表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
料理しかしてないのに仲間が最強になっていくんだが?〜きづけば領地、ダンジョン、世界を救ってました〜  作者: 尾松成也
第二章 領地の地下に眠る月の封印石

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/27

第十九話 地下の異変

「う〜、寒いし暗いわね……」


 シャルロットが体を震わせながら言う。それもそのはずで、綺麗な水を汲めるように湖から水を引いており、外気が地下水路に流れ込んでいる。

ちなみにこの水路は避難通路としても機能を兼ね備えている為、たまにモンスターがこの水路に迷い込むこともしばしばあるのだ。


「こればっかりは仕方ねぇな。夏場は涼しくて避暑地にすれば最高なんだけど、どうしても冬場がな……。でも、この涼しさのお陰で食糧は長く保つんだぜ?」

「冷蔵庫代わりになる程の寒さってわけね、納得だわ。ねぇ、どこかに灯りはないの? 足元が暗くて見えないわ」

「いつもは松明に火を点けてるんだけど、今日に限って消えちゃってるみたいだな」


 俺は困ったように頭を掻くと、シャルロットが杖の先に光を集めて蝋燭代わりに照らしてくれた。


「これを松明がわりにしましょう。ただ、私は光の魔法はあまり得意じゃないの。だから私に近寄ってくれると嬉しいわ」

「お、サンキュー! 魔法って、やっぱり便利だな!」


 俺は早速、シャルロットの側に寄ってみる。身体を近づけた時に少し避けられたような気がしたが、恐らく気のせいだろう。というか、そう思いたい。


「……! シャルロット、止まってくれ」


 異変に気付いた俺が立ち止まるように声をかけると、「な、何かいたの?」とシャルロットは不安気な様子で肩を小さくビクつかせる。俺は暗闇の奥を見つめ、鞘から剣を抜いた。


 俺は口元に指を当て、シャルロットよりも前へ出る。

この先は食糧を保管している貯蔵庫だ。俺は耳を澄ませてみる。


 ドチャ……ドチャ…………ドチャ……。


 聞き慣れない足音が暗闇から聞こえてきた。怪我をしているのか、歩き方が少しおかしいような気がする。足音が一拍、ズレたような……。


「な、なんか生っぽい音がするような……?」


 いつの間にか背後に控えていたシャルロットの耳にも届いたのか、顔を青くさせながら杖をギュッと握り締めた。


「俺の想像だけど、爪で床を引っ掻く様な音も微かにするから、小型のドラゴン系モンスターが入り込んだんだと思う」


 俺の言葉を聞いたシャルロットの唇が柔らかく弧を描いた。どうやら、足音の正体がモンスターだと判明し、心から安心したらしい。


「俺が扉を開けたら灯りを貯蔵庫の中に頼む」

「わかった!」


 シャルロットが魔法に集中している間、俺は貯蔵庫のドアノブに手をかけた。緊張で心拍が上がっているのを自覚した俺は一呼吸吐いてから扉を勢いよく押し開ける。


 バンッ! と扉を開け放った瞬間、シャルロットが光の玉を杖の先から部屋の中に移動させた。


「突入するぞ――っ!?」

「ひっ……」


 明明と照らし出される貯蔵庫の内部。部屋の中心にいたのは、黒い霧を纏ったドラゴン系モンスターの下半身だった。それも断面が生々しく内臓が足元に溢れているのを見た瞬間、シャルロットの甲高い悲鳴が地下に響き渡った。


「ヤダヤダヤダ、気持ち悪いぃぃっ!! なんで下半身だけなのよぉぉっ!?」

「んだよ、あのモンスターは!? アンデット系のモンスターでも見た事がねぇぞ!?」


 俺は剣を構え、下半身だけの姿のモンスターと対峙した。

よく観察してみると、脚を引き摺るように動いているせいなのか動きが鈍い。攻撃される前に真っ二つに両断してやると、ピクピクと痙攣させながら沈黙したのだった。


「お、終わった……?」


 シャルロットが声を震わせながら聞く。俺は試しに剣先でモンスターの脚部を突きながら、「あぁ、もう大丈夫みたいだ」と返事をする。シャルロットは相当怖かったのか、杖を支えにその場にへたり込んでしまった。


「おいおい、大丈夫か?」

「大丈夫じゃないわよぅぅ……。なんで下半身だけで歩くモンスターが存在してるのよぅぅ……。」


 グスグスと涙を溜めながら文句を言うシャルロット。俺もよく分からなかったので、切った脚部をよく観察してみると、ある事に気が付いたのだった。


「このモンスター、アサルトドラゴンの脚部だ!」

「それって、私がやっつけたモンスターと同じ種類の?」

「あぁ、間違いない! けど、なんで貯蔵庫に? しかも脚だけで動くなんて聞いた事がない」


 俺は思考を巡らせた。アサルトドラゴンで思い当たるのは、〝魔王の残滓〟に侵された肉片と〝ダークネス・スパイラル〟の存在だ。


 〝ダークネス・スパイラル〟はマーリンに渡したので、残っているのは〝魔王の残滓〟に侵された肉片になる。という事は――。


「もしかして、〝魔王の残滓〟に侵された肉片が再生した……?」


 俺の発言を聞いたシャルロットが、「えぇっ!?」と悲鳴に近い声音を発する。冗談じゃないと言わんばかりに、「気持ち悪すぎるわよぉぉ〜〜っ!!」と全力で拒否していたが、この時の俺は別の事を考えていた。


 え……。あんな小さな肉片が再生するだなんて、めちゃくちゃコスパ良くね? いくつか切り分けて貯蔵庫に放り込んでおいたんだけど、もしかして他の部分も増えてたりするのか?


 試しに貯蔵庫内に置いている大きな金属製の扉を開けてみると俺の予想は大当たり。他に切り分けた肉片も小さく痙攣させながら、腕の形に戻ろうとしていたのだった。


「そ……それって、さっきのモンスターの……?」

「あぁ。時間ができた時にいろいろ試してみようと思って、いろんな部位を保存してたんだけど、元の姿に戻ろうとしてたみたいだな」


 俺はモンスターの腕を鷲掴みにしたまま笑ったが、シャルロットはずっと頬を引き攣らせたまま笑っていた。


「よし、今日の晩飯はこの肉を使ってみるか!」

「えぇっ!? イヤよ、絶対にイヤ!! 〝魔王の残滓〟に侵された肉なんて、体にどんな影響を及ぼすか分からないじゃない!!」


 まぁ、尤もな台詞である。けれど、好奇心が抑えられなかった俺は一歩も引かなかった。


「食べられるかもしれないだろ? ほら、俺はエクストラスキル・料理錬金術師(フードアルケミスト)を持ってるんだし、腹壊してもどうにかなるだろ!」

「も〜、その自信はどこから湧いてくるのよぉぉ……」


 楽観的な俺に対し、悲観的になるシャルロット。

果たして、〝魔王の残滓〟に侵された食材を食す事ができるのだろうか。不安ではあるが楽しみでもある。


「さぁ、厨房に戻って調理開始だ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ