音が響く。


「なっ……なんや!」


 大吉のいる場所から建物を挟んだ反対側で、何かが起こっている。

 たぶん、爆発であろう。

 ここから大吉に分かるのは、それだけだった。


「何事や。だれぞ下手うちよったか?」


 大吉は、慌ててタバコを揉み消し、4WDビークルのアクセルを踏んだ。

 鉄の駿馬は大地を抉るように駆け出した。

 4WDビークルは巨大な建物を廻り、爆発現場へと急行する。



書き溜め分の放出完了。

次話からは、少しお待たせすると思います。


誤字脱字やまちがい、分かりにくいところなどありましたら、ご指摘ください。


これからも、よろしく。

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