3.それでもやっぱり事件に巻き込まれる
ところで、オティーリエが土曜日の午後は何をしているかと言うと。
実は相も変わらず、街に繰り出していたりする。
もちろん、ティリエとしてではなく。
新しい変装として、お城の家女中、リーエになって。
最初、オティーリエが街に出ることをヨハンに相談した時、当然ながらヨハンも反対した。
けれど、基本的にヨハンはオティーリエの希望は出来るだけ叶えようとする。
なので、2人はよくよく話し合って、結局、ヨハンはオティーリエがそうだと分からないように変装することと、隠れて護衛を付けることで妥協した。
護衛を付けて街に出るというのは、まあ、実際のところ、今までと特に変わらない。
そして、変装というのが、リーエというお城の家女中になることである。
魔法で髪も瞳も黒くして、でもそれだと護衛する側がオティーリエが分からなくなるので、お城のお仕着せを着ていくことになったのだった。
お城のお仕着せは部署や仕事によってデザインが違っているのだけれど、検討の結果、オティーリエの年齢的になり得て、城外に出る可能性もある家女中のお仕着せを着ることに。
あと、アーサーとベディヴィアは、ちょっと大きめのリストバンドになって、袖の中に隠して同行している。
そうやって街に出かけるオティーリエは、週に1回、午後だけしか街に出れないので、当然、以前のように事件に首を突っ込む気はなく、街に住む人々との交流を楽しむだけ。
・・・のつもりだったけれど、そこは(主にヨハンから)歩く犯罪探知機と呼ばれた少女。
リーエというお城の家女中がホルトノムル領都にその姿を現してから2回目、つまり、4月の2週目の土曜日。
オティーリエの気持ちはどうであれ、結局、事件に巻き込まれているのであった。
◇ ◇ ◇
オティーリエはこの日、家女中が街に出るためのカモフラージュとして、使用人棟のベッドシーツなどのリネンの注文をしてくる用事を仰せつかった。
お城では、使用人棟をはじめ、騎士棟、技術者棟などの各棟へ、ベッドシーツなどのリネン類をお城から支給している。
支給品は真っ白な物だけなので、個人的に自分で好きな物を買ってきている人もいるけれど、そういう人は少数派である。
オティーリエは昼食を終えると、すぐに街に出た。
まず最初に訪れたのは、リスタ・リネンショップという布製品を取り扱う大型の店舗。
最高級品とまではいかないまでも、それなりに品質の高い物を扱っているお店で、南地区の入り口付近に店舗がある。
南地区のお店らしく、お店の外には商品を並べず、だけど大きな窓が付いていて、中が見えるようになっている。
窓から中の様子を覗くと、様々な商品がきちんと整頓されて綺麗に並べられているようだ。
並べられている商品はシーツやピローカバーなどの寝具用をはじめ、テーブルクロス、ナプキン、カーテン、クッション、椅子の座面などのインテリア素材、ハンカチ、バンダナ、エプロンなども並んでいる。
今、お店の中にはお客さんはおらず、レジ係らしい人と、陳列棚の整頓をしている人の2人の店員さんがいた。
2人とも女性で、20代半ばに見える。
オティーリエは入口を開けて中に入ると、他の商品には目もくれず、レジにいる店員さんに寄って行った。
「いらっしゃいませ。」
オティーリエがまっすぐにレジに向かってきているのを見て、店員さんが声をかけてきてくれる。
店員さんは名札を付けていて、エンリというらしい。
「はじめまして。
早速ですが、お城の使用人棟で使用するベッドカバー、シーツ、ピローカバーを100枚単位で注文させていただきたいのですけれど、こちらでお話させていただいてよろしいですか?」
オティーリエの問いかけに、店員さんが一瞬、びくっと怯えた様子を見せた。
すぐに取り繕ったけれど隠しきれておらず、どこか様子がおかしい。
お城からの用件だから、という緊張感からではなく、恐ろしいことに直面した、という感じの怯え方に見える。
「あ、は、はい。
そのようなご用でしたら、こちらではなく責任者との商談になります。
こちらへどうぞ。」
「はい、ありがとうございます。」
エンリがレジから出ると、お店の奥の方へ案内する。
オティーリエは、エンリのおかしな様子に気が付いていないフリで付いて行くと、店の奥にある扉に案内された。
扉は、壁の端っこと真ん中に二つ、目立たないように設置されていて、案内されたのは真ん中の方だ。
扉にオーナー室、と札がかかっている。
エンリはそのオーナー室の扉をノックした。
しかし、中から返事が返ってこない。
エンリがもう一度ノックをしたが、それでも返事は返ってこなかった。
首を傾げたエンリがノブを回して扉を開けようと押してみたけれど、開かない。
ガチャガチャと何度か押してみても開かず、エンリはオティーリエの方を向いた。
「申し訳ございません、責任者はこの部屋にいるはずなのですが、鍵がかけられているようです。
鍵を取ってきますので、少しお待ちください。」
そう言って、エンリはオティーリエに頭を下げると、もう1つの壁の端っこにある扉の中に入って行った。
エンリがいなくなって、オティーリエは扉をじっと観察した。
特におかしな所はない。
エンリは押して入ろうとしていたので、内開きなのだろう。
鍵を取りに行ったということは、中からではなく、外から鍵をかけるということ。
つまり、オーナー室と言ってもプライベートな空間ではなく、商談用で防犯のための鍵なのだろうと推測する。
そこまで、さっと見て取ったオティーリエは、後ろを向いて店内を眺め見た。
陳列棚の整理をしていた店員さんが、オティーリエがそちらを見たところで、パッと視線を逸らして商品を並べ直しだす。
一瞬見えた表情は、心配そうにこちらを見ているようだった。
しならくしてエンリは鍵を持ってくると、鍵を開けてそのまま扉を開けた。
すると。
「きゃあぁ!」
大きな悲鳴を上げて両手で口を覆った。
部屋の中のある一点に視線が注がれている。
立ちすくんでいるエンリの脇から顔を出すようにしてオティーリエが部屋の中を覗きこむと、来客用の立派なソファと、膝くらいの高さの低いガラステーブルの間に血を流して倒れている女性がいた。
オティーリエはさっと後ろを見て、もう1人の店員さんが心配そうな表情で駆け寄ってきているのを確認すると、エンリの脇を抜けて中に入った。
倒れている女性の首筋から、大量の血が溢れている。
オティーリエはその血を避けて横にしゃがむと、口元に手をかざして呼吸を確認した。
呼吸していない。
すでに亡くなっているようだ。
オティーリエはエンリの方に振り返った。
「第二騎士団にご連絡をお願いします。
それから、この部屋には入らないようにお願いします。」
それでもエンリは死体を見つめたまま動かない。
駆け寄って来たもう1人の店員が、中を覗いてぎょっとした顔をした後、すぐにどこかへ走り去って行った。
そこまで見届けた後、オティーリエは死体をさっと観察した。
見た感じ、30代の女性のよう。
首筋がぱっくりと開いて、そこから血が流れ出ている。
死因はこの傷による失血死だろう。
すでに血は止まっているので、斬られてからそれなりに時間が経っているように思えるけれど、さすがに死体に触れるわけにはいかないので、それ以上は分からない。
血液痕と倒れている態勢からすると、斬りつけられてからソファに崩れ落ちて、それからソファからずり落ちたように思える。
部屋の中もざっと見回した。
現場を保存するため、あちこち触ったりはしない。
見たところ、凶器らしきものは落ちていない。
争った形跡も見当たらないけれど、そもそもガラステーブルとソファ周りには何もないので、争った跡も何もない。
応接セットとは別に、部屋の奥に立派な事務机があった。
その机の上にはペンやメモ用紙などが整理されて置かれている。
書類らしき紙束が机の右端に積まれていて、おそらく今日は業務を始める前だったのだろうことが伺える。
オティーリエはそこまで見て取ると、さっと立ち上がってエンリの傍に立った。
エンリの両肩に両手を置くと、エンリがハッとしたようにオティーリエを見た。
「大丈夫ですか?
ひとまず落ち着きましょう。」
言うと、オティーリエはエンリの向きを変えて、横に並んで腰に腕を回して歩き出した。
本当は肩を抱きたかったのだけど、背丈の違いでそうすると不格好になるので我慢。
連れて来たのは、エンリが鍵を取りに行った方の扉。
その扉を開けると、案の定、中は休憩室だった。
少し大きな丸テーブルに椅子が4脚置かれていたので、エンリをそのうちの一つに誘導して座らせる。
そして、オティーリエはその横にしゃがみこんで、ぎゅっとその手を握った。
エンリは青ざめた顔をうつ伏せたまま、しかし下から覗き込むように見上げているオティーリエと視線を合わそうとしない。
しばらくそうしていると、店舗の方がガヤガヤと賑やかになってきた。
「ここでお待ち下さいね。」
オティーリエはエンリにそう声をかけると立ち上がって、休憩室を出た。
◇ ◇ ◇
そうして、今、オティーリエの目の前にはウォードがいる。
場所は、第二騎士団総合庁舎三階の取調室。
オティーリエは殺人事件の第一発見者として取調室に連れてこられたのだった。
オティーリエ自身は、ウォードにはもう会えないだろうと思っていただけに、こんなに早く会う機会が訪れたというのは少々驚きの事態だったりする。
とはいえ、今はティリエではなくお城の家女中のリーエ。
そして、リーエが第二騎士団に連れられて取調室に来るのは初めてのこと。
オティーリエは今までもティリエという別人格になり切って行動していたおかげで、別人格になりきるのはもう慣れたもの。
という訳で、オティーリエは今、初めて第二騎士団の取調室という圧の強い場所に来たということで、本当に緊張している。
ここに来るまで、アーサーからまた事件に巻き込まれたことを揶揄されたり、ベディヴィアに事件の遭遇率の高さをわざと聞こえるように説明されたりもしたけれど、それは脇に置いておいて。
「お城に住み込みの家女中のリーエちゃん、と。
年齢は?」
「今年14になります。」
ウォードが初対面の相手に対するような態度でオティーリエから聞き取りをする。
最初に顔を合わせた時、少し違和感でもあるかのような表情をされたけど、それだけだった。
「その歳でお城仕えなんて大変なんだろうね。」
「いえ、父もお城にいますので。
助かっています。」
「なるほど、お父さんが一緒だと心強いね。
ちなみにお父さんのお名前は?」
ウォードはもともとオティーリエが未成年なので保護者の情報は聞くつもりだった。
なので、これ幸いと話の流れで聞いたのだけれど、オティーリエはそこまで設定を詰めておらず。
内心、焦りながら咄嗟に父親の設定を考える。
立場が立場なので嘘が混じってしまうのは仕方がないけれど、出来るだけ嘘にならないように。
「オットーです。
いちおう、とある部署のまとめ役をしています。」
「なるほど、親子揃って優秀なご家族なんだね。
お父さんが所属している部署は分かるかい?」
「いえ、そこまでは機密ということで教えてもらっていません。」
オティーリエは内心、冷や汗もので答える。
しかし、幸い、父親についての質問はそこまでだった。
「ああ、そういうものかもしれないね。
わかった、ありがとう。
さて、じゃあ、被害者を発見した時の状況を教えてもらえるかな?」
出来るだけ緊張を解そうとしているのだろう。
ここまで雑談交じりの聞き取りだったのも、そのため。
人当たりのいい感じで話していたウォードが、態度を崩さずに尋ねて来た。
しかし、ウォードのそんな態度にも関わらずオティーリエは緊張した様子になって、と言うより、そもそも最初から緊張し通しで解れていなかったのだけれど、それまでよりさらに緊張した面持ちで話し始めた。
「はい、お昼の後、お城を出てまっすぐにリスタ・リネンショップに向かいました。
あ、その途中、道端で猫さんにお会いして、ちょっと撫でさせてもらったんですよ。」
「ああ、いや、そこからではなくて、お店で扉を開ける前くらいから話してもらっていいかな。」
ウォードが、ずいぶん早いタイミングから話し出したオティーリエの話をやんわり遮った。
オティーリエが、思わずピッと背筋を伸ばす。
「は、はい、すみません、扉を開ける前からですね。
えっと、それでは、エンリさんという店員さんにお声かけさせていただいたところから。」
そうして、オティーリエはお店であった出来事を話した。
もちろん、死体と現場を検分したことは秘密。
オティーリエが話している間、ウォードは全く口を挟まず、調書にその内容を書き留めていた。
そして、オティーリエが話し終えると、ウォードはオティーリエに優し気な笑みを向けた。
「思い出したくもなかっただろうに、丁寧に教えてくれてありがとう。
おかげで、状況がよく分かったよ。
リーエちゃん、頭がいいんだね。
内容が整理されていて、分かりやすかった。
その歳でお城仕えなのも納得だ。」
「いえ、そんなことは・・・あ、いえ、ありがとうございます。」
オティーリエは褒められて否定しようとしたけれど、それも違うかなと思い直してお礼を言った。
「しかし、聞いた感じだと、いわゆる密室殺人だね。
捜査が大変そうだ。」
「いえ、密室殺人ではないと思いますよ。」
独り言のようにウォードが言うと、オティーリエはその独り言に反応して、つい、発言してしまった。
言ってしまった後で、あ、と思わず両手で口を塞ぐ。
「どういうことだい?」
ウォードが興味を引かれた様子でオティーリエに尋ねた。
それに、オティーリエはウォードの様子を伺うように上目遣いで見た後、ぽそぽそと話し出した。
「すみません、あくまで、私個人の考えですので、そのつもりで聞いて下さいね。
密室、というのは鍵がかかっていたために仰っているのだと思いますけど、鍵は外鍵ですし、かかっていたのは私が伺った時点でのお話です。
ですので、犯行時に鍵がかかっていたとは言い切れないと思うのです。」
「なるほど、つまり、犯人は被害者を殺害した後、部屋を出てから鍵をかけたというわけだね。
そうすると、店員の2人が怪しくなってくるのかな。」
本来、誰が疑わしいなどということは、他の関係者に話すようなことはしない。
しかし、ウォードはリーエの推理を聞いて、この子がこの事件をどう考えているのか聞いてみたいと思い、カマをかけてみたのだった。
「どうでしょう。
お二方にお話をお聞きしてみないとなんとも言えないと思います。」
そう答えつつも、オティーリエはお店での様子から、エンリが主犯で、もう1人は見て見ぬフリだったのだろうな、と思っている。
動機は分からないけれど。
リーエの躱すような答えからそれが伝わったのだろう、ウォードもそれ以上は尋ねなかった。
「ありがとう。
捜査は我々の仕事だね。
貴重な意見をもらえて助かったよ。」
「あ、あと、それと。」
オティーリエが両手をもじもじとさせながら、上目遣いにウォードを見た。
ウォードはそれに、優し気な笑みを浮かべて尋ねた。
「なんだい?
大丈夫だから、言ってごらん。」
ウォードの態度に勇気づけられて、オティーリエは顔を上げて、すう、と息を吸ってから続きを話し出した。
「普通の方は、首筋に急所があることを知りません。
刃物を持っているのでしたら、まずお腹を刺すのが普通だと思います。
ですので、ひょっとすると、殺害を示唆した人物がいるかもしれないと思いました。」
言われて、ウォードが感心したように頷いた。
「うん、その通りだね。
そこも留意して捜査を行おう。
ありがとう、リーエちゃん。」
君も普通ではないんだね、とはウォードは思っても言わなかった。
「いえ、差し出がましいことを申し上げてしまい申し訳ございません。
ですが、少しでもお役に立てたなら幸いです。」
言って、オティーリエはペコリと頭を下げると、ウォードはそれにうんうんと頷いた。
「少しなんてものじゃないよ。
貴重な意見、どうもありがとう。
おかげで捜査も捗るよ。
他に気が付いたことはないかな?」
「いえ、このくらいです。」
ウォードが尋ねると、オティーリエはふるふると首を振った。
「そうか。
さて、じゃあ、今日はこんなところかな。」
ウォードはそこで、態度を改めて表情を引き締めた。
「何かあればお城の方に質問が行くと思うけど、その時は改めて協力してもらえると助かるよ。
今日は捜査協力、どうもありがとう。
これで帰ってもらって大丈夫だよ。
入口まで送るね。」
ウォードは立ち上がると、扉を開けて手振りでオティーリエに退室を促した。
オティーリエは立ち上がって頭を下げると、部屋を出て行く。
ウォードは扉を閉めると、オティーリエの横に並んで入口へと向かった。
◇ ◇ ◇
「キャップ、キャップが聞き込みを担当した子、誰ですか?」
自席に座っていたハイリが、オティーリエを入口まで送って戻ってきたウォードに話しかけた。
ハイリはまだ捜査中の別の事件に関わっているので、今回の事件からは外れている。
「リーエちゃんっていって、お城の家女中だそうだ。」
「リーエちゃん、ですか?」
ハイリがウォードの言葉を疑問形で繰り返して言うと、ウォードも難しい顔をした。
お互いに言いたいことは伝わっている。
「ああ。
お前もそう思うか?」
「はい。
写真を重ね合わせてみれば、ぴったり一致するんじゃないでしょうか。」
つまり、リーエはティリエではないか?ということ。
「なるほどな。
しかし、リーエちゃんは雰囲気も所作も、完全にお城仕えのそれだった。
あの上品さは、そう簡単に身につくもんじゃない。
ティリエちゃんには、そんな上品さはカケラもなかったからなぁ。」
「それに、髪は染めれば変えられるかもしれませんが、瞳の色なんて変えられませんからね。
カラコンじゃないですよ、あの瞳。」
「わざわざ、使いの者を寄越してまで街に来られないと連絡してきたしな。
やっぱり別人かな。」
「そうですね。
うーん、ですが。」
ハイリが両腕を組んで首を傾げる。
どうしても、リーエがティリエだという思いが抜けない。
なにせ、ウォードとハイリは、部外者なのに事件に首を突っ込んでくるティリエと一番長く付き合っている。
その親しさ故か、どうしても、リーエからティリエを感じて仕方がない。
「ああ。
言いたいことは分かる。
しかし、リーエちゃんがティリエちゃんだったとしてもだ。
それは、誰にもバレてはいけないことなんじゃないか?」
言われて、ハイリもハッと気が付いた。
「だから、リーエちゃんはリーエちゃんとして付き合うのみだ。
どうも、これからもちょくちょく顔を合わせることになる気がする。」
「分かりました。
態度に出さないように気を付けます。」
そう結論付けると、ウォードとハイリは、お互いに頷き合った。
◇ ◇ ◇
結局、この事件はすぐに解決した。
犯人はエンリ。
動機は痴情のもつれから。
被害者はオーナーの奥方で、エンリはオーナーと不倫関係にあった。
殺害の時は、開店前にそのことで話し合いを行って言い争いになり、殺害してしまったらしい。
凶器はナイフ。
そのナイフは休憩室のエンリのロッカーから見つかった。
殺害についてはオーナーからそれとなく言われていて、殺し方もオーナーに教えてもらったらしい。
エンリ本人としては、脅すだけのつもりでナイフを出して切りつけたら、奥方がナイフを避けようとバランスを崩し、綺麗に首筋を切り裂いてしまったのだそうだ。
このため、オーナーも殺人教唆の罪で逮捕された。
もう1人の店員はいつもエンリの相談相手になっていて、不倫は止めるように忠告していたけれど、聞いてもらえなかったらしい。
ただ、心情的には応援したいという思いもあって、積極的には関わらないようにしていたそうだ。
当日は、朝からエンリの様子がおかしかったので、奥方と何かあったのだろうな、と思ったけれど追及はしないで、様子を見ながら見守っていたらしい。
発生してから2日というスピード解決となったこの事件の結末は、ウォードから手紙でお城のリーエに知らされた。
リーエも知らせてくれたことへのお礼の返事をウォードに書き、こうしてこの事件は幕を閉じた。
はい、当然ながらお城を抜け出していました。
今度はお城の家女中の変装です。
それはそれで目立ちそうですが、ある意味、目立つ必要があるため苦肉の策でした。




