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料理しかしてないのに仲間が最強になっていくんだが?〜きづけば領地、ダンジョン、世界を救ってました〜  作者: 尾松成也
第一章 遠い親戚と出会ったら、領地改革どころじゃなかった件

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第二話 モンスター達の異変

 砦を出た俺達はムーンウルフという翼の生えたモンスターの背中にそれぞれ跨り、満月が浮かぶ夜空を飛んでいる最中だ。この二匹はドライブモンスターとして国に登録している為、シェーンベルク領以外の場所でも乗り降りする事ができる。


「さぶっ……。う〜、やっぱり夜は冷え込むな。夜中に狩りに出ようだなんて、父さんの思いつきには付き合いきれねぇな」


 呼吸をする度に吐く息が白く霧散し、ムーンウルフの白い毛並みが夜風で波打っている。俺は着けていたゴーグルを上げ、地上を見てみるとヴェルディス湖の水面が大きくひび割れているのを見て余計に寒さを感じてしまった。


 空を飛んでいるついでに、広大なシェーンベルク領を少し紹介しておこう。エルデンラント王国の最北端にあるシェーンベルク領は冬になると鼻が取れちまいそうなくらい厳しい寒さに見舞われる場所だ。住居は要塞としての機能も兼ね備えてて、王都から来た兵士やハンター達が寝泊まりできるような作りにもなってる。砦の周りには樹海が広がってて、遠くを見れば雄々しい山脈が聳え立つ自然豊かな領土だ。


 ここには狼系のモンスターが数多く生息しており、厳しい冬を超えて春になると小狼達が巣穴から顔を出して、よちよちと母狼の後をついてまわる光景を多く目にする。小狼達が母狼の後に続いて川を乗り越えようとジャンプするが失敗し、ずぶ濡れになってしまう姿は本当に可愛らしいし、ほっこりと心が和むぞ。


 しかぁし! 先程も説明したが、そんな和やかなウルフウォッチングを見て癒される人間はここにはいない! なら、手っ取り早く街おこしでもすればいい――そう思う人もいるだろう。だが、物事はそう簡単にはいかないのだ。


 俺の視界に広がっているウォーレン山脈を越えれば、王国と敵対しているリュネクレール帝国の領土に入ってしまう。それに加えて、シェーンベルク領には中堅のハンターでも倒せない程の強いモンスターが多数生息している為、プラチナ級ハンターが一人いるだけでは安心材料にはならないのだ。


「よし、もうすぐウォーレン山脈の麓だ! ルカ達のお陰でアサルトドラゴンの巣穴に最短距離で向かえるぞ! こんな夜中に付き合ってくれてありがとな!」

『アォン!』


 今、元気に返事をしたのはムーンウルフのルカ。人懐こくて俺の作った飯しか食べない食いしん坊なオスで俺の相棒でもある。ちなみにジークが跨っているのが妹のルナ。ルナは寂しがりやでジークの後を着いて回るストーカー気質なところがあり、知らない人が来るとビビッて吠えまくる傾向メスのムーンウルフだ。


 余談だが、この二匹に出会ったのは十年以上も前にジークが誤ってルカとルナの両親を討伐してしまったのがキッカケだ。その時のジークの落ち込み様は凄くてさ。当時の二匹はまだ目も開いていなかったから責任を感じたジークが家に持ち帰ってシェーンベルク家全員で手厚く世話をした。その甲斐もあってルカとルナは俺達を家族のように慕ってくれているのだ。


「リヒト! 一旦、止まれ!」


 突然、前方を飛んでいたジークが大きな声を発した。「あの不自然に開けた場所が見えるか?」と聞かれ、指をさした方向へ視線を向けると、芒の群生の上を巨大な何かが這いずり回ったような跡が残されていた。


「なんだあの跡? まるで身体を引きずって通ったような……」

「あんなの見たら気になっちゃうよなー。ここら辺に住むモンスターの生態系は大体把握してるが、こんな歩き方をする奴は見た事がない」


 ジークが珍しく真剣な表情をしていたので俺は息を呑んだ。言われてみれば確かにそうだ。あんな跡は見た事がない。


「芒に付いた煤が気になるな。後で何か問題が起こっても嫌だし、地上に降りて確認してみるか」

「え、煤? あれ、血じゃないの?」

「双眼鏡を使って見てみろ。よく見れば煤みたいなのが辺りに飛んでやがる」


 ジークに言われた通り、俺は持ってきていた双眼鏡を使ってみる。すると、芒に付いていた黒い煤が風に乗ってふわりと飛んでいるのが見えた。


「すっげ……。本当に煤だ……」

「だろ〜? けど、ただの煤じゃなさそうだ」

「何か心当たりあるのか?」

「んー、ギルドで出回ってる噂があってな。どうも()()()()()()()()()がいるらしいんだ。詳しい被害報告はないから俺もなんとも言えないんだよな」


 ジークの意味深な言葉に俺は唾を飲み込んだ。しかし、ジークは緊張を緩める為なのか、「まぁ、そんなに気にすんなって!」と明るいトーンで励ましてきた。


「ルナ、怖いのは分かるけど地上に降りてくれるか?」


 ジークが地上に降りるように指示を出すが、ルナが珍しくイヤイヤと頭を左右に振って抗議をした。ルカも同じ気持ちなのか鼻の先に皺が寄り、低く唸り声を上げている。どうやら、地上では俺達が把握できない何かが潜んでいるようだ。


「んー、地上に降りれないんだったら目的のアサルトドラゴンも討伐できないな。もう開き直って親子二人で土下座して頼み込んだら、どうにかなるような気がしてきたんだけど?」

「いいや駄目だね! アイツは俺達の生活の為に絶対に狩らなきゃならねぇ! それに明日はわざわざ国のお偉いさんが来て税金を徴収しに来るんだろ? 道中の安全くらいは確保してやらねぇとな!」


 ジークがいつもの調子でニッと笑う。どうせ、お偉いさんには恩を売っとくべきだろう? とか考えてるんだろうなぁ……と思い、俺は苦笑いしてしまった。


「さて、いつまでもこうしてる留まっているわけにもいかねぇな! サクッと様子を見に行って、アサルトドラゴンを討伐しに行きますか! ほぉ〜ら、可愛いルナちゃん♡ 帰ったらアサルトドラゴンの尻尾をあげますからねぇ〜♡」

「ったく……。本当に緊張感がねぇな……」


 猫撫で声を発してデレデレになっているジークを他所に、俺もルカの頭を撫でて気持ちを落ち着かせた後、地上へ降り立った。


 ルカ達は離れた所で待機しててもらおうという事で、口笛を吹いて退避を命じる。俺達は簡単に携帯してる武器を確認した後、アサルトドラゴンの住処であるウォーレン山脈の洞窟を目指しつつ、黒い煤の後を辿って森の中へ入っていった。

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