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27.成果の一端

翌朝、まだ日も登らないような早朝に起きた4人。

前日、言い出しっぺなだけにやっぱり止めようと言えなかったセリアも、無事に起きれた。

まあ、起こしてもらった、ではあるけれど、起きれたことには変わりない。


起きてから洗顔などの準備をした後、軽く朝食を摂ってからポール・セリジュアルの漁港に向かう。

車でもよかったけれど、早朝の空気を吸いながらみんなで歩きたいとオティーリエが言ったので、歩いて。

オティーリエのその提案には、これで最後という感傷が多分に含まれていることはセレスフィア、セリア、ノシェもすぐに察した。


少し冷たい空気の中を、4人は歩調を合わせて静かに歩いた。

海の香りを乗せた風が軽く頬を撫でて過ぎ去って行く。

歩いて行くうちに、徐々に空が白んで来て、防風林の向こう側に太陽が顔を出した。

目的地の漁港はもう目の前。

4人は笑みを浮かべて顔を見合わせ合うと、そのまま漁港に向かって歩いた。


 ◇ ◇ ◇


漁港が見えてくる辺りまで来ると、潮の香りの他に、鼻につくような魚の匂いも漂って来た。

ちょっと生臭い。

セレスフィアとセリアは正直なところ、鼻にハンカチを当てて、少しでも匂いを緩和したかったところだったけれど、それはここで働いている人に失礼だと考えて思いとどまった。


ポール・セリジュアルの漁港は大きく、当然、各施設も大きい。

おそらく荷捌場と思わしき建物など、ホルトノムル侯爵領都の神殿もかくやというほどの大きさがある。

その大きな建物の向こう側に海が広がり、さらにその先に地平線が見えて、空の青とのコントラストが非常に美しい。


「壮観ね。」


漁港を見たセリアが感嘆したように言った。


「ホントだね。

 活気があって、楽しそう。」


セリアの呟きに答えたのはノシェ。

まだ漁港まで少し距離があるのに、ここまで漁港で作業をしている人の声が聞こえて来る。

2人とも、目を輝かせて港を見ている。

もちろん、オティーリエも。

セレスフィアだけは落ち着いた様子。


「もっと近くに行ってみましょう。」


そう言うと、セリアは先頭を切って歩き出した。

とりあえず、物揚場は港の向こう側なので、荷捌場へ向かう。

3人もセリアに続いて、荷捌場に向かった。


 ◇ ◇ ◇


でも、漁港の前に。


4人が向かう先で、漁港の手前に漁協の会館らしき建物があった。

窓から明かりが漏れていて、誰かが中で作業をしていることが分かる。


ただ。


会館の前には非常線が張られていて、立ち入り禁止の札がかかっていた。

警官も2名、配置されている。


「無事に密輸品は確保出来たみたいだね。」


警官の方に向かって歩きながら、オティーリエが言った。

3人もオティーリエに合わせて警官の方に歩いて行く。


「よかったわ。

 あの署長、頼りない感じだったから心配したんだけど、杞憂だったみたいね。」

「さすがに昨日今日は大丈夫なんじゃない?

 来週は分からないけど。」


セリアの言葉に、ノシェが頭の後ろで両手を組んで、カラカラと笑う。

普段なら失礼ですよ、と言いそうなセレスフィアも笑みを浮かべたまま特に注意する様子はない。


そんな話をしているうちにも警官の前に到着した。

警官2人が怪訝な表情で4人を見る。


「すみません、何があったんですか?」


先頭を歩いていたオティーリエが警官の前に着くと、警官に尋ねた。


「捜査上の機密事項ですので、お答え出来ません。」


警官はオティーリエではなくて、セレスフィアの方を見て言った。

まあ、フィアに視線が行くよね、とオティーリエは思いつつ、この警官の態度にちょっと違和感を感じた。

この警官からは、街中を歩いた時に感じた4人に対する忌避感がない。

この街の住人なら、警官であっても余所者に対する偏見を持っていてもおかしくなさそうだけれども。


「お巡りさんはここの人ですか?」


その質問に警官は、ん?とオティーリエを見た。


「いや、レチアから来たんだ。」


その答えに、なるほど、とオティーリエは思った。


オリベール王国の警察組織は内務省が統括していて、各州毎に州警察が設置されている。

さらに、その州警察の下部組織として各町、村毎に警察署が設置されていて、普段の警邏、犯罪対策はその各町、村毎の警察署が担っている。


この州の州警察はレチアにある。

昨晩、マルグリットはレチアに行ったとエマが言っていたので、、おそらくマルグリットが州警察に届け出て、この警官はレチアから来た州警察の警官なのだろう。

つまり、ガブリエルの事件としても動いていているということ。


こういったところから、マルグリットがきちんと対応出来ていることが分かる。

だけれど、そうなるともう一つ、疑問が。


「そうなんですね。

 昨晩からですよね?

 お疲れ様です。」

「ありがとう。

 でも、これも仕事だからね。」


ちょっと苦笑いで応える警官。


「ポール・セリジュアルの警察署とはどのように連携しているのですか?」


オティーリエの質問に、警官は驚いた顔をした後、警戒するような様子を見せた。


「それも機密事項なので言えない。

 どうしてそんなことを聞くんだい?」


警官の警戒心を解く意味もあって、オティーリエは小さく笑みを浮かべると、内緒話でもするように口に右手を添えて、ちょっと背伸びした。

警官の方はそれを見ても特に動かなかったので、オティーリエはそのまま、小声で話す。


「えっとですね。

 大きな声で言えないんですけど。

 ポール・セリジュアルの警察署長さん、ちょっと頼りないんですよ。

 だから、しっかりやってるのかなって聞いてみたくて。」


そう言って、オティーリエはちょっと悪戯っぽい顔をした。

その内容とオティーリエの態度に警官も絆されて、ちょっと警戒を緩めた。


「この街の警察署長はお嬢ちゃんに心配されるほど頼りないのかい?」

「あはは、はい、そうです。」


とりあえず普通の姿勢に戻ったオティーリエが苦笑いをしながら頷く。

それに、警官も少し苦笑いをしながら答えた。


「詳しくは言えないけど、お嬢ちゃんが心配するようなことはないよ。

 きちんと協力してやってるから。」

「そうなんですね。

 よかった。

 教えて下さってありがとうございます。」


オティーリエがペコリと頭を下げる。


「不躾な質問にお答え下さってありがとうございます。

 おかげさまでこの子も心配事が解消出来てよかったです。」


セレスフィアもお礼を言った。

これは、いざと言う時のために2人が関係者だと印象付けるための布石。

いざ、と言う時は訪れないだろう、と思いつつではあったけれど。


「これも本官の務めですので。

 ですが、心配が解消されたのでしたらよかったです。」


警官が敬礼を返した。


「それでは、失礼します。」

「ありがとうございました。」


セレスフィアとオティーリエがそう言って警官と笑顔を交わしてから、4人はその場を離れた。


それから、数歩進んだところで。


「フィア、なんかわたしのこと、子供扱いしてたよね。」

「ティリエがそう振る舞ったので合わせただけですよ。

 他意はありません。」


オティーリエが小声で抗議したけれど、セレスフィアは特に気にした様子もなく、澄ました表情で受け流した。

セレスフィアの言う通りだったので、オティーリエもそれ以上何も言えず。

むーっとセレスフィアを睨んでいたのだけれど、それも少しの間。

すぐに、ぷはっと息を吐いて笑い出した。

セレスフィアも、オティーリエが笑い出したのと一緒に、ふふふ、と小さく笑った。

反町長3人の行動の結果の一端が垣間見れました。

順調に進んでいるようです。


明日はちょっとお試しで19:00すぎに投稿予定です。

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