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蒸気と白騎士 ~お忍び令嬢と従者とリスの事件手帖~  作者: 桐原コウ
第6話 正義と不義の交わるところ
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10.従者からの情報

夕食後、ヨハンが新聞を持ってオティーリエの部屋に入って来ると、ヨハンが座るのを待たずにオティーリエが質問した。


「ヨハン、明日の午後なのですけれど。

 ヨハンが護衛に就くのでしたら、家女中の姿である必要はありませんよね。

 普段着で街へ行こうと考えているのですけれど、よろしいですよね?」


ヨハンは話しかけられながら新聞をテーブルに置くと、椅子に座った。


「いや、俺だけじゃなくて、もう1人、メイかポーラのどちらかにも就いてもらう予定だ。

 だから、家女中の恰好で頼む。」


メイとポーラいうのは近衛騎士団の女性騎士。

二人とも、オティーリエとヨハンがヴェルハルン侯爵領に出向いた時にも護衛として付いて来ていた。


メイは庶民の服を着てしまえばとても騎士には見えない可愛らしい女性で、ポーラは背が高く凛とした佇まいのかっこいい女性だ。


「え、一匹狼のヨハンがどのような風の吹き回しですか?」


オティーリエが少し驚いて尋ねた。

基本的にヨハンは一人で行動しているので、オティーリエにとっては本当に意外だった。

そんなオティーリエの反応に、ヨハンは眉を顰めた。


「なんか、そう言われると俺がいつも一人でいるみたいだな。

 一人の方が身軽だから一人で動くことが多いだけで、別にいつも一人でいるわけじゃないぞ。」

「はい、それはもちろん知っています。

 だからこそ、不思議に思ったのです。

 どうしてメイかポーラと一緒なのですか?」


オティーリエに尋ねられて、ヨハンは小さく溜息をついてから答えた。


「いや、昨日、お嬢がセリアと話したと聞いたからさ。

 今後はセレスフィアやノシェと会うことも考えられし、そうすると俺では入りにくい店に入ることもあるだろうから、そういった時に二人に入ってもらおうと思ってさ。」

「なるほど、納得です。

 ・・・きっと、明日から早速、ヨハンの想定した事態になるでしょうし。」

「ああ、まあ、そうだろうな。」


明日はきっと、オティーリエがお城から出る所をノシェが待ち構えていることだろう。


「あと、ヨハン、明日の午後は、もう一つあります。

 今後のために、リーエの姿でルカに会いに行こうと考えています。

 昼食の後、すぐに向かいますので、ルカと会っている間、別の場所で待機していて下さい。」

「別に一緒でいいんじゃないか?」

「いえ、第一騎士団にはリーエのことをお話していませんから。

 リーエにヨハンが付き従っているのはおかしいでしょう?

 今のお話ですと、メイかポーラもご一緒のようですし。」


『これが、ルカを訪れるのを明日にした理由です。』

『なるほど、了解した。

 さすが主、よく知恵が回る。』

『知恵の前に悪、という一文字が付きそうな言い方ですね。』


少し咎めるような調子のオティーリエに、アーサーは気にした様子もなく答えた。


『まあ、そうだな。

 だが、この知恵は秘密の多い主が、円滑に物事を進めるために必要なものだ。

 否定的な意味ではないぞ。』

『それでも、やはり、少し引っかかります。』

『そこはもう主が自分の中で折り合いをつけるしかないな。』

『そうですね。

 善処します。』


オティーリエの説明に、ヨハンも納得したと頷いた。


「まあ、確かにそれもそうか。

 分かった。

 じゃあ、第一騎士団の騎士団寮が見える所で待ってるよ。」

「お願いします。」


ヨハンは一つ頷いて、別の話を始めた。


「ところで、昨日の広告のことなんだが、広場の使用の申請はなかったぞ。」

「やはり、そうでしたか。

 ひょっとすると、と思ったのですけれど、残念です。」

「まあ、広場を使うのに申請が必要だなんて、知ってる方が少ないだろうな。」


ヨハンがやれやれといったポーズで言った後、少し申し訳なさそうな表情になった。


「あとは、城内は収穫なしだ。

 チビ達には、今日、号令をかけてきたから、少し待ってくれ。」


そんなヨハンに、オティーリエは大丈夫です、と微笑みかける。


「分かりました。

 ありがとう、ヨハン。

 色々とお手間をおかけしますけれど、よろしくお願いしますね。」

「ああ、任せろ。

 ところで、爺はなんて言ってた?」

「爺やからは新聞広告の依頼主についてご報告いただきました。

 なんでも、新聞社には郵送で新聞広告の依頼が送付されて、送り主が書かれていなかったそうです。

 この先は、まだ調査中ですね。」

「ふうん。

 まあ、現時点ではそんなもんか。

 広告のロボットについては何て言ってた?

 あんなの、爺でも作れないだろ。」

「はい、現代の技術では不可能だと言っていました。」

「ああ、うん、やっぱそうだよな。」


オティーリエの返事に、ヨハンはうんうんと頷いた。


「ただ、白騎士の例がありますので、万が一は考えておいた方がいいとは仰っていましたけれど。

 あと、写真のロボットとは違うロボットが来る可能性は指摘しておきました。」

「ああ、なるほどな。

 了解。

 いずれにしても、お嬢も爺もゴリラはいないと思ってるってわけだ。

 じゃあ、広告自体については?」

「白騎士の情報を引き出すためのもので、後を追えばアーサーを狙う相手が分かるのではないかという見解で一致しました。」

「ん。

 俺も同じだ。

 まあ、現時点では、だけどな。」

「はい。

 まだ情報が少ないですからね。

 推測以上の物にならないのは致し方ございません。」


3人の見解がまとまったところで、このお話は終わり。

この後は新聞チェックを始めたけれど、今日は特に気になる記事は出ていなかった。

従者とのいつもの会話。

令嬢としては普段着で出かけたいところなのですが、なかなか希望通りにはいかないようです。

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