35 ハジメ様の企み?
私達はギルドに来ていた。
「ハジメ様、ギルドに来るのは初めてでしょうが、如何ですか?」
「意外と静かだね」
皆が気付いている。
この帝国で最も高貴な方の一人が来ていることに。何時もの乱痴気騒ぎなど出来るはずがない。そして、奥からやって来るD,Jを見てはな。いや、恐れているから出来ないのだろう。
昨日の事もあるしな。
「お嬢、どうしました?」
「あのね、レイがオーナーかD,Jさんに用があるんだって」
「用件ならオレが受けますよ。レイの坊ちゃんはそれでいいんだろ?」
「はい。構いません」
「セリカ、ウィーネ、向こうの魔術師のねいちゃんの所にお嬢を連れて行ってジュースでも飲んでいてくれ」
「ハジメ様、こっちだよ」
「あちらでジュースを飲みましょ」
ハジメ様は二人に手を繋がれて行った・・・さあ、どんな話しが聞けるのかな?
「座れよ、レイの坊ちゃん」
近くの椅子に私達は腰を落とした。
「兵を使えないなら、レイは犠牲になるが・・・分かっているのか?」
「それでも、やらなければいけない事もあるんですよ」
「元老院の所に殴り込みにでも行くのかい?」
「いいえ。本当にあるのかどうかは分かりませんが、501会議の首謀者を血祭りに上げるんですよ」
コレは賭けなんだ。無ければ、リックのミスだ。私も覚悟をしないとな。そして、新たな作戦を考えなくてはならない。
「何だソレと言いたいがオレの方にも話しは来ている。ウォーカー文書の存在も確信を得ている。知っているか?」
「いえ、知りません」
リックがエサを蒔いたから浮上した話しか?
「失礼ですが、ソレは何ですか?」
「ウォーカーと何者かがジェイソン・ローウェル様の予言書をトレースして、ソレを会議した時のが、501号室だったから、そんな名前が付いたが、その時に居た情報部の長官が、運河に浮かんでいたそうだ」
「さすがは、ギルドのオーナー。情報量が多いんですね。ですが、この情報は誰にも言わずにいました。裏に居るのは元老院のレックス・フィース。及び複数名。何人死んだか・・・次のターゲットはキール様ですよ」
私はタバコに火をつけて脳をクリーンにした。いや、ケムに巻くほどに鈍くさせていた。でないと、命の掛かった危険な話しは出来ない。
そんな私達のテーブルに酒が運ばれてきた。一口、酒を呑んだ。
「理由も理屈も分かるが、相手はどんな戦争を仕掛ける気だ?」
「静かなる戦争ですよ」
「暗殺と情報戦か?」
「手足になる兵士が百人程欲しいのですが、良いですか?」
D,Jは自分を指差す。
「おれ、ではダメか?」
「・・・構いませんよ」
何を考えているんだ?返答をしたものの、彼の考えを読めずに紫煙を吐いた。
「金貨は三十枚ですが、宜しいですか?」
彼は酒を一気に呑む。
「情報と酒で良い。何とかならないか?」
「分かりました」
「ボス、いいんですか?」
「そうですよ。本部長に怒られますよ」
バークとジャックは言うが、伝説のドラゴン・スレイヤーを手に入れるよりも確実で、強力な彼を手に入れられるなら安いものだ。もちろん、諸刃の剣を使う位には危険だが。
「ただし、条件付きですよ」
「情報ならやる。お嬢からの命令もあるしな。しかも、今と昔のお嬢からな」
なる程、ハジメ様は気を遣って頂けたようだな。
「どこで話しをしますか?」
「ココでは危険だ。ノエルの部下が居るからな。奥に来い」
ノエルか・・・動きすぎだ。
「バーク、警戒していろ。ジャック、お前は来い」
「了解」
「ボス、時間が来たらハジメ様を連れて帰りますか?」
「町の散歩に連れて行ってくれ。セリカとウィーネの護衛をつけてな」
「ノエルの部下は外にも居ますよ」
「気にするな」
バークを残し、私達は奥に入っていった。