20.ガーデンパーティー3
「はっ。
それでは不肖、マクシミリアン、突貫いたします。」
マクシミリアンは自分に合わせた言葉を選んでくれたオティーリエに、感謝の笑みを向けて自分も言葉を合わせて答えると、円卓の全員が視界に収まるように視線を定めて、敬礼した手を下ろして自己紹介を始めた。
「マクシミリアン・ライリー・オブ・オナーです。
オナー家の三男で、将来は第一騎士団長である父のような騎士になるべく、日々、鍛錬を積んでおります。
その父からは常々、オティーリエ様を見習うように、と言われておりまして、不肖の身ながら、オティーリエ様を目標にさせていただいています。」
マクシミリアンの自己紹介なのに、なぜか自分の名前が出て来たオティーリエは、ピタ、と動きを止めた。
幸い、マクシミリアンの方を向き、膝の上に手を置いて自己紹介を傾聴していて、特に動いているタイミングではなかったおかげで、周囲には気付かれなかったけれど。
・・・実際にはヨハンとアーサーには気取られていたけれど。
いや、セレスフィア、ノシェ、セリアの3人にも覚られていた。
けっこう見抜かれている。
と、それはさておき、オティーリエは自分を見るマクシミリアンの視線に、瞬時に再起動を果たすと、質問を口にした。
「それはとても光栄なことなのですけれど、マクシミリアンのお手本になれるようなことがありましたか?」
これは本当に疑問。
オティーリエは騎士としての訓練は受けていない。
「オティーリエ様は齢4つにして、城内の書庫にある軍略書を読破され、6つで近衛騎士団長である祖父や第一騎士団長である父と戦略論、戦術論を戦わせたとお聞きしております。
また、騎士達に混じって参加される戦略、戦術シミュレーション演習では常勝。
有事に備えた訓練においても卓越した指揮振りを発揮され、騎士達の人気も高いとお聞きしております。
それから。」
「十分に理解いたしましたので、その辺りでお止め下さいませ。」
オティーリエが少し慌てた様子で割り込んで止めた。
なぜだかオティーリエの過去が掘り起こされて、大したことをしていない、と言うより、恥ずべき過去のはずなのに、それを称えられているようで居たたまれない。
確かにオティーリエは3歳で字を覚え始めてから、読む度に知識を授けてくれる本という物に夢中になり、城中の本という本を読み漁る本の虫になっていた時期がある。
ただ、これは、時間を問わず知らない単語が出て来る度に両親や爺やを捕まえて解説を頼むということをしていたので、オティーリエにとっては周囲に迷惑をかけ通しだった恥ずかしい記憶だったりする。
それから、この時に読み漁った本の中に、確かに戦史や用兵について書かれた書物があった。
6歳の時に、オティーリエがお城の用兵書を読んだことを聞きつけたウィリアムに戦略論を尋ねられ、それに答えているうちに、今度は本で得た知識を元に新たな推論を立て、それを誰かと議論することでさらに知識に深みが増していく楽しさを知ってからは、しばらくは誰彼構わず話しかけては、その人の専門分野の話題で盛り上がっていた。
これも時間問わずの所業だったので、同様にオティーリエにとっては恥ずかしい記憶に分類されている。
そんなティーリエに、マクシミリアンは目をパチクリとさせると、ニカッと笑い。
「斯様な理由で、オティーリエ様のように人を動かせる人物になるべく日夜、努力しております。
それではみなさま、よろしくお願いします。」
最後は一歩下がると、全員に向けて、ボウ・アンド・スクレープで締めた。
最年少とは思えないほど、堂に入った態度だ。
参加者から拍手が起こると、少し深く頭を下げてから、頭を上げた。
それから、姿勢を正して着席する。
この後は、円卓に座った順番で、アルチュール、セオドア、セリア、セレスフィアの順で自己紹介をしていった。
マクシミリアンのような内容は彼だけで、後の4人は無難に自分の名前と、簡単な現状報告、それから将来の展望などを話していった。
アルチュールは学校に通いながら、早いうちから商売を覚えるために家業も手伝っているそうだ。
将来的には、デュフィ家を継ぐかたわら、不動産とは違う業界にも進出して、異業種間のコラボレーション企画などを行いたいと展望を話した。
セオドアは無難に自己紹介と、後は将来は家業を継ぐであろう兄の補佐をしていくつもりだなどと話した。
普段からチャーリーとして振舞っているのではないかと思えるほど閊えることもなく、チャーリーとしての雰囲気を壊さないように暗めのぼそぼそとした話し方で。
セリアは学校での生活を紹介し、将来はオスター家から独立して旦那様と二人で宿屋の経営を行いたいと話した。
セレスフィアはあえて現状については話をせず、将来的には代表にはならないけれど、代表者になるだろう長兄を補佐し、事業を拡大していくことを話した。
セレスフィアが現状に触れないのは、セレスフィアはすでにオストライア家の事業に深く参画していて、機密事項が多くて話せないためだ。
そして、この場にいる参加者のうち、マクシミリアン以外は全員がそれを把握していたので、特に質問も出なかった。
マクシミリアンが把握していないのは年齢故と軍事が専門の家系なためで、仕方のないこと。
質問しなかったのは、彼が場の空気を読んでのことだった。
参加者の自己紹介でした。
弱冠一名、自己紹介になっていない者もいましたが。




