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アリアドネのイト  作者: ウラン
プロローグ
2/3

パラドックス

 タイムパラドックスを知っている? と、ラグナは僕、霧川きりかわ禾槻かつきに聞いた。

「えっと、確か、過去へタイムスリップして、本来起こらないはずのことをしてしまうことによって生じる矛盾、とかだっけ?」

 概ね正解、とラグナは回答し、どうやって避けることが出来るか、と質問を上乗せする。

「未来を変えるようなことをしようとすると、何らかの邪魔が入って結局はできない、って聞いたことがあるよ」

 僕の推測に対し、バタフライ効果という説がある、とラグナは言う。

「バタフライ効果?」

 本来過去にいないはずの蝶々が羽ばたく。すると、それによって生じる微々たる風が、長期の時間の流れを得て台風を起こしてしまう。そういった時間の経過における差の膨張を差す説、らしい。

 つまり、指一本動かすだけでも時が経てば大きな変化になるから、過去へ行って未来を変えないなんてことはまず出来ないとのこと。

「んー、じゃあわかんないや。降参」

 未来の青狸型のロボットが、将来子孫に多大な迷惑を掛けてしまう駄目先祖を立派に育てなおす、といったSFがあるらしい。

 それに、その駄目先祖の父親が昔、白百合のような少女に出会ったと語り、それを見てみようとタイムマシンでその現場に向かう、という話があるそうだ。まぁ、その白百合の少女は、実は過去に来ていた自分の子供だった、というオチなのだけれど。

 そう、そこが問題、とラグナは論じた。

 そもそも、過去に遡らなければ白百合の少女(?)は現れるはずもなかった。だというのに、過去へ行く前から過去が変わっているという矛盾がそこにはある。

 そういうことだ、とラグナは言った。言ってのけた。

 例え遡った所で、過去は変えることは出来ない。それ以前に、既に変わっているのだ、と。

 そこでラグナは沈黙した。それは、これまでの付き合いでわかった、これで話はおしまい、の仕草。

 すると、ラグナは唐突に、僕の額へ人差し指の先を当ててきた。

 ――この先では、君がどうしたって何も変わらない。

 話は終わりだと思ってけど、どうやらまだ続いていたらしい。

 ――ただ、見ていればいい。

「え?」

 そして、彼女はトンっ、と指を弾いた。

 ――君にはその権利があるのだから。

 瞬間、世界は暗転した。





「ねー、どうしたの、その子?」

「そこに倒れていました」

「うーん、となると、脱走未遂の(セカンド)ちゃんかな?」

「まぁ、そんな所でしょう。結局はこの有様ですが、心意気は買います」

「ふむふむ。んで、その子どーするん?」

「取り合えず、救護室に運ぼうかと」

「おー、アリアちんやさしいっ」

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