この異世界は終わっている
この異世界は終わってる。
なにが終わっているかって?
そりゃ、人類滅亡の危機だよ。
残された人類国家はたった一つ。
四方を異種族に囲まれ、毎年のように攻め込まれている。
ここ100年は、戦時体制が解かれたことがないらしい。
防戦一方だ。
あ~ぁ。
この戦時体制が解かれれば、ステーキの一枚でも食べられるのかな~。
ステーキをつまみに、ビールを。
ジュルリッ。
「―――エールお替り!」
「主殿、もう配給権がありません。エールは飲めませんよ」
「うるへぃ。エールがなけりゃ水を飲めばいいのだ。水を持ってこ~い!」
「はいはい。取ってきますから落ち着いてください」
場所は冒険者ギルド、酒場。
僕は円卓に突っ伏してジョッキだけを掲げる。
声に応えて、パーティメンバーのアキレウスが立ち上がり、水を汲みに行ってくれた。
「ジャックさん、お酒を飲むのも大概にしないと、アキレウスさんに愛想つかされちゃいますよ」
顔を上げると、美人が。
我らが冒険者ギルド、看板受付嬢のミサさんではないか。
敬礼しておこう。
「パーティ解消されちゃってもいいんですか?」
「いやいやないですよ。アキレウスは僕がいないとこの世界に存在できないし」
「なんですかそれ」
笑った。可愛い。
酒が入っているからか、いつもの1.2倍かわいく見える。
普段から可愛いので、1.2倍されたら最強だ。
「冒険者ギルドも討伐依頼がたまってるんです。働いてください。上に掛け合って強制徴兵させちゃいますよ」
「―――すみません。調子乗ってました」
おっと。
一気に酒が抜けた。
今は異種族から大攻勢されている国家体制中。
簡単に赤紙が届く異世界だ。戦争反対。
「わかればよろしい。―――まぁ、こんなご時世お酒がないとやってられないのはわかりますけど…」
む?これは?
まさか、ミサさんお酒を飲みたい感じ?
お酒飲ませて、そのままいい感じにできちゃう流れ!?
「はっ、ははは!ミサさんも愚痴ですか?そういうときはお酒ですよ、お酒。おごります。おごらせてください!」
「ふふ。そんなつもりはなかったんですけど。じゃあ、頂いちゃいましょうかね」
届いたエールがミサさんの喉を滴る。
ゴくりっ。
え、えろい。
「―――美味しいっ」
僕も美味しかったです。(ピクリ)
「そういえば聞きました?また北国境の砦に蒼人狼の襲撃があったらしいですよ。それで100人規模の損害が生まれたって」
「あ~、聞いたような、聞いてないような。
「2カ月前には、森林妖の軍勢が攻めて来ましたし…。怖いですよねぇ」
「―――大丈夫です!もしもの時は!僕が、ミサさんを守りますから!」
ここで、ミサさんの手を握ればッ!
―――って、あれ?
ミサさんの手に逃げられた!
「あら、私は主人に守ってもらいますから大丈夫です」
あ、そうだった。
ミサさん既婚者だった。
「で、でも!僕は、寝取りにも興味あるので、いつでも大丈夫ですよ―――」
「―――ジャック。妻に変なことを吹き込まないでくれるかい」
あ~。
これはこれは、シリウスさん…。
相変わらずミサさんと仲のよろしいようで。
「―――ミサさんは冒険者全員の彼女だから」
二人にビール3杯ずつおごることになってしまいました。
マジで、そろそろ配給券無くなる。
依頼受けないと飯抜きかな?
ああ、世知辛い世の中だこと。
アキレウスに怒られる、これが僕の日常。