22.手紙
〈親愛なるフィア、セリア、ノシェへ
こうして手紙を出すのは初めてだね。
ちょっとこそばゆいかも。
みんなへの手紙だから、作法なんか気にしないで書くね。
ごめん、わたし、もうみんなと会えない。
もう街に出ることが出来ないの。
だから、これは、お別れのお手紙。
みんなも知ってると思うけど、わたし、街で起こった色んな事件の捜査に参加してたの。
あ、でも、今、書こうとしていることはちょっと違うんだけどね。
この前、ある事件に巻き込まれた時に、悪い組織に目を付けられちゃって。
その組織、手段を選ばないと言われている上に、人の命の扱いが軽いの。
あと、非合法な手段を躊躇いなく使ってくる。
だから、みんなを巻き込んで危険な目に合わせるんじゃないかって心配なの。
例えば、みんなを人質に取るとか。
みんなをそんな目に合わせたくない。
ううん、こんな風に書くと、みんなは大丈夫だって言うよね。
だから、言い方を変えるね。
わたしは、わたしが原因で、みんなを危ない目に合わせてしまうのが怖いの。
そんなことになったら、わたしはきっと、自分を責めて立ち直れないと思う。
だから、わたしが、わたし自身のために、みんなとお別れすることにしたの。
あ、わたしのことは心配しないで。
すっごく頼りになる人達が傍にいっぱいいるから。
この10年間、みんなと一緒にすごした時間は、わたしにとって一番の宝物。
これからも、ずっと大切な思い出。
もうみんなとは会えなくなっちゃうけど、これからもずっと友達でいてね。
みんな、今までありがとう。
それじゃあ・・・
バイバイ。
PS.直接言えなくて、ごめんね。
あなた達を心から愛して止まないティリエより〉
令嬢が書いた手紙。
それは、大切な人に別れを告げる物。
この覚悟こそ、令嬢が旅で得た一番の収穫でした。




