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蒸気と白騎士 ~お忍び令嬢と従者とリスの事件手帖~  作者: 桐原コウ
第6話 正義と不義の交わるところ
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14.起きてしまった再犯

翌週の月曜日の午前中、領主代行のお仕事の時間。

各行政担当者からの報告書を読んでいると、その中にマージナリィからの報告書が混ざっていた。


もちろん白騎士への挑戦状に関する報告書。

その報告書によると、各地に潜り込ませている産業スパイからは、オリベール王国および周辺諸国で新聞広告の写真のようなゴリラ型ロボットを作っている会社はなかったらしい。

調査を行った工場や研究所の一覧が国、地域毎に整理されて添付されていたけれど、主要なものは一通り網羅されていた。


本当に大型の物だとすると作ることのできる工場も限られてくるので、やはりあのゴリラ型ロボットは偽者、もしくは模型のような物だと思われる、と結ばれていた。


マージナリィの報告なので、確実な内容だろう。


また、広告主については新聞社に送られて来た依頼書の消印から現地の調査を行っているものの、依頼主を特定するまでには至っていないとのこと。

ただ、消印の地域が散っているとはいえ、日付に時間差があって、ちょうど車で移動していけば回れそうなことから、単独犯である可能性が高そうとのことだった。


まだもう少し情報が足りないなと思いつつ、オティーリエはヨハンにも見せようと思って、マージナリィからの報告書を他の書類から脇に退けた。


 ◇ ◇ ◇


その日の夜の新聞チェックの時間。

ヨハンがテーブルに新聞を置くと、オティーリエはヨハンにマージナリィからの報告書を渡した。

それを受け取ったヨハンは、席に座ると読み始めた。

さほどかからずに最後まで読み終わる。


「ふーん、まあ、でも、状況は変わらず、といったところだな。」

「はい。

 このまま、当日になるまで何も分からない、ということになりそうです。」

「当日になっても何も分からない可能性もあるけどな。」


と言ってから、ヨハンは申し訳なさそうな顔をした。


「とは言え、すまない、こっちも収穫なしだ。

 どこかに隠れてロボットを造れるような場所がないか探してもらったんだが、見つからないらしい。」

「分かりました、ありがとう。

 手がかりがありませんから、仕方ありませんよ。

 子供達にも、よくお礼を言っておいて下さい。」

「ああ。

 さて、じゃあ、気を取り直して新聞読んで行くか。」

「はい。」


『あの新聞広告とやらから追える状況はここまでだな。』

『そうですね。

 関係しそうな記事もありませんから、記者の方々も何も見つけられていないのだろうと思います。』

『こうなると、むしろメンテナンスベース関連で何らかの情報を得る方が早いかもしれないな。

 まだ何も動きはないようだが。』


メンテナンスベース、というのはアーサーのメンテナンスルームも含めたアーサーのメンテナンスのための基地のこと。

アーサーのメンテナンスルームを中心に、その周囲にメンテナンス用の部品倉庫や作業場、作業員のための宿舎などのスペースがあって、それらがすべて一つの円柱の中に入っている。

この円柱がメンテナンスベースで、床面積は央広場と同じ。


メンテナンスベース自体に物理的な入口はなく、転移の魔法陣を使ってのみ中に入ることが出来る。

ただ、アルビオン皇国時代はメンテナンスルーム以外の部屋へも転移の魔法陣があったのだけれど、今はもう失われてしまっている。


このため、メンテナンスルーム以外の部屋に入るには、一度、アーサーの操縦席に転移した後、アーサーから降りて、他の部屋に行くしかない。


もっとも、アーサーは物理的にメンテナンスルーム以外の部屋には入れないし、オティーリエもそもそもアーサーの所に行くのを控えているので、まだメンテナンスルーム以外の部屋を見たことはない。


『そうかもしれませんね。

 ライリーの報告を待ちましょう。』


そんなアーサーとの会話を横に新聞を読み進めていく中で、オティーリエの注意を引く記事が一つあった。

ミドル・スクールの生徒が一人、再び事件に巻き込まれて亡くなったという記事。


殺害された生徒の名前を含めて詳細は書かれていないものの、ミドル・スクールの事件である以上、ベリル・シャラムの殺害事件から続く事件だろう。

これで二人目。


「ヨハン、先週の事件が続いてしまったようです。」

「ん?」


オティーリエがその記事をヨハンに見せた。

オティーリエは痛まし気な表情を浮かべている。


「第二騎士団の警護が付いてるって話じゃなかったか?」

「はい。

 ですけれど、それを掻い潜って犯行が行われたようですね。」

「て、ことなのかな。

 うーん、こんな記事じゃあ、よく分からないな。」

「そうですね。

 出来れば第二騎士団に詳細をお伺いしたいところですけれど。」

「いや、さすがにリーエが直接ウォードの元を訪ねるのはダメだぞ。」


オティーリエが言い出す前にヨハンが釘を刺す。


「さすがにまだ時期尚早だと認識していますよ。」


オティーリエがそう答えると、ヨハンは目を険しくしてオティーリエを見た。


「時期尚早って。

 いや、今後もずっと、ウォードを訪ねるのはなしだからな。

 リーエは城の関係者だ。

 直接、総合庁舎に行くのは城の用事がある時だけだぞ。」

「そのくらいは心得ています。

 先ほどのは言葉のあやです。」

「いや、絶対、直接行く気だっただろ。」


ヨハンはオティーリエを疑わしそうに見つめる。

じっと。

オティーリエは一瞬、目を逸らした後、観念したようにヨハンを見た。


「なんとか出来ないかと考えたのは事実ですけれど、立場を心得ているのも事実ですよ。

 でも、こうして叱られてしまいましたし、とりあえず今は諦めます。」

「今は、ね。」


はあ、と小さくヨハンが溜息をつく。

本当にこのお嬢様は諦めが悪い。

自分のやりたいことは何が何でもやろうとする。

とは言え、ヨハンはとりあえず今は譲歩を引き出せたことでよしとすることにした。


「まあ、いいや。

 それで、前回の犯行から1週間か?

 捜査を急いだ方がいいな。」

「はい。

 明日の午後はこの事件に集中するつもりです。」

「分かった。」

2つ目の犯行が起きてしまいました。

本当は第二騎士団に情報を仕入れに行きたい令嬢ですが、それは止められてしまいます。

さすがに家女中の格好をした人物が第二騎士団を訪ねていけば、目立ちますので、仕方なく令嬢も納得しました。

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