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12.ここで小休憩

「お供が増えてないな?」


オティーリエが地上に戻って来たのを見たヨハンの、第一声がそれだった。


「えー。

 ここは、よく無事に帰って来たとか言いながら、ガバッと抱きしめる場面じゃないの?」


オティーリエが不満そうに頬を膨らませて文句を言うと。


「あれだけ安全を強調して行ったんだから、心配する方が間違いだろ。」


ヨハンは、ちょっと意地の悪そうな笑みを浮かべて言った。


「う。

 確かにそう言ったけど。

 ・・・お兄ちゃんの意地悪。」

「そんなことより、騎士は本当にいたのか?」


ヨハンはその場にごそごそとレジャーシートなんか広げながら尋ねた。


「うん、言ってた通り、ベディヴィアっていう騎士がいたよ。

 ただ、今は出て来ても目立つだけだから、待機してもらうことにしたんだ。

 それで、ベディヴィア本人は、ここ。」


オティーリエはしゃがんでいるヨハンとレジャーシートを挟んで反対側にしゃがみこんで、アーサーをヨハンの方に突き出した。

ちらっとアーサーを見たヨハンが、少し首を傾げる。


「アーサーだろ?」

「うん。

 そのアーサーがちょっとだけ変わったんだ。

 さあ、どーこだ。」


オティーリエが楽しそうに言うと、ヨハンが広げ終わったレジャーシートに座りながら、アーサーをじっと見た。


「ん?

 首輪してるな。」

「首輪じゃないよ。

 ネックレス。

 でも、あったりー。

 ベディヴィアには、アーサーのネックレスになってもらったの。

 これで、ずっと一緒にいられるから。」


オティーリエは嬉しそうにアーサーを抱きしめながら言った。

その様子に、ヨハンはようやく笑顔が戻ったと安堵して。

その横で、アーサーは強く抱きしめられて、どうとでもしてくれとでも言うように遠くを見た。


「へえ、動物だけじゃなくて、無機物にもなれるんだな。

 ひょっとして、アーサーもか?

 あ、その前にお前も座れ。

 もういい時間だから、ここで昼飯だ。」


ヨハンはさらに鞄の中から袋に包まれた箱を取り出しながらオティーリエに言った。

中身はサンドイッチ。

言われたオティーリエは嬉々としてヨハンのすぐ横に腰を下ろした。


「うん、アーサーもなれるよ。

 実はリス以外にも鳥でも魚でも、ううん、イヤリングだろうが指輪だろうが、本当になんでもなれるんだ。

 でも、大きさの制限があるから、あまり大きな物にはなれないんだけど。」

「いや、十分スゴイだろ。

 大昔の魔法って、ホントなんでもアリだな。」


ヨハンがサンドイッチを一つ、箱から取り出してオティーリエに渡す。


「ありがと。」


オティーリエはサンドイッチを受け取ると、ヨハンが自分の分を取るのを待つ。

ヨハンは待っているオティーリエの前でサンドイッチを一つ掴むと、そのまま一口、齧りついた。

それを見て、オティーリエが慌ててサンドイッチに齧りつく。


「どうした?」


そんなオティーリエの様子に、ヨハンが不思議そうに尋ねた。

オティーリエはむう、とヨハンを睨みつけると、口に入っているサンドイッチをもぐもぐごっくんときちんと飲み込んでから、抗議の声を上げた。


「お兄ちゃんと一緒に食べ始めたかったから待ってたの!

 それなのに、1人でさっさと食べ始めちゃうなんて。」

「は?

 いや、それは。」


オティーリエはヨハンと同時に一口目を齧りたいと思っていたのに、ヨハンがさっさと食べ始めてしまったので怒っている。


言われたヨハンは何か言おうとしたが、サンドイッチをスカートの上に置いて、腕を組んでプンスカと鼻息荒く睨んでくるオティーリエの剣幕に押されて引くことにした。


「あ、まあ、すまない。

 その、今後は気を付けるよ。」


ヨハンが折れたことに、オティーリエは少しだけ溜飲を下げながら、わざとらしくはあ、と溜息をついた。


「まあ、先に言わなかったわたしも悪かったんだし、今回はこれで許してあげる。」

「それにしても、騎士の眠る森って、由来は本当に騎士が眠る森だったんだな。」


逃げるが勝ちとばかりにヨハンは話題を変えた。

正直なところ、オティーリエが何が気に入らなかったのか、ヨハンはいまいち理解出来ていない。


ヨハンが急に話題を変えたことに、オティーリエはちょっとむっとしたけど、これ以上追及して雰囲気が悪くなるのも嫌なので、ヨハンに話を合わせた。


「そうだね。

 それだけ古くから伝わって来た名前って、なんかロマンチックだね。」

「ロマンチック・・・か?

 まあ、遥か大古から変わらずに伝わってきたってのには歴史の重さを感じるが。」

「その歴史の重さこそがロマンなんだよ。」

「なるほど、そういうものかもしれないな。

 じゃあ、そのロマンの場所で食事ってのもロマンチックってことか?」

「うん、まさにそうだね!

 それも、お兄ちゃんと一緒だなんて最高だよ。」


先ほどまでとは打って変わって嬉々とした声を上げるオティーリエ。

ヨハンはそんなオティーリエを目を細めて眺める。


そうして二人は昼食を終えると元の道に戻って、改めて転移の魔法陣がある場所を目指した。

ここらで一つ、ランチタイムです。

追われている身であるはずなのですが、お呑気タイムでした。

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