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料理しかしてないのに仲間が最強になっていくんだが?〜きづけば領地、ダンジョン、世界を救ってました〜  作者: 尾松成也
第一章 遠い親戚と出会ったら、領地改革どころじゃなかった件

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第十六話 王立魔法生物研究所③

「ウォーレン山脈の頂上か。やれやれ、ちぃと厄介な場所にダンジョンが出来てしまったのぅ……」


 マーリンがブツブツと独り言を言いながら険しい表情で踵を返した。向かった先は書物が積み重なった机。それらを力尽くでどかし、引き出しの中から取り出した便箋に何かを書き殴った後、手紙を鷹の姿に変えた。鷹の嘴に何かの巻き物を咥えさせて暖炉から外へ放った後、俺達の方へ戻ってきた。


「今、王立冒険者協会・第一支部に所属するハンター達にダンジョンの調査依頼を出した。これで〝封印石〟が見つかれば良いんじゃが……」

「あの……。さっきから出てくる〝封印石〟ってなんですか?」

「魔王の巨大な魔力の一部が封印されている楔みたいな石じゃよ。もう二百年は大丈夫かと思っていたんじゃが、どうやら想像していた以上に封印が弱まっているらしいの」


 マーリンの深刻そうな表情に俺は胸がざわついた。それは隣にいたシャルロットも同じだったようで、不安そうに俺の服の袖を握りしめていた。


「これも何かの縁じゃ。お前達にこの世界にある属性と魔王について少し解説してやろう」


 そう言って、マーリンは丸い球体に描かれていた世界地図から、この世界にある全ての属性を記した書物の絵を浮き上がらせた。いつの間にか手に伸ばし棒を持ち、赤い縁メガネをかけている。そして、そのままシャルロットに向かって伸ばし棒の先を向けた。

 

「シャルロット。この世界には属性が九つあると思うが、全ての属性を答えてみせよ」

「はい。火・水・風、地、木、光、闇、月、太陽があります」

「正解じゃ。では、リヒト。お主は魔王についてジークから何か聞いておるか?」

「御伽話レベルだからなんとも言えないけど、魔族の王にしては珍しく光を使った攻撃を使ってたとかって聞いたような……」


 俺はジークから読み聞かせてもらった絵本を思い出しつつ曖昧に答えたが、マーリンにとっては模範解答だったらしく、「うむ! おおよそ正解じゃな!」と言われ、ホッと安堵したのだった。


「この魔王じゃが非常に厄介な相手でな。お主達の先祖と一緒に戦った勇者を取り込んだ末に光属性の魔力を得たと言われておるのじゃ。だから、勇者一行は魔王の魔力を九分割して、各ダンジョンの最下層に封印するしかなかったのじゃ」

「えっ……。じゃあ、うちにできたヤバいダンジョンって結構ヤバいって事ですか?」


 俺の言葉にマーリンは「そうじゃの」と深く頷いた。俺は一人で頭を抱えた。しかし、マーリンの解説は続く。


「ここからは耳をかっぽじってよく聞くんじゃ。そして、帰ってジークにも伝えよ。このままではお主の領地がヤバいとな」

「お、俺の領地がヤバいってどういう事だよ!?」


 驚きのあまりタメ口になってしまったが、マーリンは特に気にした素振りを見せず、淡々と解説を続ける。


「よいか? 王国の北にあるのがシェーンベルク領。その上にある山々がウォーレン山脈。そして、更に山脈を北上すると帝国領に入る。ちなみに帝国領にも〝封印石〟のあるダンジョンが現れた事がミレーナの知らせで判明したんじゃ」

「帝国にも? でも、なんで帝国にもダンジョンが現れたから俺の領地がヤバいってなるんだよ?」


 率直な疑問をぶつけると、シャルロットも俺に同意するかのように何度も頷いていた。


「実はここだけの話、魔王の本体はエルデンラント王国領内にある旧王都跡に封印されておるのじゃ」


 俺とシャルロットは暫く無言になった後、同時に「「えぇっ!?」」と驚きを露わにした。


「お主もどうして王都が領土の中心ではなく、南方にあるのか不思議に感じておったじゃろ?」

「た、確かに直線距離で突っ切って行った方が早いとは思ってたけど……」

「けど、なんじゃ?」

「あ……いや、なんでもないです。続けてください」


 この時、俺は過去の事を思い出して身体に悪寒が走っていた。

 

 言えねぇ……。父さんに旧王都跡地にはアンデット系のモンスターがウジャウジャ住んでいて、悪い事をしたら攫われちまうって脅されてたなんて言えねぇ……!! 子供の頃、反抗期でアンデット系のダンジョンに放り込まれて、より信憑性が増したから避けて通ってきましただなんて絶対に言えねぇ……!!


 冷や汗が止めどなく噴き出てきたが、なんとか深く突っ込まれずに済んだのだった。


「調査の結果、〝魔王の残滓〟は旧王都跡から発せられる魔力に反応しているようでの。それで世界各地で〝封印石〟のあるダンジョンが現れていっているようなんじゃ。もし、〝封印石〟に封印されている魔王の魔力が顕現すれば、巨大な魔獣の姿となって山を割り、木々は薙ぎ倒され、進路を塞ぐもの全てを踏み倒しながら旧王都へ向かうじゃろう」


 俺は衝撃の事実にギョッとしてしまった。


「そ、それじゃあ……俺の領地は……」

「このままじゃと領地が全て消し飛ぶじゃろうな!」

「そんな明るい声音で言わないでくださいよぉぉぉぉ!!」


 俺は頭が真っ白になってしまった。ダンジョンができたことに喜んでいる場合ではなかったのだと現実を知った瞬間であった。


「ああぁぁ〜〜っ!! 税金の問題ですら解決していないのに、ダンジョンの問題まで降りかかるだなんて!! しかも、なんでよりによってうちの領地なんだよ!? こんなの領地改革どころじゃねぇじゃんか!!」


 あまりの取り乱し様に「まだ諦めるのは早いわ!」とシャルロットが俺の手を握っててきたので、ドキッと小さく心臓が跳ねた。


「私がこっちに移り住んで、一緒に領地を盛り上げていくってのはどうかしら!? まだ封印は解けてないんだから、それまでやれる準備はしておきましょうよ!」

「シャ、シャルロットと一緒に……?」


 まさかそんな事を言われるとは思ってもいなかった俺は目を丸くしたまま黙り込んでいた。

 

「貴方の領地は空気が美味しいし、病で寝込みがちな私の母もきっと気に入ると思うの! 勿論、タダじゃないわ! 貴方の領地に住まわせてもらう代わりに魔法を使って、できる限りのことはやらせてもらうわ!」


 胸を張って宣言するシャルロットを見て、「やれやれ、ミレーナに似て素直じゃないのう……」とマーリンが意味深な言葉を呟く。それを聞いたシャルロットが、「マーリン様! 今考えている事を口に出すのは禁止ですっ!!」と顔を真っ赤にしてマーリンの口を塞ごうと慌てて追いかけ始めた。


 あれ? 俺……なんで、笑ってるんだろう……。


 俺は口角が上がっていた理由も分からないまま、二人のやりとりを見守ることしかできなかった。

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