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 入学式。それは、柔らかな春の訪れを、告げるような素晴らしい日だ。

 てか、二回目の高校一年生とか、あたしダブってんじゃん。みんなから大人っぽいって言われちゃうかな〜なんて。ないか。あたし馬鹿だし。

 問題なのが特待生として入学してしまったことだ。入学試験の成績は抜群、筆記は九割、実技も上級魔法が使えるからと、こんなことになってしまった。

 おばあちゃんに呪いのことを聞いたが「あたしゃを信じろ」しか言われなかったし、特待生についても「何とかなる」しか言われなかった。あたしもしかしなくても大ピンチだ。


 そんなこんなで、物語の始まりとなる皇女様の代表挨拶を今は聞いている。

 ここから、このゲームは始まる。まず各登場人物の登場が入るのであたしはそれをぶち壊そうと思う。出会わせない手も考えたが、私の知らないところで出会うよりかはあたしの立ち会いの元出会ってもらったほうがいい。

 本当はこんなことしたくなかった。でも、流石に身体を触られた恨みを晴らさないとこっちもやってられないの。な〜んて。まあ、結果として善行なんだけど。

 どこで誰が出会うか、はっきりとは覚えていない。そんなあたしの完璧な作戦は、皇女様に付いていくことだった。


 代表挨拶が終わった後は、護衛のクロイド・スミスに褒められる。それが二人の出会い(ゲーム上では)。黒髪黒目の王道イケメンって感じで最初は好きだったけど、まああたしは苦手になった。

 彼は壇上から降りてきたところで、皇女様をさりげな~く褒めるのだ。それを、真似します。

 代表挨拶が終わり、拍手がホール上に響く。脇に帰ってきた皇女様。何故かそこにいる私。護衛の隣にいるのに、どうしてか誰も咎めない。

 学園の先生には「私は皇女の側近です」と伝え、護衛の前では司会進行の一人であるように振る舞うと、あら不思議。誰も私に何も言わなくなった。


「いや〜素晴らしい演説でしたね。シルビア様!」

「貴方、何故ここに……」

「演説の後は直ぐに感想を伝えたくて。緊張してました?」

「緊張など……」

「おい、お嬢様に親しく話すな。ただの生徒が無礼だぞ。君は一体誰なんだ」

「……シルビア様、」


 私は彼女の手を取り、口付けをした。


「声が、震えてたよ。手もこんなに冷えて、凄く頑張ったんだね」

「なっ……!?」


 なんて。これはクロイドの言葉。本家は敬語だけど、こんな感じのことを言っていたはずだ。


「こんな護衛なんてやめてあたしにしない? この人、他の護衛候補を暗殺して、自分が護衛になるように仕組むだけじゃなくて、皇女様をわざと襲わせ自分が助けたように手柄を立てるクズ男だよ?」

「っ何を言い出すのかと思えば、口から出任せを!」

「あたし、許せないなあ。こんなに人当たりのいい護衛さんが、裏でそんなことしてるなんて」

「許せないのは、貴方の方です。タチバナ様」

「え?」


 全部事実なのに。なんで。

 ってそうか、まだそんなの明るみになってないか。やば。今のあたし、ただ悪口言っただけの女──!?


「今は分からなくてもすぐに──」

「今すぐこの場を去ってください。第一、何故新入生として列に並ばずここにいるのですか」

「特待生だから?」

「す、すみません。今すぐに連れていきます!」


 あたし達の会話を聞いていたのか、先生が焦った顔をしてあたしを外につまみ、あろうことか説教をしだした。やれやれである。


「君名前は?」

「…………」

「はあ。まあいい。特待生とはいえ、皇女様にタメ口を使い、更には──」

「はいはい〜、あたし急いでるから行くね!」

「な、ッ!? どこへ!?」


 五十メートル走七秒台のあたしは先生を振り切り、すぐに隠れた。先生も面倒そうに頭を掻き、追いかけることはせず戻っていった。

 皇女様を狙う輩は少なくないのだ。こんなところで止まっている場合ではない。説教を五秒で終わらせたギネス世界記録持ちのあたしは、出口付近で隠れて待機することにした。

 現実世界ならまだしも、夢の世界なんだから説教くらいスキップしてもどうってことはない。

 式が終わったのかぞろぞろと生徒が出てくる。そして少しばかりして、人々が道を開けるようにして皇女様が出てきた。そこに、一人の影が。


「ごきげんよう皇女様。麗し──」

「麗しい朝ですね。皇女様」

「今度はどうしたんですか……」


 どういう意味なのかは知らない。ただ、今皇女様に話しかけたジャック・ペンドラゴンという人物がよく言うセリフなのだ。

 黄金の髪に、赤い目。ライオンのような獰猛さを備えた彼は俺様系のキャラクターだ。


「なんだ、このちっぽけな愚民は」

「愚民? あたしのこと」

「特待生のバッジまで付けよって。相当金がないようだが拾ってやろうか?」

「愛人が既に十四人もいて、これ以上に何を求めてるの? あたしで十五人目?」

「俺に詳しいんだな」

「詳しくなんてないけど。噂で聞いたの」

「ほう、平民如きが、公爵家の事情に詳しいとはな」


 くつくつと笑うジャック。少し気に食わないが、この人は特段人を殺したりする悪い人間ではない。ただの女好きだ。

 

「おっと、ご挨拶が遅れました。ジャック・ペンドラゴンです」

「シルビア・ローレライです。学外でもお会いしましたよね」

「皇女様の記憶に留れるなんて光栄です。嬉しくて涙が出そうだ。本当に俺だけのモノにしたくなる」

「ご冗談はやめてください」


 ジャックが伸ばしかけた手を、優しく防いだ皇女様は、柔らかに微笑んだ。


「そうそう、冗談も程々に。愛人が十四人もいて、全員美女で、とっかえひっかえの男が、どうして皇女様だけは本当の愛だと思えるのか、疑問だな〜」

「愚民、俺が皇女様に惚れているから嫉妬しているのか?」

「まさか、それこそ冗談も程々にしてほしいわね。あたしは正直者で、一人の女しか愛さない人が好きなの」

「興が冷めた。皇女様、今日は御暇します」


 にこりと貼り付けた笑顔で礼をしたジャックはすぐに立ち去っていった。


「タチバナ様、何がしたいんですか」

「お嬢様、この小娘に敬称はいらないかと」

「民を敬う気持ち無くしてこの国を統べることはできません。愛人が十四人いるのは本当なんですかね」

「本当だよ。だってあいつ否定しなかったでしょ。愛人がいるのは普通とはいえ、多いよねぇ。一週間どころか一日二人だよ」

「…………」


 小説版の最初は、皇女様はジャックに対して一番好感度が高かった。公爵家であり、アーサー王の末裔であり、イケメンで口達者なジャックは、世間知らずの娘を手中に入れるのに苦労しなかったのだ。ただ、愛人が十四人いると知ってからは別だった。

 愛人がいるとはいえ、ニ〜三人が普通。五人いてそこそこだねと言われるこの世に、十四人はとんでもない数。それを知った皇女様はちょっと落ち込む描写があった。


「少し、頭を冷やしたいです」

「外にあるケーキ屋さんにでも食べに行く? 良いところがあるんでしょ?」

「……いえ、大丈夫です。それより、何か私に話したいことがあるのではないんですか?」

「なんで?」

「お金が欲しいのなら用意しますよ。こっそり教えてください」

「なんで?」


 少し頬を赤らめた皇女様は私に近づき、耳元で囁いた。


「先日の件、怒ってるんでしょう……?」

「あれは気にしなくても……もういいよ」

「あ、貴方はあんなに気にしていたのに!?」

「嘘も方便ってやつで。てか同性に裸見ら──むぐっ」


 急に両手で口を抑えられた。


「声が大きいです」

「…………」


 自分の失態はその護衛には聞かれたくないということか? あたしは脅したりしませんよっと。

 手をどかして眉を顰めた皇女様を見つめると、恥ずかしそうに目を逸らした。顔がいいせいで、同性でも可愛いよなあと思う。


「ってか入学式終わった後って何もない感じ? 教室行かないとだよね?! クラスとかって」

「ああ。私達の学園は、そういうのではなくて、聖火に火を灯すくらいのことしかしませんから。参加してない貴族の方々も多いですよ」

「ほー」

「どうして何も知らないんですか。入学要項の巻物も届いたでしょう?」


 読むのが面倒くさいのもあったけど、ゲームの内容って分かるし何とかなるかなって思ったのは内緒だ。


「そうだね。じゃあほら、学内を歩かないの?」

「どうしてですか?」

「あと二人──、まだ皇女様に話がしたい人がいるかもだし?」

「はぁ……」


 不思議そうにする皇女様。分からないのも無理はない。私はこのコンテンツを知り尽くしているいわゆる王なのだから。


「それで、その人はどこにいるんですか?」

「知りません。だから付いていきます。あっ違う──」

「お嬢様、花でも見に行きましょう。お好きだと言っていたミモザの花が咲いているようですよ」

「いいですね。行きましょうか」

「平民の君は、もう帰ってくれ。話せて満足しただろう」

「いや、まだ少し」

「まあまあ」


 嫌そうにクロイドは頭を掻き。あたしを無理に追い出すことはしないようだった。

 原作では、ジャックの口説き文句に痺れを切らしたクロイドが、合意の元で無理やり庭園の花を見させていた。しまった忘れていた。あたしが連れ出していれば、好感度はあたしのものだったのに。いやまて、庭園にいるのは……。


「────」

「──」


 あたし抜きで、何か世間話をする二人に疎外感を感じるが、仕方がない。数年来の関係と、出会って二日のあたしでは天と地の差だ。

 庭園につくと、銀髪のくたびれたような少年の姿があった。ここの生徒なのに花に水をやり、なんと心優しい(?)のか。彼は平民出身のリオ・ウィリアムズだ。


「あら、花の管理は職員がしているはずですが」

「こ、皇女様!? ぼ、ぼくがやりたくてやってるんです。花は好きなので」

「そうですか。貴方はとても──」

「皇女様! お言葉ですが、彼はちょ〜っと、打算的なところがある人で、皇女様がこの庭園に来ることも、花が好きなことも考えて、ここで水やってたの」

「はぁ」

「平民出身の成り上がりって貴族に拾われること。皇女様ってのは宝くじを当てたような希少価値が高いもの。で、社交的な皇女様の趣味なんて至る所に広まってるの。将来そこの護衛だって殺すし、皇女様に嘘ついて革命起こすくらいには、こいつヤバい奴なの! てかなるの! なるでしょう未来では!」

「いきなり何を言い出すんですか……」

「なんならハッピーエンドだってヤンデレルートで本当にそれが真実の愛か? ってなるくらいだし、監禁されるし、どの層に向けたんだってなるくらいなの! ヤバい奴なの!」

「彼が困ってますよ……」

「とっとと立ち去れ平民!」

「貴方も平民でしょう……」


 バツの悪そうな顔をして、足早に去っていくリオ。

 彼はかなり賢い。平民からこの学園に入るくらいだから相当だ。魔法もかなりできる特待生。

 平民の立場に嫌気が指している彼の目的は成り上がり。それも皇女様を使って。それから惚れたプレイヤーを利用して、革命を起こすコマにする器用な人だ。嘘を流し、貴族クソじゃんとプレイヤーに思わせ、選択肢にはいを押し続ける愚か者が続出した。あたしもその一人。プレイヤーが革命のために敵を薙ぎ倒していくシーンは壮観そのもの。今じゃ胸糞悪い。

 そんな彼は唯一ハッピーエンドでもハッピーエンドではないような終わり方をする。賢い彼の真実の愛は監禁。好感度が上がるごとに不穏だったが、まさか100になると手足を鎖で繋がれている朝を迎えるとは。一部の人からは大好評だった。あたしは無理。

 そんなこんなでいい思い出がないのだ。だから好きではない。多分攻略対象の中で一番。


「はあ…………聞きたいことがあります」

「なんでもどーぞ!」

「先程から私について来て、関係のない方々の悪評を流して、何がしたいんですか!?」

「何って、別に、それが事実なんだから仕方ないじゃん」

「未来の話が、ですか? するだろうって推測の言葉で相手を傷つけるのは感心しませんよ」

「あのねえ、あんな人達に騙されてはいけないの。あたし、結構なんでも知ってるんだから。そうだな…………」


 ここで最も合理的に動いたと思われる理由はなんだろうか。簡単だ。


「シルビア様には助けていただいた手前、恩返しがしたいの」


 そっと手を取り、口付けをする。


「あたしの方が、シルビア様を幸せにできますよ?」

「……はあ!?」


 顔を真っ赤にした皇女様。それが面白くて笑えてしまう。さて、あたしは何がしたいんだろうか。とりあえず、この護衛を差し置いて親友になれるくらいには、心を開いてもらおうかな。




あとがき的な


コンテストの応募のためハイスピードで執筆しています。登場人物の行動に理解ができない点あるかもしれませんが、どこかで校正して直したいです。

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