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 あたしの一日は、寮から始まる。

 平民向けに作られた五十人ほどが住んでいる寮。男女階層が違うものの、分け隔てなく接しており仲が良い。

 朝食も、夕食も用意されているのに、寮費は無料。学費の中に入っているらしい。そもそも、この学園に通えることが大層なことであるからだとか。まあ、平民は特待生にならないと学園に通うのは難しいらしいが。

 寝ぼけ眼で朝食を食べる。今日はパンと卵とベーコンとヨーグルト。模範的な朝、という感じがする。


「アスカちゃん、なんだかお客さんが来てるわよ〜」

「はーい?」


 寮母さんにそう言われて、首をかしげる。こんな朝っぱらから一体誰なのだ。乙女の朝は短い。髪もセットしなきゃだし、メイクはこの世界で出来ないけど、魔法で何とかするし、大変なのだ。まああたしは他の人にありのままの姿を見られたくはないので、ちゃんと整えてからご飯を食べている。


「ご飯食べてからでもいいかな。ちょっと待ってって伝えてくれますか?」

「顔が怖かったから早めにね」

「顔が怖い? 誰だろう」


 残り物を直ぐに口の中に詰めて、玄関へと向かう。


「げっ」


 そこにいたのは、皇女様の護衛であるクロイドだった。


「どうしてここに?」

「話があったんだ」 

「あたしはないですよ?」

「知っているが。俺にはあるんだ」

「…………」

「ちょっと、来い」

「朝から無理だって、学校始まるんだよ? 授業が〜」

「ホームルームくらい出なくても、支障はない」

「どれだけ話す気なの!」


 腕を掴まれて引っ張られる。こいつ、まじか。あたしの意見全無視かよ。


「靴を早く履け」

「…………」


 仕方がないので渋々靴を履くと、そのまま外へ連れ出される。そして目の前の馬車に連れ込まれた。


「ちょっと、学校直ぐ側なのに馬車でどこ行こうっていうの?」

「どこにも行かない。話をするだけだ」

「話って?」

「貴様が俺のことについて知っていたことだ。暗殺やその他諸々の話、上手く隠してきたつもりだったが、何故か貴様には知られていた。何故だ?」

「魔法かな」

「場合によっては殺す」

「殺す? 殺せるかなあ」


 あたしは余裕だった。自分が魔法を人より使えるという自負ではない。それよりももっと強い脅しがある。


「あたしの顔、首、どこでもいいから触ってみてよ。それで確かめて。呪いがあるから」

「ふっ、呪いだとそれが何だと言うんだ」

「下手したら爆発するんだよね。自爆用スイッチ的な?」


 その言葉を聞いた瞬間、彼はあたしの頬に触れ、その呪いを確かめ始めた。

 頬を撫でられると、顔が少し熱くなる。自分の目からは見れないが、多分あるのだろう。


「本当、だな。何の呪いかまでは分からない。かなり魔術に長けた人間が付けたように見える。一体、誰が」 

「これつけた人が持ってきた情報なんだよね〜。」

「それは、怖いな。いつか俺まで殺されてしまいそうだ」

「多分大丈夫だよ。そういう目的はないと思うから」

「目的は何だ」

「言えない。殺されるし。でも邪魔にはならないよ」

「そうか……苦労したのか」

「え? 苦労……まあしたと言えばしたかな」


 特に勉強面では。魔法はなんとか才能のおかげでできたけど、勉強は違う。やりたくないし、何度もおばあちゃんに教えられてあっちも呆れてた。

 顔を顰めるクロイド。多分なんか勘違いしてるけどいいだろう。


「強い当たりをして悪かったな。俺の情報を知ってたとはいえ、感謝はしている」

「感謝?」

「ああ。あの公爵家のジャックを追い返してくれていたし、愛人が十四人いるとは知らなかった。お嬢様もジャックに心を寄せる日は来ないだろう。あの人は誠実なお方だからな」

「…………」

「それに、名前も分からぬあの平民。お嬢様は、最近友達を欲しがっていたんだ。元より、友人は多かったが、それは皇女の立場である人間と仲良くしようという思惑が見え隠れしていてな。疲れ果てていた」

「大変なんだね」

「俺の目的がわかっているんだろう? 敵に塩を送るようなものだ」

「あたし、貴方の情報も渡したけど?」

「お嬢様は信じていない。それどころか俺への信頼が厚くなった……筈だ。」

「随分と自信がないんですね」

「歴代随一の優しい皇女で、最強の皇女だ。思考が読めない。それにしても──」


 私の顔をガン見して、ふむ、と顎に手を当てたクロイド。


「お嬢様が、黒魔術関連の本を熱心に読んでいたのはその為、か」

「ま、真面目だ」

「当たり前だ。彼女の魔術と剣に対する勤勉さを舐めるな。まあ、君のその呪いが解けたら、俺も殺しにかかるとするか」

「はあ!?」

「秘密を知る者は少ない方がいい。それに、お嬢様を狙っているんだろう?」


 狙っているっちゃいるけど、そんなライバルみたいなこと言われても。


「まあ確かにみんなよりあたしの方が幸せにできるけど、惚れさせる自信は結構少ないから、あんまり視界に入れないで、友達として認識してもらえたらなって」

「どうして急に自信がなくなるんだ……?」

「いや、イケメンと競い合う自信ないわ。女のあたしが。上手くいったらそりゃいけるだろうけど」


 そう、例えば男性陣のイベントを全部奪うようなことをすればあたしの好感度になるはずだから。

 待って、ゲームでは攻略対象の男性を攻略するためにヒロインが話しかけて、男性の好感度が上がっていたよな。あれあたしが考えてたの逆じゃん!?


「あれ……?」

「どうした、馬鹿みたいな顔をして」

「ま、まあ!? やってやりますとも! とりあえずあんた達よりあたしの方が人も殺さないし、性格いいし、革命を起こさないんだから! 選ばれるのはあたしってことね! 覚悟しなさい!」

「どうして急に自信が出たのか謎だが、やってみろ。女のお前がな」


 こ、こいつぅ〜〜〜!

 そもそも、あたしの目的は皇女様に変な虫が付かないようにして、幸せになってもらおうとしてたわけ。原作でそんな人と付き合っちゃうの、もっといい人いるよ〜って思ったから。だから、あたしの方がいいんだけど、最悪あたしが付き合わなくても、あたしが認められる人が見つけられればその人でいいと思う。つまりこの勝負はあたしルールでノーカン。

 しかし、友達か。いい情報を聞いた。友達の多いあたしにとって、友達を作るのは朝飯前ってやつですよ。待っててね、皇女様!

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