【魔天(第8号)】
~魔天~Vol.8
★連載1〈義経の首塚を追え〉第8回
「イザ」と言う言葉から連想してしまった事は…「伊邪那岐命」と「伊邪那美命」であった。
「イザ…ナギ?」
そしてそれを口にした時、空気が震え、草が、森が、山が揺れた。そして今まで眼前に聳え立っていた石柱は地面に轟音とともに飲み込まれていった。轟音は未だ続く。飲み込まれた石柱から放射状に八方から石柱が生えてきたのだ。八本の石柱が天を突いた後、再び中央の石柱が生えてきたのだ。この時、封印は解けたということなのだろう。この山の何かが変わっていた。何よりあの黒い存在が、中央の石柱の下に足を抱え座っているのだ。先程までとは訴え方が違っていた。記者は何かを感じ、黒い存在の前にしゃがみ込んだ。すると、声が再び聞こえてきたのだ。
「私は死してなお存在している…これもイザナギが死後の世界を作ってしまったせいだ…」
この存在が何者なのかはわからない。しかしこの地に留まっている事とこの石柱群があることと関連させて考えてしまうのはどうしても仕方が無い。
「貴女は私の誘いによってここまで辿りついた。ここが何処なのかも知らずに…」
記者は疑問をそのまま言葉にしていた。
「貴女は何者なの?」
と…。そして彼女は言ったのだ。
「私は伊邪那美…原初の二人にして世界で初めて死んだ者、最初に死人(死にながら生きている者)となった者…」
彼女は、そして語りだした。(つづく)
記者 御名神
★連載2〈南極の氷塊にうもれたミイラの謎〉第8回
前回、水晶球に〈Ark:アーク〉と名づけた我々は、更に研究を重ねていった。Arkの中には一体何が隠されているのか…それを突き止める為に。だが、Arkの中にあるものを突き止めるのにさしたる時間は要さなかった。エーテル、アストラル、イデアルの三層に、まるで赤子を包む産着の様に大切に包み込まれ守られていたのは、〈永久原子〉と呼ばれるものであった。
永久原子…資料記憶装置のごとく、過去のすべての生命体験を内在しており、どんな特殊な受肉に際しても過去の自らの肉体を再生させる事ができる、固体の資質を決定付けているもの…それが、我々の見解であった。我々は当初、それはDNAのようなものであろうと考えていた。しかし、DNAは〈物質的な肉体〉を構成させるためのものであり、永久原子はそのDNAすら書き換える力を持っている事が解ったのだ。
この時、我々は神への道程を見た気がした。だが、我々はまだ神への道を辿ろうとは思わない。純粋に新しい技術を求めていた。いや、だがしかし、それは結局の所人間が神の力に触れる事に他ならないのではないのか…。原初の人アダムは古き蛇に唆されたエバとともに知恵の実口にした。我々は今、神がアダムらが楽園を追放される原因となった、生命の実を口にしようとしているのかもしれない。(つづく)
記者 永瀬
★連載3〈神代オカルト調査ファイル〉第2回
『妣の力』
日本神話に頻繁に登場する装身具がある。それは〈櫛〉だ。日本神話に初めて櫛が登場したのは、伊邪那岐命の黄泉下りの節。死んだ妻を追って黄泉に行ったイザナギは伊邪那美命に出会うも、約束を破り黄泉の国から追われる事となる。その際、追手としてイザナミより黄泉醜女と雷という化け物が放たれた。それより脱するため、イザナギは櫛を投げつけ、化け物の気を逸らしたとされる。
民俗学者の柳田國男によれば、これを「櫛に象徴される妣の力による加護」としている。男性神が櫛のような装身具を身に付ける逸話はまだある。八俣遠呂智を倒した素差戔鳴男命は櫛名田比売をその名の通り、櫛に変えて身に付けて戦ったとされる。とはいえ、男性神が櫛のような装身具を身に付ける神話はさほど多くないともいえる。これは古代の日本が母権社会であったことを表す証拠であるとの見解もある。また古代の男達は、妣の力の加護を得ようとしていたのかもしれない。
また近代では〈女性の陰毛〉等がある。これは文字通りの物で、古来日本では、女性の陰毛は特別な力があるとされていた。戦時中、死地に赴く兵士は恋人の陰毛を弾除けの御守りとして持っていたとの話しもある。
これらから思うに、女性は男性を守り庇護する力を持っているとされ、古代よりその力を得るため、男性が女性の装身具を身に付ける行為に繋がっていったのだろう。
記者 新堂
★信者募集!
カルトNo007 青狼団
代表:不明
活動地区:不明
1991年以前に日本国内で結成された「黒魔術」集団。
英国、ドイツなどの伝統的儀式魔術を研究、実践する他、国内の邪悪な諸力を封じ込める事を使命とした戦死僧集団でもある。
当時の団員数は十三名。
え~、最近、信者募集の応募が少なかったので、現実世界に存在する黒魔術集団さんを紹介させていただきます。もし、団員の方が見てらっしゃったらゴメンなさい。「魔導書ソロモン王の鍵」の著者紹介を引用させていただきました。ホームページとか持ってましたら、御挨拶させて頂きます。
記者:藤守
(つづく)