12.お出迎え2
アルチュール・ユーゴ・デュフィはオティーリエの前に来ると、颯爽とボウ・アンド・スクレープで挨拶をした。
左腕が完全には伸びきってなくて、右手も腹の左脇ではなく腹の前に添えている。
と言う訳で、完璧まであと一歩。
でも、その崩したところが様になってもいるので、わざと崩しているのかもしれない。
これはこれで、相手の印象にも残るだろう。
いい印象か悪い印象かは人によるだろうけれど。
ただ、同じ立場の人にはいいかもしれないけれど、立場が上の人にやるのは悪手ではある。
「初めてお目にかかります。
アルチュール・ユーゴ・デュフィと申します。
この度はご招待いただき誠にありがとうございます。
このように拝謁する機会を設けていただきましたこと、深く感謝いたします。」
アルチュールは緊張した様子もなく、さらっと挨拶の口上を述べた。
いかにも場慣れしている感じ。
跡取り息子ということで、幼い頃からお客様周りにも連れ回されているのだろう。
と、言うことで、ボウ・アンド・スクレープはわざと崩しているのだろうとオティーリエは判断した。
「ご丁寧なご挨拶をいただきまして、ありがとう存じます。
どうぞお顔をお上げください。」
顔を上げたアルチュールは、オティーリエを真っ直ぐに見て、にこやかな笑みを浮かべる。
オティーリエの方はというと、ご挨拶用の笑みのまま、挨拶を続けた。
「オティーリエ・セラスティア・ロートリンデです。
アルチュール、本日はご出席いただきまして、心より感謝いたします。
公式な場ではありませんので、どうぞお気を楽にして、ごゆっくりおくつろぎ下さい。」
「ありがとうございます。
後ほど、ゆっくりと語り合いましょう。」
「はい、よろしくお願いいたします。」
そこで、オティーリエは侍女に視線を送った。
その侍女がオティーリエの横に出て来て、アルチュールに一礼する。
「それでは、会場へご案内いたします。」
そう言うと、庭園の中に向かう。
アルチュールは、一度オティーリエに軽く頭を下げた後、その侍女の後に続いて、庭園に入って行った。
少々短いですが、キリがいいところで。
アルチュール君をお出迎えする令嬢でした。




