表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アリアドネのイト  作者: ウラン
アリア
3/3

シスターズ

・登場人物



ラグナ――シスター


霧川禾槻きりかわかつき――脱走未遂


アリア――シスター


ヨーコ――シスター



 そう思ってしまうのはいけないことなんだろう。

 それでも僕は、心のどこかで呟いた。

 ――これは確かに、人間として失敗している。

 風が吹き、彼女の白髪が揺れる。

 相変わらずの無表情の唇が、微かに蠢いた。

 ――君には知っておいて欲しい。

 いつかどこかの記憶の欠片。

 けして古いものではないのだけれど、それはとても懐かしく感じられた。

 唇が蠢く。

 ――私の、本当の名前は…………





「ヨーコちゃんでぇーっす!」

「……え?」

 目覚めて一番始めに見えたのは、白い天井だった。

 頭に柔らかい触感。数秒して枕だとわかった。毛布が体を覆いかぶさっていることにも気づいて、僕は病室か何かのベットに横たわっているのだと無意識に考える。

 で、何となしに体を起こしてみると、茶髪を後ろに一束結んでいる17,8ほどの女の人の顔が目に入った。

 彼女は起き上った僕に感心したような表情を見せ、軽い笑みを作って陽気に言う。

 とまぁ、そんな感じで冒頭のようになったわけなんだけど……。



「名前だよ名前! あたしの名前!」

「あ、ああ。そうですか」

 この茶髪ポニーの女性はヨーコさん、と言うらしい。

「君のお名前は何ていうのかな?」

「ええと、霧川禾槻、だけど」

「んー、成程ー。よろしくね、カツキン」

「は、はぁ」

 って、アレ? それ、僕のあだ名?

 ちょっと、いや結構やめて欲しいな、それ。

 しかし、僕が訂正を始める前に、新たな入室者が現れた。

「あら、目が覚めたようですね」

 背まで伸びた艶やかな黒髪。その双眸はヨーコさんと同じ黒だが、しかし彼女はより一層深い漆黒だった。

 身には黒い修道服を纏っている。

 ありきたりと言うかそのままなんだけど、黒一色、という単語が思い浮かんだ。

 彼女が部屋に現れた途端、僕は圧倒されてしまう。

 それは彼女が身に纏う漆黒の出で立ちにでも、薄らと浮かべているほほ笑みにでもなく、何か……そう、色で例えるなら真っ白な何かに――

「気分はいかがですか?」

 その声でハッと我に返る。

 あれ? 僕、一体どうしていたんだろう?

 再び彼女を見ると、特になんともない。

「あまりよろしくはないようですが?」

「……あ、いや。少し考え事をしていただけだよ」

 まぁ、あまり気にしないでおこう。

「やっふー、アリアちん。どうだったー」

 彼女はアリアさんと言うらしい。

 てか、ヨーコさんも修道服着てるし。気付かなかった。

「ええ、そちらの(セカンド)さんの処遇は決まりました。しばらく監視をつけるとのことです」

「おー、よかったねー、カツキン。監視付くだけだってよー」

「監視? それって僕に?」

「うん、そだよー。いやー、よかったねー。脱走しようとしてそれだけなんてさー。あたし達みたいな量産型の(ファースト)だと即廃棄もんだよー」

 ……うん。あれ? 話についていけないぞ。

「あのー、(ファースト)って何? それに脱走? 僕、そんなことしたっけ?」

 僕がそう尋ねると、ヨーコさんはあちゃー、と口に出して言った。アリアさんは終始ほほ笑んでいるだけだ。

「記憶喪失かな~。ドラゴン君、ついにやっちゃったかー」

 記憶喪失!? 何か変な方向にいってる! アリアさん、ほほ笑んでないでどうにかして!

「ご愁傷様ですね」

 ……えー。というか、記憶喪失が普通に受け入れられるってどういうこと?

「ああ、精神干渉系の能力を持つ(セカンド)がいるんですよ」

 アリアさんがフォローを入れてくれる。だから、(セカンド)って何?

「監視は誰がやるのー?」

「私です」

「おお? アリアちんが? あー、確かに下手な(セカンド)とか『a』がやるよりもその方がいいかもねー」

 話が見えないんだけど……。

「というわけで、(セカンド)さんには当分私と行動を共にして貰います」

「だってー、カツキン」

 何がなんだか……。

 というか、そのあだ名ってどうにかならないのかな?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ