さよならを言いたいが、
「大好きだよ、これからも」
なんて、口だけの言葉だったあの日。
彼の温もりを感じながら起きた早朝の薄暗い空気が私の鼻を刺激した。
携帯を覗いて時間を確認する事から始まる私の1日は、とても薄暗くて冷たかった。
「まだ5時か、」
昼夜逆転生活に揺さぶられた私の体は二度寝を続けようと、そっと彼の胸に戻った。
ふと、彼の携帯が鳴った。
見慣れた彼の某携帯会社チームの同僚の名前と、胸騒ぎがする通知を目にした。
恐る恐る確認すると、明らかに彼が好意を持って接している文面がそこにはあった。
私だけじゃなかったの?
途端、嫌悪と怒りが私全体を覆い隠した。
急いで友達にその事を電話で話して相談する。
薄く顔を濡らしながら、起こった出来事をありったけ話した。
友達は沢山、慰めてくれた。
「…詰めるか」
散々な相談の上、私の覚悟が決まった。
ねぇこれどういうつもり?私だけ愛してるんじゃなかったの。
そんな疑問と喧嘩したくない葛藤を合わせ、彼を起こした。
「とりあえずそこ座って。」
明朝5時、1月の半ばなお陰もあり、いつもより一層空気が凍りつくのを心身共に感じた。
泣き叫び、顔がぐちゃぐちゃになりながらも自分の意思や思いを伝える。
彼はこんな時でも焦る様子も無く、冷静に返答をしただけだった。
そんな彼がとても嫌で、でも好きで。
結局許してしまった。
それから月日が経ち、今でも不安に思う事は多々あった。
今日も前からしていた電話を。
お互いの温もりを画面越しで感じながら、時を過ごす。
でも、前みたいに優しく接してくれる事はやっぱり減っていて。
「私今度マツパしに行こうかな〜?」
返答は勿論ない。
前は一言一句、絶対反応してくれてたのに。
喧嘩も増えてきた、また繰り返すのか。
そんな苦い思いを胸に、今日もまた温もりという名前のエゴで安心させた。
「ねぇ、私の事好き?」
…なんて、何回も言ってきた。
また言ったら面倒くさがられるだろうか?
本当の気持ちを知りたい。
もう、冷めてるんでしょ、好きじゃないんでしょ。
段々お互いの糸が細くなっていくにつれ、私はただひたすら孤独を感じていた。
既読のつかないLINE
素っ気ない態度
愛想のない発言
愛情表現も、前よりしてくれなくなったよね。
私はいつも貴方の隣に居ると思ったら大違いだよ。
今日も不安と悲しさを胸に、夢へ落ちた。
いつも、私ばかりが一途で、切なくて。
貴方からの真実は貰えないままなのかな。
さよならを言いたいが、
あっさり、この関係を終わらせる事が出来たなら
どんなに幸せだっただろう?
てか、それをして幸せになれる保証なんて無いのにな。
いつの間にか、あの日の浮気以来、安心材料ばかり求めていて、信用すらままならなくなってしまっていた。
いつも通り起きて、腹は空いてないが取り敢えず目玉焼き焼いて頬張ってみる。
モヤモヤする気持ちばっかで、味なんてしないけど。
もし、別れてしまったとしたら
私に何が残ってくれるのかな。
こんな事されても、彼が居なくちゃ何も出来ないかも。
もうこの編物を修復するのなんて辞めてしまいたい、
新しい糸で、次は大きなセーターを
ほつれないしっかりしたマフラーを
力一杯編んで、暖かさを感じていたい。
でも、ずっと使ってきたから捨てられない。
何にせよ、苦い思い出よりも楽しい思い出の方が勝つから、やっぱりほつれてても
また直して、何回も編み直して
結局捨てられないまま大事にしてしまう。
ヤダなぁ、断捨離しっかり出来たらいいのに。
私は弱い。
今日もさよならを言いたいが、まだ好きだから
一番最初に戻すよ。
「大好きだよ」
「俺も大好き」
「本当に好き?」
「本当だよ、好きだから絶対に悲しませる事なんて、浮気なんて絶対しない」
「ねえ」
「ん?」
「絶対に捨てないでね」
「」