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料理しかしてないのに仲間が最強になっていくんだが?〜きづけば領地、ダンジョン、世界を救ってました〜  作者: 尾松成也
第一章 遠い親戚と出会ったら、領地改革どころじゃなかった件

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第一話 シェーンベルク領の領内事情

初めまして、尾松成也と申します!

仕事が忙しくて更新が遅くなるかもですが、どうぞよろしくお願いします!


評価&ブクマ頂けるとめちゃくちゃ喜びます(*´꒳`*)!!

「わりぃな、リヒト! 持ち金を全部使い果たしちまった!」


 俺と同じ燃えるような赤髪を掻き上げて青い目をキラキラと輝かせている男の名はジーク・シェーンベルク。血の繋がった俺の実の父親だ。職業は大型ギルドに所属するハンター。しかも人望も厚く、後輩ハンター達の面倒見も良いときた。


 だが、しかし! そんな完璧な男にも唯一欠点があった! いろんな人が寄ってくるが故に財布の紐が緩くなってしまう傾向があるのだ!


 その為、どれだけ危険な依頼を受けて大金を稼いできても金が湯水の如く飛んでいく。俺が十歳の頃に持病で亡くなってしまった母親も厨房で頭痛に耐える姿を何度か見かけたことがあったが、原因を知ってからは俺も同じように頭痛に見舞われる事となった。


「……で、今回は何に使ったんだ? まさか、飲み屋の女に貢いだとかじゃないだろうな?」


 一人息子である俺は持っていた鉄製のレードルをへし折りそうになった。「ピンポンピンポン、大正解〜!」という返事が返ってきた瞬間、俺は鍋をかき混ぜていたレードルをジークに向かって投げ飛ばしていた。それを余裕で避けたのを見て、チッと舌打ちを打つ事になったが。


「フッ、今のはなかなかの豪速球だったな。流石は俺の息子! ハンターとしての素質が――」

「うるさい、この脳筋親父!! 手持ちの金がなくなるまで何に使ったんだ!? ついに娼館に通いでも始めたか!?」


 俺の言葉を聞いたジークは「おいおい、いきなり何を言い出すんだ?」とヘラヘラと笑う。その笑顔を見て無性に腹が立ったが、手を出さなかった俺を誰か褒めて欲しい。


「俺がこの世で愛しているのは亡き妻、エリザベートただ一人だというのに! あぁ、愛しのエリザベート……。どうして、俺とリヒトを遺して逝ってしまったんだ……」


 ジークはテーブルの上に置いてあった水晶玉を抱え込みながらシクシクと泣き始めた。水晶玉の中でウェディングを着た母さんの姿が映し出されている。この水晶玉は王家直属の魔術師製とかいう、ぼったくりの水晶玉。この水晶玉は記憶を映し出す特別な魔法道具らしいが、俺から見ればただの硝子玉だ。


(くっ……! また、お涙頂戴作戦で話をはぐらかすつもりか!? 今日という今日はあの事を問い詰めてやる!)


 いつもこんな調子ではぐらかされてしまうが、今日の俺はかなり焦っていた。なぜなら、税金を支払う金貨を残しておいたはずの金貨が一枚も無くなってしまっていたからだ。


 犯人はジーク・シェーンベルク。というか、犯人は父親しかいない。何故なら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からだ。


 おいおいと泣き喚くジークに痺れを切らした俺は「あのさ!」と話を切り出した。


「国に納めるはずの金貨が金庫から無くなってるんだよね。明日、王都から使者が来る予定だから税金を支払わなきゃいけないんだけど」

「えっ……? 使者が来るのって明日だっけ……?」


 ジークの挙動が明らかおかしくなった。血の気が引いたのか顔が一気に青褪めたし、視線が泳いでいる。俺は内心ではクロだと確信しつつ、「そうだよ」とぶっきらぼうに続きを話し始めた。


「明日、税金を払わなきゃいけないってのに大金貨がなくなってんの! これは使っちゃ駄目だから金庫に入れておくって言ったの覚えてるよな?」

「あー、うん……。そうだったな、アハハ……」


 ジークはダラダラと汗を垂れ流したまま目を合わせてくれなくなった。完璧クロじゃねぇか、この野郎。


「金庫の金を使ったのか、使ってねぇのか……どっちなんだ!?」


 俺は王都でたまたま見かけた取り立て屋達のように、拳をテーブルに叩き付けて睨め上げてやる。すると、ジークは誤魔化しきれないと感じたのか、「ごめん、リヒト!!」と額をテーブルに擦り付けて謝ってきた。


「病に臥せった両親の為に薬を買いたいって困ってる兄妹がいたんだ! 着てる服なんかボロボロに汚れてて、手足なんて棒みたいに細くてよ……。そんなの放っておけるわけねぇじゃねぇか……」


 クソッ! そんな顔をするなよ、この野郎共! 怒れなくなっちまうだろうが――。


 こんな事は初めてではないし、きっと女に貢いだという件もそういった類の内容だろう。ジーク・シェーンベルクという男は周りに困っている人がいたら放って置けない性分だ。側からみればとても良い行いをしていると思うだろう。だが、この男に何度家族を蔑ろにされた事か――。


 意を決した俺は床に転がっていたレードルを手に取り、その先端をジークに突きつけてやった。


「ふざけんな、俺達の生活はどうなってもいいってか!? 他人の心配をする前に俺達の生活の心配をしろよ! あのお金は領地税を支払う為に置いてた金なんだぞ!? 税金が払えなきゃ、この広大な土地は全部国に没収されちまう……それを理解してんのか!?」


 正論を言う俺に対し、ジークは何故か「へへっ……。だから、お前がいるんじゃねぇか……」と意味深な笑みを浮かべた。


 何を言い出すのか予想がついた俺は「や、やらないからな!」と拒否する。しかし、逃げる前にジークに両肩を掴まれてしまった。


「こ、今回の件も父さんが招いた事態だろ!? 俺の手を借りずに父さんが一人で責任を取るべきだっ!」

「シェーンベルク家の家訓その一。俺の一大事は家族の一大事。家族の一大事は家族で対処するべし。父さん一人じゃなくて、リヒトの力も必要なんだよ。頭の良いお前なら分かってくれるだろ?」


 なんなんだ、その家訓は!? そんなの初めて聞いたぞ!?


 俺は視線を合わせないまま、拒否するように首を左右に振り続けた。

 

「い……嫌だ、分かりたくねぇ……。そんな自己中心的な発想に俺はもう振り回されねぇぞ……。こんな不安定な生活じゃなくて、俺は領主として安定した生活を送るって目標があるんだ! ハンターなんて危険と隣り合わせの仕事なんてやってられっか!」


 俺はジークに向かって〝領主になる〟と宣言したが、それでもジークは離してくれなかった。


 肩に指が食い込んで痛い。ギルドでも一握りしかいないプラチナ級のハンターの息子だからって、子供相手に本気で肩を掴まないで欲しいんですけど!? 何故なら、俺はアンタみたいに防御力は高くないんだからな!


 そんな事を思っていると、ジークはにっこりと微笑んだ。その笑顔を見たリヒトは更に嫌な予感がして身体中から冷や汗が噴き出てきた。


「なーに、大金貨二枚くらい心配すんなって! 俺の手に掛かれば、ちょちょいのちょいよ! さぁ、お前の手料理を食ったら一狩り行くぞ! 狙うは国境に聳え立つ山脈に生息していると言われるアサルトドラゴンだ!」


 この後、シェーンベルク領に「ふ……ふざけんなぁぁぁぁっ!!」という叫び声が響き渡り、羽を休ませていた鳥系のモンスターが一斉に羽ばたいていった。


「俺達だけでアサルトドラゴンを討伐!? 無理無理、絶対に無理! アイツが山肌に頭突きするだけで山の形が変わるって言われてるんだぞ!? 俺、十六歳の若さで死にたくないんだけど!?」

 

 アサルトドラゴン――別名・三本槍の土竜。目は退化しているので視覚はないが、その代わり嗅覚が発達している。個体によって形は様々だが、鼻先が槍のように尖っており、身体を捩りながら硬い岩盤に風穴を開ける生き物だ。音にも敏感でかなりの神経質。冬になると冬眠している事が多いが、残念ながら今の季節は秋。獲物を捕食する為に活発に活動している時期である。

 

「ま、まさか……税金が払えないからって、二人で死にに行くつもりじゃ……」


 アサルトドラゴンに踏み潰される光景を想像した俺は血の気が引くのを感じた。しかし、ジークは何も心配していないようで「死ぬ気なんてさらさらねぇよ!」と爽やかに笑って否定した。


「俺の先祖は勇者の仲間で前衛を務める程の戦士だったんだ。妻のエリザベートの先祖は異世界から来た転生者、しかも勇者一行の料理番だったらしい。その料理を食べると不思議な事に百人力のパワーを出せたって話だぜ? お前はそんな伝説の勇者に縁のある人物の血を濃く引いてるんだ。いつまでもそんな心配そうな顔をしなさんな!」


 乱暴に頭を撫でられた俺は「どこから来るんだよ、その自信は……」と小声で文句を言う。けれど、ジークの耳には聞こえていなかったらしく、鼻歌を歌いながら火にかけていた鍋の中を覗き込んでいた。


「おっ、今日の料理はキングベアの山菜鍋か! キングベアの肉は臭みがなくて美味いんだよな〜!」

「山菜を採りに行ってる時に遭遇したんだ。携帯してた武器が何本が駄目になっちまったけど、お……俺が一人で倒したよ」


 少し照れくさそうに言うと、ジークはキラキラと目を輝かせ始めた。つい先程、ハンターなんてやってられるか! と宣言した手前、変な気持ちになっているけれど。


「リヒト……お前って奴は……」


 マズイ、このままだと羽交締めにされる――。


 そう思った俺は反射的に距離を取ろうとしたが、気が付けば父親の胸の中にいた。分厚い胸板に顔面をギュウギュウと押し付けられ、俺は唸り声を上げながらもがき苦しむ。


「凄いじゃねぇか、リヒト! 中堅のハンターでも三人がかりで仕留めるってのに、あの獰猛なキングベアを一人で仕留めるだなんてよ! 流石は俺とエリザベートの息子だな!」

「べ、別にこんなの普通だからっ! それより早く解放してくれっ! 首が……首が締まって息がしづらいっ!」

 

 ギブアップだというように俺はジークの腕をペチペチと叩くと、「悪い悪い! つい嬉しくてさ!」と笑顔で謝られた。


「ゲホッゲホッ! 力の加減をしろってんだ……」


 正直、プラチナ級のハンターにこうやって褒められるのはめちゃくちゃ嬉しい。今の俺があるのは父さんが小さい頃から稽古をつけてくれたお陰だ。その点は感謝してる。だけど、幼少期にアンデッド系のダンジョンに放り込まれた恨みは一生忘れないけどな!


 こうして俺達親子はキングベアの山菜鍋を頬張った後、狩猟に出る為に武器を揃え、シェーンベルク領と隣国に跨る山脈を目指して砦を出た。


 だが、その山脈の向こう側から、俺達親子の運命を変える“遠い親戚”に助けられるとは、この時、誰も想定していなかった。

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