表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒸気と白騎士 ~お忍び令嬢と従者とリスの事件手帖~  作者: 桐原コウ
第2話 きっかけは、ほんの小さな出来事
18/217

3.廃工場の入り口

オティーリエはそのまま、目星を付けた廃工場に向かった。

工場勤務者や工場に用事がある人のために西門から工業地帯まで、西の街道沿いにバスが出ていて、オティーリエはそのバスを利用して工業地帯へ向かう。


まだ午後の中途半端な時間のおかげで、乗客はほとんどいない。

オティーリエはナップザックを膝の上に抱えながら客席に座った。

そのまま、アーサーに状況を説明する。


『アーサー、これから工業地帯に向かいます。』

『分かっている。

 誘拐された人物の救出に向かうのであろう?

 我が主なら、そうするだろうと思っていた。』


アーサーは短時間の間に現代の言葉も文字も習得していた。

まだ完全ではないものの、ある程度は会話も文章も理解出来る。

ただ、オティーリエとの会話については、頑なに古語を維持しているけれど。


『ご理解いただけて何よりです。』

『理解したという意味では、今回の件で我が主について、少し認識を改めた。

 我が主は自ら事件に首を突っ込んでいるのだと思っていたが、それだけではなくて、事件の方も我が主に寄ってくるのだな。

 まさか、このような流れで事件に巻き込まれるとは思わなかった。』

『そうですね、小さなきっかけで事件に巻き込まれることも多いです。

 だからこそ、お城を出て街を見て回ることは重要なのです。』

『いや、それは我が主が城を抜け出す理由にならぬ。

 だが、それもまた必要なことなのだろうな。』


どこか悟ったように言うアーサー。

しっかりお小言混じりだったけれど、オティーリエはそちらには反応しないで後半にだけ返事をすることにした。


『はい、必要なことなのです。

 それより、事件について説明は不要なようですね。

 おそらく、現地でアーサーにもご協力をお願いすると思いますので、よろしくお願いしますね。』

『心得た。』


 ◇ ◇ ◇


オティーリエはあたりを付けた廃工場に到着した。

バスを使ったと言っても、移動にそこそこ時間はかかっている。

おかげで確実に16時の約束には間に合わないだろうけれど、仕方がない。

こんな中途半端な状態で二日も待てないのだから。


まずは、廃工場の周囲を探ってみる。

特に気になることはない。

だけど、もともとオティーリエも外から一目で分かるとは思っていなかったので、まずはこの廃工場を徹底調査。


この廃工場の入口は2か所。

道路に面した所にある大型車両が2台ていど通れるくらいの大きなシャッターと、工場脇の細い道を通って奥にある場所にある、おそらく人が出入りするための扉。


シャッターの方は人の力では持ち上げられないほどの大きさがあるので、人が出入りする扉の方を調べてみる。

すると、この扉には鍵はかかっていなくて、呆気ないほど簡単に扉が開いた。

それでも、オティーリエは警戒して、すぐには中に入らなかった。

おもむろにナップザックを背中からおろすと、ぷらーんとアーサーを取り出す。


『アーサー、お願いがあります。』

『なんなりと、我が主よ。

 まあ、何をして欲しいのかは、だいたい察しはついたが。』


アーサーはぷらーんとされたまま答えた。

この状態自体は特に気にしていないらしい。


『はい、おそらくお察しの通りです。

 この建物の捜索をお願いします。

 確信は持てていませんが、地下への階段があるかもしれませんので、それを探してきて欲しいのです。』

『心得た。

 ・・・その、降ろしてくれないか、我が主。』


ぷらーんとさせたまま降ろそうとしないオティーリエに、アーサーは珍しく戸惑った様子。


『可愛らしくて、つい、降ろすのを忘れていました。

 それでは、よろしくお願いしますね。

 あと、ここでお待ちしていますので、何かありましたら、念話でご連絡下さい。』

『了解した。』


オティーリエはアーサーを降ろすと、再びナップザックを背負って立ち上がった。

それからオティーリエが扉を小さく開けると、アーサーがその隙間から建物の中に入って行く。

オティーリエはアーサーの後ろ姿を見送ると、扉の横に立ったまま、じっと扉の隙間から中を眺めていた。


しばらくそうしていると。

突如、オティーリエの背後から手が伸びてきた。

扉の中を気にしていたせいで、オティーリエがその手に気づいた時には一瞬遅く。

次の瞬間には口を塞がれ、さらに身体に回された腕で両腕ごと抱え込まれて、全く身動きが取れないようにされてしまった。

再び、大活躍のアーサー君。

そして、オティーリエの背後から忍び寄ってきた人物とは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ