43 別働隊
イリア様の身体を持つハジメ様に関して、リックは調べていた様で、私はバークと町中の馴染みのバーに来ていた。
「ダンナ、調べた結果なんですがね。面白い本と言うか、資料を拾ったんですよ」
リックは後ろのホークに指を差す。
「ヘヘヘッ。兄貴、レイさんなら喜んでくれるぜ」
手渡すホークに私は笑みを見せた。
「なんか、運河に死体が浮かんだそうだが、それはホークが流したのか?」
「ええ。例のホテルに行きました。ノエルさんが言っていた仕事のやつを横取りしにね」
「よくやった。コレが例の物なら私の一人勝ちだな」
「ノエルさんはレイさんが取ったら横取りするか、レイさんを殺しに来るでしょうからね」
私は本に目を通した・・・。
「ホーク、俺でも行ければ良かったんだがよ、ボスに止められていたんだ。何でもノエルが時間を合わせて突撃なんてな?んなもん、俺達はやっちまうぜ」
「バークさんは分かっていますね。オレッチもその手に乗るタイプですよ」
バークとホークは息が合うな。
「なる程。コレが例のウォーカー文書か。ホーク、大金星だぞ」
「ホーク、やったな!」
バークはホークと乾杯した。
そして、リックはタバコに火をつける。
「ヘヘヘッ。ダンナ、それを持っていたのは、やっぱりウォーカーでしたよ」
「やっぱりな。それにしてもよくウォーカーだと分かったな。顔を知っていたのか?」
「兄貴に言われて、行ったら奴が居ました。しかも、ホテルの地下に一人でね。ラムダに捨てられたんでしょ」
「生きている時に会いたかったな」
「残念ながら、魂を喰われているんで魔人化していましたよ。それに、ノエルさんの部下が追い掛ける奴を見掛けてホーク達に行かせましたが、ノエルさんの部下は死んでいたそうです。死体はノエルさんの部下が拾いに来ていましたが、ウォーカー文書はコチラに手に入れたので、怒るかもしれませんね」
「それを掠め取ったと言うのか?」
「我が弟ながら、よくやってくれましたよ」
「ホーク、何か食わないか?」
「オレッチは美味いもんなら何でも食いますよ!グルム国の上の者が食うものみたいなやつでも、刑務所で食うような残飯じゃないモンを食わせてくださいよ!」
このバーの女主人は私の支配下にあるから何を話しても漏れないが、食事も美味いのだ。
私はテーブルを指先で軽く叩いた。
「本日、御用意出来るのは、パスタ、チキン、サラダです」
「用意してやってくれ」
女主人の言葉にバークが口笛を吹いた。
「バークにも用意してくれ」
「かしこまりました。テーブルで待っていて下さい」
女主人は奥に消えていく。
「ホークよ~、お前は運が良いぜ」
「そうなんですか?」
ホークは目を輝かせている。
「この店はボスが親父様と使っているバーなんだが、食事も常連なら出してくれる。そんで、パスタは手打ちでミートは絶品。チキンはハーブを効かせて、オーブンで焼いている。もちろん肉汁はジュワッとしていて、肉もとろけそうな程に柔らかい。俺もボスに食べさせて貰ったが・・・心が躍るぜ」
「オレッチも心が躍りますぜ!」
「まあ、今回はホークの仕事のお礼だ。報奨金以外のサービスだな」
「ヘヘヘッ、いいんすかい?」
「ああ。もちろん、また頼むぞ」
「兄貴、最高だ。兄貴の言ったとおりこの帝国は最高だ!」
どんな暮らしをしていたか知らないが、相当の苦労はしているのだろうな。
「ホーク、準備が出来るまで、ウォーカーの話しを聞かせてくれるか?」
「はい。アレは三時間前の事です・・」
そうして、ホークの話しが始まった。