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料理で魔物を浄化する俺、気づいたら辺境領地を再生していた件 〜父は生活能力ゼロ、仲間は最強。世界もダンジョンもまとめて救います〜  作者: 尾松成也
第一章 遠い親戚と出会ったら、領地改革どころじゃなかった件

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第四話 帝国の魔女との出会い

 ジークが俺の顔をジッと見つめてきたので、「な、なんだよ……」と俺は不信感を露わにする。


「さぁて、狩りの続きといきますか!」

「えっ!? 運良くアサルトドラゴンを討伐したのに狩りを続けるの!?」

「勿論さ。ほら、あの死骸をよく見てみろ。〝魔王の残滓〟の影響で素材としての機能を果たしてないんだ」


 ジークは試しにアサルトドラゴンの腕を剣で切断した後、断面を俺に見せてくれた。本来なら赤い肉と白い骨が見えるはずなのに全てが真っ黒に染まっていた。


「なんだよこれ。骨まで真っ黒じゃんか……」

「これが〝魔王の残滓〟の影響さ。俺も実際に見るのは二回目だ。もしかしたら、食えるのかもしれないし素材として使えるのかもしれねぇ。けど、得体の知れない物を食べてみたいとは思わねぇだろ?」


 ジークはそう言ったが、俺は初めて見る素材に釘付けになっていた。確かに腹を壊したくはない。けど、俺は母さんの血を引いてるのもあってか料理をするのも好きだ。だから、使った事のない食材に自然と興味が湧いてしまった。


「けど、このまま放置するのも良くないよな?」

「そうだな。洞窟に入ったら燃料石が採れる採掘ポイントがある。それを採って帰りに燃やそうと思ってる」


 俺は残念に思いつつも、湧き上がる好奇心を抑えられなかった。〝魔王の残滓〟だけを抜く方法を編み出して、食べられるようにしたら良いのではないかと考えたのだ。勿論、方法はこれから考えるけれど。


「……父さん、肉だけでも持って帰っていいか?」

「駄目だ。まだまだ謎が多いし、感染したモンスターを倒したからといって安全と決まったわけじゃない。それにしても、なんで見るからに不吉そうな物を持ち帰りたいんだ? ルカとルナに感染したらどう責任を取るつもりだ?」


 俺の脳裏に二匹の姿が思い浮かぶ。ジークの言うことは尤もだ。俺はモンスターについて調べてるわけじゃない。けど、料理の方から〝魔王の残滓〟について調べれば何かが分かるかもしれない――そう思ったのだ。


「この〝魔王の残滓〟に侵されたモンスターって増え続けてるんだよな? 俺達だってモンスターの命を糧にして生活してるわけだし、もしかしたら〝魔王の残滓〟に侵されたモンスターだらけになるかもしれないだろ? ルカとルナだって早かれ遅かれそうなるかもしれないし、対処法が見つかるかもしれない。それに……アサルトドラゴンの肉は熟成させた方が美味いんだぞ!? あんな高級肉、燃料石で燃やす方が勿体ないじゃん!! 〝魔王の残滓〟に犯されて腹を下したとしても美味しく食べられる方が絶対良いじゃん!!」


 息を切らしながら言い切った俺を見て、ジークは「おう、いいよー」というなんとも気が抜けた返事が返ってきた。


 それを聞いて前のめりにズッコケそうになる俺。今日の俺、感情の振れ幅が凄すぎないか?

 

「おいっ! さっきあんだけ脅すような説明しといて良いって言うのかよ!?」

「へへっ、悪かったな。実は使えるなら有効活用するべきって意見は俺も賛成なんだよね」

「え? じゃあ、燃やさなきゃいけないって(くだり)は一体……?」

「全部〝魔王の残滓〟について調べてる奴の受け売りだ!」

「な……なんなんだよ、それぇ!?」


 俺は気が抜けて両膝を着いてしまった。ジークはしてやったりという笑みを浮かべながら、俺の頭をわしゃわしゃと撫でくり回してきた。


「お前の料理はエリザベートが作る料理と同じで食べると元気になるからな。勿論、毒見役は俺だ。腹を下しても食べ切ってやるから――」


 突如、ドォンッ! と森の中に鳴り響く地鳴り音。驚いた俺達はあまりの揺れに四つん這いになって揺れが収まるのを待った。


『キシャアアアアーーッ!』


 俺は耳を塞ぐ前にアサルトドラゴン特有の甲高い咆哮を聞いてしまい、脳がぐわんと揺れた。平衡感覚が狂い、身体がまともに動かない。マズイ、ここままではやられてしまう!


「マジかよ……。こんな所で生きてるアサルトドラゴンと出会すだなんて……」


 霞んだ視界の先に黒い煤をまとったアサルトドラゴンの姿が見えた。口から涎がボタボタと流れ落ちている。仲間を殺された臭いを感じ取ったのか興奮状態にあるようだ。


 俺が武器を構える前にアサルトドラゴンが突っ込んできた。一歩進むごとに大地がえぐれ、木々が薙ぎ倒されている。側にいたジークは自分よりも遥かに巨大なモンスターに吹っ飛ばされても軽傷でいられるだろう。だが、俺はジークみたいに強靭な身体には生まれていない。確実に死んでしまう!


「と、父さん!?」

「リヒト、防御姿勢を取れ! 早く!」


 ジークは大剣を抜いて矢面に立った。俺は指示通りに防御姿勢を取ったが、視界がまだ揺れている。自分がまともに防御できているかさえ定かではない。


 くっそ……。せっかく父さんに領地を再生させる決意を表明したってのに、こんなところで終わるわけには――。


 そんなことを思った次の瞬間、森が冷気に包まれた。木々が凍りつき、まるでウォーレン山脈を登っている時のような寒さを感じる。何が起こったのか分からず戸惑っていると巨大な氷塊が空から降ってきた。それも一つや二つじゃない。流星の如く降り注いでくる。その一つがアサルトドラゴンの頭部に直撃した。ぐらりとよろけた直後にまた一つ直撃し、アサルトドラゴンは唸り声をあげながら地面に倒れ込んだ。


「うわぁっ! なんなんだよ、これ!?」

「リヒト! 頭を出すな!」


 驚いて声を荒げる中、戦闘に慣れているジークは俺を抱き締めるような形で氷塊の嵐から俺を庇ってくれていた。


「あら、人がいたの? ごめんなさい、気が付かなかったわ」


 ふわりと上空から降り立ったのは耳の尖った色白の女の子。手に持っているのは自分の身丈以上にある青い宝石が嵌め込まれた長い杖。背中まで伸びる長い銀髪は毛先にかけて癖毛で波打ち、王国ではみかけない魔法使いが着るような白い装束を着ている。という事は――。


「リュネクレール帝国の魔女……?」


 優雅にアサルトドラゴンの上に降り立った女の子を見つめたまま、俺達は呆然と座り込んでいた。

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