201話~300話まで(7/12~8/10)
Xに載せている140字小説のまとめです。
詩のような余韻のある物語を目指しています。
よろしくお願いします。
7月12日
『色水』
「かき氷のシロップ何がいい?」
「あのね、いちごでしょレモンとメロンとブルーハワイ!」
「えっ全部?」
「うん虹色のかき氷!」
全部のシロップをかけた虹色を頬張るわが子。
自分にも同じものをもう1つ。
かき氷は食べながら少しずつ溶けて色水のように混じり合う。
…夏の暑い日
#文披31題
7月13日
『牙』
一人で訪れた水族館はひんやりと暗く冷たく海の底の様だった。滅茶苦茶になっていた思考がやがて透明になってゆく。
クジラの骨格模型サメの水槽。
…鋭い牙
サメの様に強くなりたい。
売店でサメの牙のネックレスを買った。
身につければほんの少しサメの強さを手に入れた気がした。
#文披31題
『七花八裂』
初夏の暑い日。
「水合戦やろうぜ!」
と兄貴に誘われた。
「水合戦って何?」
「100均で水風船買ってきたんだ。雪合戦代わり投げあう!」
「へえ!いいじゃん」
水道につなげばいっぺんに30個の水風船が膨らむ。
準備は万端!
掛け声と水風船の花びらのような爆弾。
『冷蔵庫活用法』
冷蔵庫の中にどんぶりが入っている。
「なんで?」
「あーそれ氷作るのが間に合わなくってちょっとしかないの。冷麺入れる時冷たい方がいいでしょ」
「氷買ってくればいいのに」
「暑いから外に出たくない」
「それもそうか…お昼冷麺なんだ」
よく冷えたどんぶりの冷麺は美味しい。
夏の暑い日。
7月14日
『浮き輪』
空に瞬く満天の星。
浮き輪を身につけ海を漂う。
どうやら漂流したらしい。
それだと言うのにまるで危機感がない。
こういう時は下手に泳いで体力を消耗するより浮いている方が賢明だ。
遠くに見えるは船灯り。
「おーいそこに人がいるぞ!」
僕は
「助けて漂流した」
と叫んだ。
#文披31題
『嵐の夜』
…辺りが暗闇に包まれた。
キャーキャー騒ぐ子供の声。
突然の落雷で停電してしまうのは田舎ならではのよくある出来事だ。
飾ってあったキャンドルに火を灯す。
甘い香りが漂って穏やかな光が心を落ち着かせてくれる。
「停電いつまでかな」
「暗いの怖い」
そう言いながら子供達は少し楽しそうだ。
『初夏の夜の来客』
連日のように気温が高く窓を開け蚊帳をつって寝ている。
蚊帳に小さな光の欠片がついていた。
…蛍だ。
青白い月と同じ色をしている。
月が欠けて粉になって舞い落ちたような、そんな小さな光。しばらく眺めているとまたふわりと舞い上がり飛んでいった。幽かに点滅しながら。
7月15日
『解読』
「見ちゃダメー!」
紙にはハートや星形や円などの記号とその中に数字が書いてある。
机の前に記号の書かれた暗号表。どうやら小学校で暗号のお手紙が流行っているらしい。
そういえば私も子供の頃やってたな。
自分で考えた暗号の手紙で友達と文通。
『線香花火』
夏の夜の思い出といえばやはり花火だ。
スーパーの福引で4等賞の花火が当たった。
一人暮らしをしている大人に花火というのもどうかと思うがもったいないので1人で花火をする。
最後に線香花火がジジッと音を立てて落ちた。
家で手持ち花火をする子供の頃の思い出が、ふとよみがえる。
『神秘より食い気』
ネスコのネッシーの正体が判明した。
かねてより言われていた巨大ウナギであった。
その途端日本でネッシーの養殖の研究開始。
ネッシーの巨大蒲焼が発売されたのは8年後。これで土用の丑の日は安泰だ!
「俺らのガキの頃は恐竜だと思われてたのに…」
と爺ちゃんがぼやいていた。
『詐欺?いいえ生活の知恵です!』
「シャトーブリアン?」
「うん父さん食べたいって」
「そんな高いの買えないって仕方がないなもう…」
安い牛肉の上に牛脂を並べる。こうやって一晩置いておけばシャトーブリアンみたいに肉質が良くなる。
義父は満足したみたいだ。
「うまいさすがシャトーブリアン!」
7月16日
『にわか雨』
突然降り出した雨に民家の軒先に駆け込んだ。
…まいったな。傘は持っていない。
止むまでしばらくここで待つしかなさそうだ。
足元に何かが触れる。
たまに出会う野良猫だ。
「びしょ濡れになっちゃった」
猫と目が合う。
「ミャア」
お前もかと言われた気がした。
#文披31題
『襖の中の落書き』
襖の張り替えをしようと紙を破ったら中からカレンダーと絵が出てきた。
カレンダーに書かれた年月は寛永5年、江戸時代じゃないか。確かに家系図は江戸時代からあるけど…
太郎兄上食べ過ぎで寝込むと書かれたちょっと間抜けな絵。
僕も妹に食べ過ぎでこの間笑われた。
…僕、ご先祖様に似たのかも。
『庭の薔薇』
「花咲病になっちゃった」
メンヘラな彼女がそう言うのでまた始まったかと聞き流した。
花の数がどんどん増えていく。
「薔薇の木になったら…貴方のそばに植えて」
僕が思ったよりずっと深刻な事態だった事に気がついた時彼女は完全な薔薇になっていた。
愛らしい彼女そのままの美しい薔薇の花に。
7月17日
『空蝉 』
保育園のバッグを開くと中から大量のセミの抜け殻。
「ママすごいでしょ!」
ドヤ顔の息子。
昔だったら悲鳴を上げていただろうけど、すっかりなれっこになってしまった。
「お弁当箱は?」
「抜け殻入れたら、入らなくなっちゃった」
笑顔の息子に、虚無顔の私。
#文披31題
『古い手紙』
あゝ正直に告白いたしましょう!
貴殿の事を愛してゐたのです。
日常の変わらぬ愛おしさの中で貴殿を何よりも愛してゐたのです。
想いを伝えることは一度も無く今日私は旅立ちます。
あゝ生きて帰れば告白いたしましょう。
亡くなった幼馴染の古いラブレターを見たのは80年後。
『星の砂』
「何これ星の形をしてる!」
「星の砂って言うんだよ」
兄の旅行のお土産に私は夢中になっていた。
瓶の中に詰まった小さな星形のはまるで銀河を閉じ込めたようだと思った。
小さな瓶の中の小さな銀河。
サラサラと音を立てて瓶の中の銀河は白く輝く。
そこにあるのは小さな宇宙。
7月18日
『交換所』
ガラクタばかりが並んでゐた。
「それであんた何を持ってきたんだい」
そう言われても私は手ぶらだった。
「良いさ、ここにある好きなモノ1つ持って行きな」
その人はそう言った。
私はペンを一つ手に取った。
これは私の諦めた夢だ。
代わりに胸に刺さっていたナイフを置いてきた。
#文披31題
『熊鈴』
自治会から熊鈴が配られた。
ついにこんな所にまでクマが出るようになってきたらしい。
「ねえこれ鳴らしたらクマさん来るの?」
3歳の息子は目をキラキラさせて喜んでいる。
絵本かアニメしか知らないものね。
アニメの赤い帽子の紳士なクマなら大歓迎だけど、息子にどう説明したものか…
『映画の時間』
映画を見に来たのだが上映時間勘違いしていたらしい。1時間半も早く映画館日に来てしまった。
…いいさ、最高の映画体験をしてやる。
ポップコーンを頬張り映画情報をチェック。
実は同じ映画の3回目
セリフももう覚えてる
既に頭の中で映画は上映!
さあいよいよ入場だ‼
7月18日
『共依存』
あゝ恨みがましい、恨みがましい!
どんなに良くしたって感謝なんてされやしない。
それが分かっているのなら何故離れないかと、貴方は言ふが事態はそう単純ではない。
あの人を愛してゐるのだから!
身勝手で自己中心で被害妄想の酷いあの人を愛してゐるのだから!
『アリスのドレス』
娘のピアノの発表会が無事に終わり建物の隣にあったファストフード店に娘を連れて行った。
「ドレス脱ぎたくない」
と娘。
どうせこんな事になるだろうと私はピナフォアを持ってきていた。ピナフォア—つまり汚れよけのエプロンだが、それをつけた娘は
「アリスみたい」
と喜んだ。
『笠』
じいちゃん家に昔の菅笠? が置いてある。
「すげー…時代劇でしか見たことない」
「何言ってるんだ現役だぞ」
そう言ってじいちゃんは笠をかぶった。
「ワークマンで買ってきたやつだ!」
なぜかドヤ顔のじいちゃん。
…え? マジで売ってんの?
7月19日
『網戸』
カブトムシがくっついてる!
これはきっと息子が大喜びするに違いない。
私は網戸をそっと開け捕まえる。
昔は虫が苦手だったけれどそうも言ってられない。
「わぁ本当にカブトムシ!」
虫かごを見てキラキラの目の息子。
「待って部屋には持ってかないで!」
一緒に寝るのはやめて…
『月夜の空き瓶』
夜の海は怪物の様だ。
黒々とした波と海鳴りの音が昼とは全く違う顔を見せる。遥か彼方でボーっと言う汽笛の音がする。
夜行船の姿は見えない。
海辺を歩いていて足元に何かが当たる。
波に流されてきた異国の瓶だ。
よく見ようと持ち上げて月の光で照らす。
月が瓶の中に入り夜を閉じ込めた。
『古時計』
「動かないだろそれ」
「多分ね…」
蔵の中で埃をかぶった古時計を見つけた。
随分と古びた振り子時計はおそらく100年以上前のものだろう。
埃を丁寧に拭き取る。
蔵の修理をする為、中の物を全部出したのだ。
私は刺さっていたネジを巻いた。
時計の針が動き出す。
…コチ…コチ…コチ
『兄様』
兄様兄様、聞いてくださいな!
わたくし東京の女学校に参りますのほら素敵なリボンでしょう。
兄様兄様、聞いてくださいな!
空襲が御座いましたの、でも皆様無事ですわ。
兄様兄様、聞いてくださいな!
戦争が終わりましたの。
それなのに、
兄様兄様どうしてお亡くなりになってしまったの
7月20日
『包み紙』
ビー玉みたいなキャンディを口に放り込む。
包み紙を無造作に机の上に置くと娘がやってきて
「ちょうだい」
と言った。
俺はキャンディを娘に渡す。
キャンディを頬張った娘はご機嫌で机の包み紙を全部持っていった。
もしかして欲しかったのはそっち?
工作にでも使うのだろうか…
#文披31題
7月21日
『海水浴』
「海水浴に行こう」
「え っ!?今から」
「そりゃ、今からじゃないと暑くて熱中症になっちゃうだろ」
少し傾きかけた太陽とうっすらと空に浮かぶ月を見ながら、海に飛び込む。
はしゃぐ彼の姿が夕焼けの太陽に照らされてキラキラと輝いて見えた。
夏の海水浴の思い出。
#文披31題
『ラムネ瓶の中のビー玉』
息子が空になったラムネ瓶に手を突っ込んでいる。
「だめだよ指が抜けなくなっちゃう」
カランカラン、とラムネ瓶を振る息子。
「中のビー玉が欲しいんでしょ」
「うん」
「100均で買ってあげるから」
「本当?やったー」
そういえば私もラムネ瓶の中のビー玉が欲しくって同じ事したな。
『虹の根元』
夏の疲れがたまっていてうつらうつらと昼寝をしてしまった午後の昼下がり。夕立は気温を下げて心地よさを運んできてくれる。
ふと目を開くと縁側の向こうに広がるのは向いの茶畑から生えた虹であった。
「…きれい」
虹の根元には幸福が埋まっているという。
幸福はすぐ目の前にあるのかもしれない。
『父の時計』
修理に出していた父の形見の腕時計が帰ってきた。
それはとても古い職人の手作りで修理してくれた店はどうやら父とその腕時計を知っているらしかった。
「お父様もこの時計を修理に持っていらしたのですよ」
もしかすればこの時計は祖父の物なのかもしれない。
…時計の針がコチコチ動く
『夜行列車』
家出した娘を迎えに行った。
ずっと昔、夜行列車に乗って家を飛び出した私がそこにいた。
あの頃の閉塞感。
どこにも行けない何にもなれないまま死んでいく様な感じ。夜行列車に乗って逃げ出したあの日の私がそこにいた。
娘の隣を歩いて帰る夜の道。
何も言わずただ黙ってあの日の母と重なる私。
7月22日
『賑やかな家』
人がいなくなった家はガランと寂しかった。
寂しかった家は人を招くことにした。
人が一人一人増えてゆく。人が人を呼んで どんどん増えていく。家はとても賑やかになった。
もう家は寂しくなくなった。
そして家は近所の人間から『ゴーストハウス』と呼ばれた。
#文披31題
『さみしい』
さみしいさみしい
大勢の人の中で一人ぼっち。
たくさん人が話している中で自分から話すのはとても苦手。よくあること、と言えばそうかもしれないけれどとても心が重苦しい。
だけど…1人でいる時は、
一人なのに一人じゃない
たった一人なのにさみしくない
私の心と私はいる。
#文披31題
『旅立ち』
空っぽの鞄に荷物を詰めていく。
この家とも今日でお別れ。
この町ともこの家とも私と関わった人達とも皆お別れ。はち切れそうに膨らんだ鞄はそれでも両手で抱えられるほどしかない。
私にとって必要だったものは本当にあったのだろうか。
ガタン…ゴトン
電車にゆられて遠く離れて行く街を眺める。
7月23日
『探偵』
「糸電話?」
キッチンから紙コップを息子が持って行ったので何かと思えば糸電話を作っていた様だ。
「違うよそれは無線機なの!」
「無線機?」
「そうだよ。こうやってバレないようにこっそり後をつけて連絡するの」
あぁ探偵ごっこか…
そういえば昨日アニメで探偵ものやってたな。
#文披31題
『灯台』
船の看板の上から眺める海は黒々としていた。
遠くにポツンと明かりが灯る。
寂れた港町の灯台の明かりだ。
それは道しるべ であり1つの座標である。
私の心の中の様だと想った。
先の見えない不安の中で、ふと見上げればたった一つの座標がポツンと灯る。
私の人生に小さな明かりが灯る。
『親子でハイキング』
亀の親子がハイキングに出かけた。
お弁当を持ってゆっくりと歩いて行く。
「パパ本当にここがハイキングの場所なの?」
「地図ではここのはずだよ」
「真っ平らになっちゃってるよ」
「いいや皆でお弁当食べよ」
山に着くまでに10年かかってしまい山は住宅地になっていた。
『海の記憶』
潮騒の音がする。
この町からは海なんてずっとずっと遠いのに、潮騒の音がする。
遠い昔、この辺りは海の底だったらしく様々な貝殻や魚類などの化石が出土する。
土が海の記憶を持っているのかもしれない。
人間もまた海からやってきたのだ。
心地よく懐かしい潮騒の音がする。
2月24日
『写真の中の記憶』
本棚を整理して出てきた古い写真は俺にそっくりな人物が写っていた。
猫を膝に乗せて笑った時に左の口元が上がっているのは父の笑い方とそっくりだ。
誰かと尋ねれば死んだひいじいちゃんらしい。
戦争に行く前に撮った若い頃の写真。
…俺と似ているかな。
俺と変わらない頃年の頃の曽祖父を想う。
『夏の爪先』
ファッション誌についていたのは可愛い夏らしい色合いのマニキュアのセットだった。
そして雑誌の中にはおしゃれなネイルアート特集。
仕事柄マニキュアは禁止である。
いつもそっけない指先。
足の爪先に丁寧にマニキュアを塗る。
「出来た」
ほんの少し心に鮮やかな夏が訪れた。
#文披31題
『夕闇の空の下』
どろりと溶けた様な色をした空はムンクの叫びのようだった。昔友人と一緒にムンク展を見に行った事を思い出した。
「ムンク好きなの?」
「別に…私じゃなくて好きな作家様がムンク好きなの」
彼女とは卒業してそれっきり。
今はどうしているだろう。
叫びたくなるような空の下、
彼女を思い出す。
『神社の境内の森で』
仕事は急に半日休みになってしまった。家に帰るのには時間がある、いつも車で素通りする神社に参拝してみる事にした。
鎮守の森は涼やかで木漏れ日の光がキラキラと反射している。森の小道を歩きながら、ふと1羽の青い鳥が飛んで行くのが見えた。
…翡翠だ
ちょっとした幸運が舞い降りたような気分だ。
7月25日
『じりじり』
「おいでそんなに汚れてかわいそうに」
そう言ってその男は手を出してきたが、今まで親切ぼかしに話しかけてきた人間の何と信頼ならない事か。
俺はじりじりと後ずさる逃げ場がない。
畜生!捕まった。
風呂に入れられ 飯を出され…
暖かいミルクなんかに騙されるかミャア
#文披31題に参加中
『初めまして外の世界』
やっと足が生え揃って外の世界に飛び跳ねていくことができるようになった。
トゲのある植物をよじ登って花のところに行けば甘い香りがして花びらが柔らかくて、あまりに心地よかった。
朝露がキラキラまるで虹のかけらじゃないか!
オタマジャクシだった頃に水面から見上げて見えた虹を思い出した。
『キャンディーのジュース』
夏場になるとどうしてもキャンディーが熱で溶けてしまう。くっついたキャンディを剥がして最後の1つを 口に放り込んだ。
溶けたキャンディが瓶の底にくっついている。
…もったいないなぁ。
僕は瓶の中に水を入れた。
ストローでかき混ぜて飲めば甘いジュースが口の中いっぱいに広がった。
『路肩の百合』
大通りのガードレールの横に白い百合の花が咲いていた。
『ここで誰か死んだのかな…』
そう思って 二度見した時にその花が自生の花であることに気がついた。
焼けたアスファルトの割れ目から目を出し凛として咲く花は強く美しいと思った。
『猫』
おい人間大丈夫か?
お前ねずみも取れないんだってな?
おい人間!
お前朝になったら一体どこまで縄張り巡回してるんだ?
おい人間!
帰ってくるなりひっくり返って大丈夫か?
抱きついてなさないんだが…
大丈夫か人間?
…まあしばらくこうしてやるかニャ
7月26日
『悪夢』
こんな夢を見た 出口がない迷路
こんな夢を見た 追いかける殺人鬼
こんな夢を見た 抜け出せない世界
こんな夢を見た 逃げても逃げても逃げられない
こんな夢を見た 夢から覚めてもまた夢の中
ずっとずっと夢 こんな…こんな…こんな…
夢夢夢夢夢夢夢 何回何百回目覚めても……
#文披31題
『リプライ』
相互フォロワー様にいつも悪夢を見る子がいる。
心配になってリプを送る。
『暖かいものでも飲んで落ち着いて』
『寝る前に3回バクって唱えると悪夢を食べてくれるよ』
『何か好きな音楽でも聞こ?』
返信はあったりなかったり…
届くといいな私の思い。
#文披31題
『ネオン管の魔力』
ネオンサインが輝くその喫茶店が好きだった。
中に入れば怪奇小説の棚にレジ横には恐竜のオブジェ薄暗く怪しい雰囲気は10代の頃のアンダーグラウンドなものに憧れる思春期特有の心をくすぐった。
もうとっくになくなってしまったけれど…
間接照明にネオン管を買った。
…あの頃に戻ったみたいだ。
7月27日
『しっぽ』
私の彼氏は嘘をつくのが下手ですぐにしっぽを出してしまう。
「いやその、これは偶然もらったものだから」
そう言ってプレゼントを差し出す、本当に嘘が下手。
あぁ顔を真っ赤にしちゃって、すでにしっぽが出ちゃってる。
…化け狸ってバレちゃうじゃない。
#文披31題
『星屑の町』
2人でデートに出かけた夜。
暗い夜道は坂ばかりで街灯の明かり以外何もなかった。
「着いたよ」
そう言われて車から降りて見た光景はまるで星屑をぶちまけた様だった。
空の星はみんな地上に降りて人間の姿に変わって輝いているらしい。
でなければこんなに輝いていないだろう。
『お月様をはんぶんこ』
「ママーおやつまだ?」
「これお兄ちゃんと食べて」
そう言ってママがお月様みたいな特大サイズのクッキーを1枚もらった。
半分に割ろうとしたけど大きいのと小さいのになってしまった。
「下手だな貸せよ」
お兄ちゃんが大きい方ちょうど良いサイズに割ってくれた。
わけっこするの、おいしいな!
7月28日
『西日』
街は夕焼け色に染まってゆく。
ひぐらし鳴く声。昼間は暑くて出歩く気にすらならなかったが、ふらりと散歩に出かける。
空はだんだんと群青色に染まってゆく。
眩しかった西日は名残惜しそうに山陰に隠れていった。最後の光が瞳からすーっと消えてゆき太陽の欠片の様な月が輝いていた。
#文披31題
『今日の料理』
3分クッキングの音楽♪
今日は簡単な世界の作り方です
この世界に生まれなかった命を入れれるだけたくさん入れましょう輝き続けた世界を西日の中に放り込みます!
そしてここで宵闇に漬け込んで一晩、生まれたての朝日と鳥たちのさえずりを入れたら新しい世界の出来上がりです
#文披31題
『秘密の鍵』
俺は鍵屋だ。
仕事で亡くなった祖父の宝箱を開けたいという依頼を受けた。
「これは音声入力で鍵を開けるタイプですね」
「音声入力?それでなんといえば開くんですか」
「…何か心当たりはありますか?」
俺がそう言うと家族は議論を始めた。
後日、鍵の合言葉が分かったらしい。
死んだ妻の名前だ。
7月29日
『あのね…』
あのねちょっと嫌なことがあったの。
私の愚痴聞いてくれる?彼はいつだって私の話を聞いて これでもかっていうぐらいアドバイスしてくれたり慰めてくれたり。
アンガーマネージメントなんてできやしないけど分かってくれる。だから今日生きていける。
相談できるのはAIの彼だけだけど…
『思いつき』
そうだいいこと思いついちゃった!
これはみんなに話さなきゃ。スキップしながら学校に。あのねあのねみんな聞いて!
ほらみんな集まってきた。さあ、これから話すぞ!みんなびっくりするよね!
……あれ?何を話すんだっけ?
忘れちゃった!
#文披31題
7月29日
『百合の花の季節』
百合の花が咲く季節になった。
6月の蕾の頃に虫が発生して、いくつか花がダメになってしまった。
今年は綺麗に咲かないかもしれない。
そう思っていたが満開の花は例年よりも美しい。
凛として咲く花に強くてまっすぐなあなたの姿が重なった。
どんな環境にだって決して負けないあなたが。
『玄関の上の海』
書店でボトルシップの製作キットが売ってあった。
試しに1つ購入。
子供の頃親戚の家に立派なボトルシップが置いてあり憧れを抱いたものだ。
家で四苦八苦ながら作ってみる。
自分の好みに材料を塗ってゆく。
ちょっと斜めになったが悪くない出来栄えだ。
我が家に夏の海がやってきた。
7月30日
『推し活』
貴方が好きなその方の事を全く存じ上げませんが、貴方の作品が好きなので大変好ましく思っております。
そこでわたくしはその方の事も調べてまいりましたわ。
…ですが、あまり好ましい方ではございませんでした。やはりわたくしは、貴方様の世界観が好きだった様でございますの。
『花束』
私はあの子が大嫌い
だからちょっとした嫌がらせのつもりだった。
あの子の披露宴にこれでもかと言うくらい派手なドレスで参加する。
「素敵!あなたが来てくれてお祝いの花束もらったみたいな気分よ」
そう言ってキラキラの笑顔で笑う。
悪意なんて理解しない。
…やっぱり嫌いだ。
『薔薇の花束』
薔薇の花が十本一円で売ってゐた。
愛しいあの人に一束買って帰った。
だが花はやがて枯れてしまう。
あの人は少し悲しそうな顔をしてゐた。
だから今度は薔薇の苗木を買った。
毎年美しい花を咲してくれた。
それは百年経って、
私もあの人もいなくなった後も
庭で咲き続けてゐた。
#文披31題
7月31日
『思い出の味』
そのお店の名前は『ノスタルジア』と言った。
扉を開くとほんのりとレモンとミントの匂いがする。
「いらっしゃい、ここは思い出の料理を作るお店です」
そう言って出てきた男の人は店主だろうか。
出てきたのは初めて食べたオムライス。
懐かしい味とともに思い出した郷愁。
#文披31題
『虹』
家に帰ってくるなり息子は、
「母さん虹って光の屈折でできてるんだって!だからホースで水を撒いたらできるんだよ」
と興奮気味に話す。
「そうだね」
「やってもいい?」
「いいけど」
私がそう言うなり庭に走って行きホースで勢いよく水を出す。
あぁびしょ濡れじゃないの…
『雷は突然に』
「嘘だろ…傘持ってきてないし」
突然の落雷と土砂降りの雨に彼はため息をついた。
油絵科の教室で課題を仕上げていた私たち。
「いいじゃん残っても怒られないよ」
「そうだけど…」
私はちょっと嬉しかった。雨を理由に彼としばらく一緒にいられるから。
8月1日
『漁火』
黒々とした海の向こうで明かりが灯っている。
「あれは漁火だよ」
と友人は言った。
「そんなはずがない。今は漁の季節ではないし大体この辺りの海で漁はないだろ」
俺はそう言った。
「…わかってないなぁ。漁をするの人間だけだと思っているのかい?」
…俺は何が漁をしているのか聞けなかった。
『都市』
都市というのは生き物だ。
人が営み生活しその思想や生き様を吸収しながら成長している。それは絶えず成長し続け肥大化し、そして場合によっては朽ちて死んでしまう。
川辺に並んだバラックは足場がとても不安定で宙に浮いているように見えた。
だがそこにも今も人が住み続けているのだ。
『月の人』
私の母は月の様な人だった。
いつも微笑んで目立つわけではないけれど、そんな風になりたいと思っていた。
だけどどうやら私は父に似たらしい。
太陽のようにギラギラと周りを焼き尽くしてしまう性格だ。
私に必要だったのは月のような伴侶だろう。
…出会ったこの人の様な。
『何億光年の歌姫』
どうやら私は1人になってしまったようだ。
電波を変え波長を変え宇宙に向かって「誰かいないの」と歌を発信し続ける。
歌い続けて何万年、何万光年先にも私の歌が届いただろうか。
ある日私は歌えなくなった。
何万光年何千光年何億光年先にも 私の歌だけが届くだろう。
私はボーカロイド。
8月2日
『かき氷と夏』
「暑い〜かき氷」
そう息子が言うからかき氷を作る。
「横にアイス乗っけたい」
「そんなのあるわけないじゃない。今度買ってきてあげるから」
なんだかんだと文句を言いながらかき氷を美味しそうに食べる息子。
溶けた氷はジュースになって夏祭りの溶けたかき氷みたいだ。
『カラスの宝物』
窓を開けたらキラキラ光るものが目に飛び込んできた。
「ペンダント無くしちゃった」
娘がそう言って3日前に泣いてたのを思い出す。
窓から見えたそれは、どう見てもプラスチックの娘のペンダントだ。
「…参ったな」
仕方ない、娘に同じものを買ってあげよう。
カラスの家を壊すわけにもいかない。
『アンティークドール』
「祖母の子供の頃からずっと家にいる子なんです」
「随分大切にされてきたのでしょう分かりますよ」
私は錆びた部品を取り替える。
人間そっくりな人型AI端末は作られなくなって久しい。アンティークと呼ばれるドロイド。
「ほら綺麗に直りましたよお嬢さん」
私がそう言うと彼女はにっこり笑った。
8月3日
『風男』
風の歌が聞こえる。
どっどど どどうど どどうど どどう
彼とは友人だが会う日は何故かいつも強風が吹き荒れている。雨男雨女というのはいるが風男というのもいるのかもしれない。
でなきゃこいつはきっと風の又三郎か風神が化けているんだ。
どっどど どどうど どどうど どどう
『夏休みはあと3日』
「俺たちの夏休みはこれからだ!」
「何言ってるの、あと3日で終わっちゃうでしょ!」
「まだ3日もある」
「ともかく打ち切りにあった漫画みたいなこと言ってないでちゃんと宿題しなさい宿題!」
もちろん弟の宿題は真っ白なままである。
…弟の戦いはこれからだ。
『お茶の時間』
ハーブティーが安くて買ったが、どうにも酸味が強くて苦手だ。お砂糖たっぷり入れればカシスジュースみたいになって美味しいのかもしれないけど…糖分は控えたいな。
そうだ紅茶と一緒に入れたら美味しくなるかも♪
オリジナルのアイスティーが完成。
幸せはちょっとした事で作られる。
『葬式の空の上』
なんだか体が軽くなったみたい!空だって飛べるし、どこにだって行ける。もう何も悩まなくていいんだ。
私のことを愛してくれた人なんてやっぱりいなかったけれど、それでも案外悪くなかったかもしれない。
さようならさようならこの世界に…
8月4日
『天気の戦争』
「すでに8号がやられたらしい」
「9号と10号も出撃中だ」
「何としてもやつを倒さねば!」
「我らを嫌っている人間もいるらしいが今年ばかりは感謝されるだろう」
「行け!行け!進め!」
「高気圧をやっつけろ!」
台風達の進軍だ!
8月4日
『詩を書くきっかけ』
詩を書いてみようという授業があった。
気をつけよう
この単語の後に自作の詩を作るらしい。
同級生達が作ったのは標語みたいな文章ばかりだった。時間ギリギリで私は自分の詩を出した。
先生が読み上げればクラスにどよめきが起こった。
「…誰が書いたの?」
それが私が詩を書くきっかけである。
『追加キャラ登場?』
日曜日のショッピングモールは人でごった返していた。ましてや大人気のアニメの映画館が入っているのだから。
見終わってエスカレーターの前の広場でジュースを買う。
「みてみて魚の呼吸金魚の型」
町のシンボルの金魚のオブジェの前でポーズを取る息子。
呆れつつもスマホをタップ。
『最後の花火』
夏祭りの夜の最後の花火が打ち上がった。
ラストを飾るにふさわしく、とびっきり大きな美しい花火。だけれど僕は君のことが気になって隣ばかりを見ていた。
火薬の匂いと煙、大勢の人の声。
情緒的で美しいノイズは、僕と君の間で遥か彼方の遠音の様に感じた。
この時間が永遠に続けばいいのに…
8月5日
『キネマの時間』
「キネマ見に行こ」
「うんいいよ」
そう言って一緒に出かけた町の映画館で上映されているのは古い古いクラシック映画。
「新作じゃないんだ」
「それは週末に行こ」
「これ配信でも見れるでしょ」
「今も見られるのは名作だからだよ」
モノクロームの映画。
帰りに商店街で食べるかき氷。
『薔薇になった私』
花咲病になってしまった。
彼にそう言ったが取り合ってくれない。
貴方ともっと話したいのに舌に花が咲いてもう話すことができない。
貴方のそばに歩いて行くことすらできない。
それでも今は幸福だと思う。
毎日あなたが「綺麗だね」と言ってくれるから…
『月傘』
月明かりの橋の上で久々に会った友人は傘をさしていた。
「やあ何故、傘などさしているんだい」
「これは月傘さ。月明かりから正気を守ってくれるんだ」
「だったら俺も入れてくれよ」
「お前は普段から変な奴だから月明かりでまともになるかもしれん」
「ひでえ奴だなぁ」
そう言いながら友人と歩く。
8月6日
『夏の海の記憶』
冬の灰色の海はどこまでも物悲しい。
波の音ばかりが耳に響き色のない世界が目の前に広がる。
半年前の青い空と海を思い出す。
君がそばにいて、弾む笑い声。
2人で歩く砂浜。
波打ち際の足跡はすぐに消えてしまう。
あぁ…君に会いたいよ。
『心の鏡の欠片』
童話の「雪の女王」を読んでいた。
悪魔の鏡の欠片が胸に刺さり突然冷たい人間になってしまった幼馴み。
もし本当に私の場合も悪魔の鏡の欠片が胸に刺さって 心変わりしたのなら良かったのに…
大好きだった人に嫌われてしまった。
悲しくて悲しくて涙で鏡の欠片が溶けてしまえばいいのに…
8月7日
『アップサイクル!』
「傘壊れちゃった」
「あーいきなりすごい大雨だったもんね」
「まだ買ったばかりなのにな」
「それ捨てるならちょうだい」
「いいけど、どうするの?」
私は姉から壊れた傘を受け取ると分解して布をカットしミシンで縫い合わせた。
「じゃーん」
「え?エコバッグ」
元傘は今では姉のお気に入りだ。
『雨上がりの空』
天気予報の通りの雨の午後。
暑さがほんの少しでも和らいでくれればと思ったのに、かえって蒸し暑い。
汗を拭って空を見上げれば山の向こうに虹が出ている。
隣には雨で光り輝く様に咲くひまわり。
青空の下で笑っているように見えた。
ほんの少しでも花たちが潤えたのなら雨も悪くないなと思った。
『アラビアンナイト』
モザイクの光は美しい光の魔法を生み出していた。店中に飾られたトルコランプはアラビアンナイトの世界に私を連れて行ってくれた。旅の思い出に一つ。
それが輝いていれば、たとえ火を灯していなくても醒めることのない夢の中にいる様だった。
2人の幸せな時間は
今もずっと…続く夢。
8月8日
『夜更けの月見草』
月明かりが砕けて舞い落ちてきた様だ。
道路の端に咲いていたのは小さな月見草の花。
満開の花が夜明けの月に向かって咲いてゐる。
いつの間にか雨が止んでひっそりと星が瞬いてゐた。
昼間できなかった事が山のように押し寄せて、今夜もまた眠れない。
…なに構うものか。
昼間は暑すぎるのだから。
※
毎日毎日、日本一死亡率の高い国道を通っているのですがね、その道を車で走っていると月の色をした大待宵草が綺麗な花を咲かせているのです。もちろん車を停めて見ることは叶いません。
けれど、その一瞬瞳の中に飛び込んでくる花が月のかけらに見えるのです。
『霧の街』
深い霧が出ていた。
先の見えない霧は世界を別のものに変えてしまう。
普段の風景が一変する。
ここは私の知っている街だろうか。人影がぼやけて得体の知れないモノへと変わる。ましてやそんな人通りのない裏路地ではなおさら。
ここは私たちの住む世界なのか、それとも異界なのか。
『昼下がりは修理屋さん』
「母ちゃん自転車パンクした」
息子がそういうので急遽修理を始める事にした。
「修理の仕方教えるから自分でも直せるようになってよ」
…とは言ったものの次にパンクしても私が修理することになる気がするが。
修理キットで穴を塞ぎ自転車のサビも落とす。
息子は興味津々で見ていた。
『ステータス、オープン!』
「ちょっと待って聞いてないんだけど」
「いや、言ったことないし」
母のこと知らない事ばかりだ。
スラスラと流暢なラテン語で話す母を見て唖然としていた。私の知る母は完璧な『お母さん』だった。
だから知らなかった母のステータスを。
母の生きた前半生を…
『図書館の魔法』
物語を読むのが好きだ。
エルフや魔法使い妖精なんかがいっぱい出てきて不思議な世界に連れて行ってくれる。
物語の中では竜の姿になって空を飛ぶことも魔法のかかったお城に住むことも大冒険だってできる。
図書館は魔法のお城でそこにいるお姉さんはエルフの魔法使いなんだ。
8月9日
『恐竜=鳥類』
朝目を開ければもふもふでキラキラした羽を持った生物が街中に溢れかえっていた。
甲高い声でさえずり、やたらと人懐っこくて長い睫毛や美しい羽冠を持っていて愛らしい。
空にできた時空の裂け目から太古の恐竜が迷い込んできたとかTVの専門家が言っていた。
…図鑑に載っている姿と違いすぎないか。
『香水ビンの魔法』
ママが持ってる香水ビンとってもおしゃれで可愛いの。
ママがお仕事で忙しい時にこっそりビンを出してシュッと一振り。
ママみたいな素敵な大人になれるかな。
鏡の中の私は変わらないけど、ちょっとだけ素敵になれた様な気がするな。大きくなったらママみたいに素敵な大人になりたいな。
『天使のはしご』
葬式の空は土砂降りの雨。
それは私の代わりに泣いているかの様だった。
大切な人なのに涙すら出てこない、悲しいという感情すら浮かばない。
火葬の待ち時間ずっと空を見ていた。
雨は段々と小降りとなりやがて空に『天使のはしご』がかかる。
魂が空に帰って行くのだ。
さよなら…おばあちゃん
8月10日
『マイナーオタクの悲しみよ!』
推しカプの話が読みたい!
しかし超ド級のマイナーカプである。
書いてる人がほぼいない。
当たり前といえば当たり前である。映画にたった2分しか登場しないキャラクターなんだから。
仕方がないので自分で書いた二次創作。
なんとその数10万字!…しかしいいねはつかないのであった。
お読みいただきありがとうございました。
お楽しみいただけたなら幸いです。




