100 インターミッション 1
世界観とあらすじ
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物語は未来の話。
慢性的な資源不足に陥っていた人類は遂に新たな物質を開発した。月の宇宙開発研究所で実用化に成功した新エネルギー『フォトン』。その物質化に成功したのだ。『フォトンマテリアル』と呼ぶ技術の開発は、資源不足から行き詰まった人類の未来に希望を与えた。
宇宙から無限に得られるフォトンエネルギー。
高度な3DCGを実体化、物質化できるフォトンマテリアル。
それらは人の住む世界を大きく変えた。モニター上にしか存在しなかった仮想世界が実現できるようになり、まるでゲームやSF映画に出てくるような街を現実に生み出せるようになった。
人類がフォトンを資源エネルギーとして利用するようになって十数年。世界中の都市全てがフォトンマテリアルで作られた現実の世界は、半仮想世界とも呼べる新世界にまでなった。
これが人類の破滅の1歩になるとは誰も気付かない。
それでその世界では新たな娯楽として、昔流行ったMMO(大規模オンラインゲーム)の発展形であるVRMMO(仮想大規模オンラインゲーム)、その上を行くVR2MMO(仮想『現実化』大規模『オフライン』ゲーム)の開発が計画されることになる。現実世界を立体スクリーン代わりにするだけでなく現実にあってゲームの世界のようなフォトンマテリアルの都市を舞台にして遊ぶことを目的とした新型のゲームだ。
その試作として誕生したのがVR2RTB(仮想現実化リアルタイムバトルゲーム)。企画されたのはキャラクターのカスタマイズを可能にした子供向けの対戦バトルゲームである。
もちろんそれは安全面を考慮したバーチャルの域を出ないものであったが、目の前で立体化したキャラクターを操作し、昔のアニメであった(例えば某カードゲーム)ような臨場感のある戦闘を再現できるVR2RTBは世界で注目を浴びることになり多くの人に完成を望まれることとなる。
しかし。
VR2RTBの第1弾として試作された『EWG』という開発コードを持つゲーム。そのベータテスト中に予想もつかない事故が起きた。対戦以外のサービスとして用意されたシナリオプレイや多人数プレイ用のエネミーモンスター。それがテスト中に突然実体化してテストプレイヤーを襲い殺戮したのだ。
プログラムの情報体でもあるこのモンスターはシステムのバグで増殖。グローバルネットワークを通してコンピュータウイルスのように誰にも悟られず、瞬く間に広がってしまう。
世界初の《フォトンハザード》あるいは《VR2災害》と呼ばれることとなるこの事件は新たな世界大戦の幕開けでもあった。
ところで。
宇宙の万物で創造される『光』、宇宙のエネルギーともいえるフォトンは1つの特性がある。
仮説ではあるが光の微粒子であるフォトンは宇宙が内包する生命の情報を持ち、使い方によっては物体に命を宿すことができるというのだ。
後の研究で人の脳細胞からも僅かながらフォトンと同質のエネルギーが確認され、仮説に信憑性がでてきた。フォトンは精神、霊魂とよべるもの、あるいは脳活動における意識の量子的メカニズムにも関係していることがわかっている。
また。これも後に解明されることではあるがエレメンタルの『マニュアルモード』にもフォトンが利用されていた。
『EWG』が電気信号を使い思考をコンピュータに反映させたセミダイレクト操作ではなく、脳波による完全な思考操作を実現していたというのだ。この事実はレイス誕生の謎も相俟ってEWGというゲームの開発経緯に大きな疑問を残すことになる。
閑話休題。
フォトンハザードが起きた真相は今も謎に包まれている。事実だけを言えばフォトンマテリアルを使った新型ゲームの開発過程で人が偶然にもフォトン生命体と呼べる新たな命をつくりだしたといえる。しかも最悪のかたちで。
レイスと呼ばれるゲームのモンスター達は自律して思考する。予めプログラムされていたAIから学習したのか誕生したレイスは人間の敵としてその存在意義に従い、すぐに活動を開始した。
戦闘と殺戮。ゲームの設定通りにレイスは人類の敵となり排除をはじめたのだ。こうして人類の天敵、侵略者はゲームから生まれた。天敵と認識するのは更にあとの話である。
最初は通り魔の仕業かと思われた。レイスは同じフォトンマテリアルで作られた都市に潜み、突然現れては人を狩り、幻のように消えてゆく。
人類はフォトンハザードがあったにも関わらず世界中で起きた殺人事件を人の仕業と思い込み、この天災のようで神出鬼没な怪物の脅威に気付くのも対応するのも遅過ぎた。
気付いたあともレイスに対しまともな対策を立てられず、被害は増加の一方を辿る。当時100億を超える世界人口はレイスの誕生からたった1年で半数となってしまった。
世界中の都市をフォトンマテリアルで作ってしまった世界はレイスの棲家で温床であり、狩り場だった。地上に人類の逃げ場はなかった。
現実の世界にありながらゲームシステムに守られているレイスは既存の兵器が効かない。レイスの体を構成しているものと同じフォトンマテリアルを使った武器もまた。
軍隊のような大規模で人類が抵抗するとレイスはそれに合わせて大部隊を編成。レイスは戦略規模で街を襲う真似もしてみせた。軍は民間人を逃がす時間稼ぎにしかならなかった。
唯一の対抗策を発見し人類が反撃に転じるまで約3年。
その間に世界人口は10億ばかりになり、人類の殆どが地上から撤退してフォトンが存在しない地下に移り住むことを余儀なくされていた。
地上の半分がレイスに侵略されてしまった現在。人類は国連軍を中心に僅かに残った領地を守りながら、地上を奪還する為にVR2RTBを使い日夜戦っている。
ゲームという媒体に騙され、心のどこかで危機感を持てないまま。
フォトンという未知のエネルギーを過信した偶然の事故なのか?
それとも誰かが仕組んだ世界侵略なのか? レイスの真相は現在もわからない。
人類の存亡をかけた現実が舞台の戦争。
しかし。世界中で起きたそれこそがフォトンマテリアルを使った新型ゲームの完成形、
VR2MMO(Virtual Reality-Realize Massively Multiplayer Offline game)を使った戦争ゲームだといえた。
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