24.思い切り甘えちゃえ
4人は応接室を後にすると、ロハンにリアーヌの部屋に案内してもらった。
ピエールとマルグリットはまだ応接室にいて、今後の作戦会議をしている。
ロハンも4人を案内した後、応接室に戻って作戦会議に加わった。
4人がノックをすると、どうぞ、と中からエマの声がすると、セレスフィアがそっとオティーリエの背中を押した。
リアーヌと一番会話をしていたのはオティーリエ。
だからだろうと、オティーリエは一歩前に出ると、扉を開いた。
「失礼します。
リアーヌさん、大丈夫?」
そう声をかけながら、オティーリエはリアーヌの部屋に入った。
ベッドにリアーヌがいて、身体を起こしている。
そのリアーヌの横には、リアーヌの机の椅子を持って来て座っているエマがいた。
「あ、お姉さん。
うん、大丈夫。
母さんがちょっと大げさなんだよ。」
そのリアーヌの言葉に、エマはこらっとちょっと怒った顔を向けたけれど、そのエマの仕種はわざとらしかったし、顔も笑っていたので、リアーヌはどこ吹く風だった。
そのエマの様子から、本当にリアーヌは大丈夫だったんだろうなと読み取れたオティーリエは、ほっとした顔をした。
それから。
「入ってもいい?」
「うん、大丈夫。」
オティーリエは部屋に入った。
ただ、セレスフィア達は中の様子を見て、入って来なかった。
さすがに、あと3人も入れそうにない。
なので、エマは笑いながら椅子を机に戻すと、リアーヌには夕飯の支度をしてくるわね、と言って、それから4人には、よろしくお願いします、と言って自分は部屋を出て行った。
そうしてようやく、3人も部屋に入って来た。
「リアーヌさんが元気そうでよかった。
怪我はなかった?
手が震えたりしてない?」
オティーリエが尋ねると、リアーヌは明るく笑った。
「大丈夫だよ、お姉さん。
お母さんみたい。」
「エマさんも心配してたから。
リアーヌさんがいなくなってから、必死で探したみたいだよ。」
「うん、それは悪かったなって思ってる。
でも、あたしも必死だったから。」
「あ、ごめんなさい、もちろん、エマさんもわたし達も分かってるよ。
ただ、エマさんがリアーヌさんを愛してるんだって知って欲しかったから。
リアーヌさんを責めるつもりはないからね。」
「うん、ありがとう。
それは、うん、よく知ってる。」
リアーヌはちょっと恥ずかしそうに頷くと、照れ隠しの笑みを浮かべた。
「お姉さん、よくそんな恥ずかしいセリフ言えるね。
そっちの方が気になっちゃった。」
「え、そんなに恥ずかしいセリフだった?」
オティーリエがリアーヌに聞き返すと、リアーヌは自信満々に頷いた。
オティーリエはそれから、3人を見回すと、セレスフィアは曖昧な笑みを浮かべただけだったけれど、セリアもノシェもうんうんと頷いた。
「そ、そう。
えっと、どの辺が恥ずかしかった?」
オティーリエが今度は恥ずかしそうに質問すると。
「母さんがあたしを愛してるってとこ。
なかなか愛してるなんて言えないよ。」
リアーヌがふふふ、と笑いながら言った。
そんなリアーヌの様子に、本当に大丈夫なんだ、とオティーリエも安心する。
大丈夫そうなのを確認出来たので、オティーリエは真面目な話もすることにした。
なので、オティーリエが真面目な表情になる。
「リアーヌちゃん、まずはごめんなさい。
リアーヌちゃんの日記、読んじゃった。」
オティーリエがリアーヌに頭を下げた。
3人には頭を下げないように後ろでに合図しながら。
だって、読んだのはオティーリエだけだから。
「あ、うん、大丈夫大丈夫。
そのつもりで伝言残したし。
見つけたのがお姉さんでよかった。」
リアーヌは特に気にした様子もなく、大丈夫、と手を振りながら言った。
「ありがとう。
それでね、リアーヌさんに報告。
ロハンさん、今、ピエールさん、マルグリットさんと作戦会議してる。」
「作戦会議?」
「うん。
リアーヌさんが灯台で見つけた契約書と密輸品の一覧表が決定打になったよ。
あれを3人に渡したの。
そしたら、みんなで町長を捕まえるために頑張るって。」
「ホント?!」
オティーリエの報告に、リアーヌが大声を上げた。
「じゃあ、じゃあ、もしかして、父さん、もう苦しまなくて済むのかな。」
それから、リアーヌは期待に満ちた目でオティーリエに尋ねた。
そんなリアーヌに、オティーリエも頷いて返す。
「きっと、そうなると思う。
だって、リアーヌさんが見つけた証拠だから。
ロハンさんがそれを無駄になんてするわけないもの。」
「うん、そうだね、よかった。
本当によかった。」
リアーヌが安心したように胸の前で両手を組んで言うと、ふと気が付いてオティーリエを見た。
「・・・やっぱりお姉さん、恥ずかしいセリフ言うよね。」
リアーヌは猛然と頷いた後、照れ隠しのように一言、付け加えた。
それは、照れ隠しと同時に本音でもある。
「え、また?」
そう返されて、オティーリエはちょっと驚いた表情になった後、3人を見回した。
やはりセレスフィアは曖昧な笑みを浮かべて、セリアとノシェはうんうんと頷く。
「うーん、今度はどの辺?」
「父さんがあたしの見つけた証拠を無駄にしないってとこ。」
「えー、だって、そう思ったからなんだけど。」
「ティリエさん、いつもこうなの?」
リアーヌがオティーリエの後ろに立っている3人に向かって尋ねた。
「ええ。」
セレスフィアがにこやかに答えると、セリアとノシェも頷いた。
そんな4人に、オティーリエがちょっと、いやかなりショックを受けた顔になる。
「リアーヌさん、ご無事でなによりでした。
ただ、身体に別状はなくても、精神的な傷は目に見えませんので、気を付けて下さいね。」
それまでオティーリエに会話を任せていたセレスフィアが、オティーリエがショックを受けて黙ったのを期に、そう声をかけた。
「そうそう。
今日はいっぱいお母さんに甘えるといいよ。」
ノシェが付け足すと。
「お父さんにもね。
あ、でも、お父さんは今日は忙しいかな?」
「娘大事さに無理してでも時間作るよ。
ロハンさんはそういう人だと思う。」
セリアも付け足した。
余計な一言も。
その余計な一言の方は、ノシェが否定する。
「うん、ありがとう。
そうだね、せっかくだし、思いっきり甘えてみる。
あ、でも、甘えるって、どういうことすればいいと思う?」
リアーヌがけっこう真剣な顔で尋ねると。
「お、なかなか難しい質問だね。
そうだね、お菓子食べたい、とか?」
「3人一緒に寝たい、とか?」
ノシェとセリアがわざとらしく腕を組んで考えながら答えた。
「ただ一緒にいて欲しい、お話したい、でもいいと思いますよ。
ご両親もそれは望むところだと思いますし。
難しいことは考えずに、リアーヌさんが、ただ、お父様、お母様にして欲しいことを言えばいいのですよ。」
最後はセレスフィア。
優しく答える。
「分かった。
ありがとう、お姉さん達。
えっと、もう、灯台のことはお話しても大丈夫、なんだよね?」
リアーヌが3人にお礼を言った後、その会話を楽しそうに聞いていたオティーリエに尋ねた。
「うん、大丈夫。
これからはお父さんお母さんに秘密にすることなんてないから、安心して、いっぱいお話してあげて。」
「分かった、ありがとう、お姉さん。」
嬉しそうに頷くリアーヌ。
それを見て、オティーリエも頷いた。
4人とリアーヌの会話、です。
リアーヌは意外と大丈夫な様子。
強がっていなければ、という注釈付きですが、本当に大丈夫そうでした。




