42 浮かんだ死体
部屋に呼ばれた後、ノエルは準備をとの事でハジメ様の部屋を後にした。
私はそんな部屋の中でハジメ様と二人になったので、話しをしていた。
「キールが男の子の服はダメって言っていたから、どうせならセリカと同じ物が良いなって言ったの」
「分かっています。ハジメ様がワガママを言う方ではない事は。もちろん、ワガママを言うべき時は言って下さい。それより、城を探索なさりたいならノエルさんを連れて行くと良いですよ。セリカも一緒に護衛につかせますから」
「いいの?敵がいるんでしょ?」
不安がるハジメ様に私は笑みを見せていた。
「ここは、ハジメ様の御姿を見せる事により抑制効果を出された方が宜しいんです。敵の半分は心が揺らいでいますので、アピールしましょう」
「うん!分かった!」
籠の鳥にするにはハジメ様の心が離れるキッカケを作ってイリア様の二の舞になったら困るからな。ここは、ハジメ様の自由を担保しよう。
「ハジメ様、他にキール様は何か仰っていましたか?」
「レイと同じ事を言っていた。仕事が残っているから、後三十分ぐらい暇なんだ。でも、レイとノエルの三人でキールは話しがしたいらしいよ」
「話しですか?」
何を言いたいんだ?
そこで、セリカが戻って来た。
「では、話をしてきますのでセリカと遊んでいて下さい」
「うん。セリカ、着替えたら一緒に城の中を見よう」
「レイの職場も見せて上げるね」
二人は楽しそうにしている。私は話しを聞きに外に出た。
部屋を出ると、ウォーレンとノエルが話をしていた。
「レイ、どうした?」
「ウォーレンこそ、どうかなされたのですか?」
「なーに、我も出張る事にしただけだ」
「ウォーレン、ならコレでラムダ・グプタを捕らえたら、一杯奢りにしませんか?」
「いいね~。そう言うのは好きだぜ」
「ノエルさん、誰が文書を手に入れてもいいですよね?」
ノエルはローウェル様の番人。断られるかと思ったが、何も私だけにやらせたいわけではなかったのか?
「遊びじゃないんだけど・・・さっきのお礼って事でいいですよ。でも、くれぐれもご注意をしてくださいね」
そこでレイラが走ってきた。
「ノエル、大変よ!」
心を落ちつかせる為なのか、彼女は深呼吸をした。
「ラムダ・グプタは見失ったけど、ウォーカーが運河で死体になって浮かんでいたわ」
「浮かんでいたの・・・当然よね」
「どう言う事ですか?」
私は首を傾げ問いていた?
「ラムダはこの地にはいないかもって事よ。まあ、足手まといになるしね。それに、ビーングも逃げているし、クビになったウォーカーに何の利用価値があるの?もっとドライに考えましょ」
「この地には居ない?」
私だけではない。皆も首を傾げていた。それに、続けるように。
「用済みなら喰うけど、こちら側に警告なら橋にでも吊すわ。でも、この地を離れるなら時間が掛からない様に運河に捨てて浮かべるわよ。色々と予定が壊れたのかしらね。・・・とも、取れるわ」
言って軽く笑うノエルが怖ろしく感じるが、コレが普通なんだ。
それとも何かを知っているのか?
時間を無駄にしないメイドらしいといえばメイドらしいがな。
なら、こちらとしてはリックを使おうじゃないか。
「失礼。私は所用があるので失礼します」
私はその場を離れた。
そして、私はジャックに出会い、すぐにさっきの話をした。
「じゃあ、リックに連絡を入れてきます」
彼が去った後、タバコに火を付け。そのままベランダに出た。
ラムダが逃げるならどこに?ウォーカーの死体があるなら、ウォーカー文書はどこに?
疑問だらけの中、他のメンバー・・・バークやエマ達の姿を見ないなと思った。
一体どうしたんだ?リックもどこに居るんだ?奴のホット・コールも無いじゃないか?いや、奴なら動いているな。
だがノエルはずい分と情報通だが何でそこまで詳しい?リックとノエルが繋がっているのか?
まあ、その事は後でこちら側でも調べよう。
そこで、私はタバコを灰皿で消した。