⭕ 可愛い護衛には御用心 1
──*──*──*── 施設内
──*──*──*── モニタリングルーム前
キノコン
「 マオさま、モニタリングルームへ着きましたエリ。
邪魔者を排除して来ますので暫く御待ちくださいエリ 」
マオ
「 排除?
排除って何するつもりだよ? 」
キノコン
「 モニタリングルームの中を御掃除致しますエリ 」
マオ
「 お掃除…… 」
何故だか激しく嫌な予感しかしないんだけどっ!!
マオ
「 掃除なんてしなくて良いよ!
そのままで良いから!! 」
キノコン
「 マオさま、害虫駆除は最優先事項ですエリ 」
マオ
「 害虫って……。
もしかして…中で試合をモニタリングしてる貴族の事じゃないよな? 」
キノコン
「 当然ですエリ。
セロさまの大切なマオさまの有害となる貴族は例外無く排除致しますエリ。
御任せくださいエリ! 」
キノコンは殺る気満々らしく、円らな瞳をキラキラさせながら、オレに向かって完璧な敬礼をビシッと決めてくれる。
上目遣いの敬礼って、可愛くてズッコイんだよっ!!
排除も駆除も許したくなっちゃうだろが!!
マオ
「 駄目だ!
どんな理由があっても──いや、直にオレへ危害を加える奴以外には手出しすんな 」
キノコン
「 ………………畏まりましたエリ… 」
うぅ……今にも泣きそうな顔しやがって……。
可愛いな、ちくしょう…。
キノコンは手をミョ~~~ンと伸ばすと器用にドアのノブを回してドアを開ける。
キノコン
「 マオさま、御入りくださいエリ 」
マオ
「 有り難な 」
とか言いつつ、オレより先にモニタリングルームへ入ったのはキノコンだった。
──*──*──*── モニタリングルーム
キノコンの後にオレがモニタリングルームの中へ入ると、ソファーには誰も座っておらず、真ん中──特等席の前にはキノコンが居て何かをしている??
試合をモニタリングしていた筈の貴族達は室内の隅に追いやられてブルブルと震えている。
恐怖に脅えているって感じだ。
命の危険を感じているのかも知れないな…。
キノコン
「 マオさま、此方に御座りくださいエリ。
害虫は隅へ追いやりましたエリ 」
マオ
「 やり過ぎじゃないか? 」
キノコン
「 このソファーはマオさま専用エリ。
貴族がソファーに座るなんて贅沢エリ。
貴族は床で十分エリ 」
マオ
「 ……………… 」
キノコン
「 マオさまの為に消毒して綺麗にしましたエリ。
遠慮せず、御座りくださいエリ 」
マオ
「 う、うん…… 」
3体のキノコンに護衛されながら、オレは誰も座っていないソファーの特等席に腰を下ろした。
キノコン
「 マオさま、オシボリですエリ。
御好きな方を御使いくださいませエリ 」
マオ
「 有り難な… 」
キノコンは丸盆の上に熱いオシボリ,温かいオシボリ,冷たいオシボリを乗せてオレの前に出してくれる。
オレは真ん中の熱くない温かいオシボリを手に取ると、両手を拭き拭きした。
キノコン
「 マオさま、使用済みのオシボリは此方へ御入れくださいエリ 」
分身体のキノコンが使用済みオシボリを入れる容器を持ちながら言うから、未だ使える使用済みオシボリを入れてあげた。
オシボリ容器を持ったキノコンは何故か嬉しそうだから「 有り難な 」と御礼を言っといた。
キノコン
「 マオさま、喉を潤すドリンクは如何ですかエリ。
ドリンクのメニューですエリ 」
マオ
「 そ…そうだな… 」
キノコンからドリンクメニュー表を受け取ったオレは、翻訳ルーペを左目に掛けて文字を読む。
マオ
「 …………イチゴソーダフロートにしようかな? 」
キノコン
「 畏まりましたエリ。
御用意致しますので暫く御待ちくださいエリ 」
そうキノコンが言うと別のキノコンがカウンターの中へ入って行く。
何か作業を始めた??
マオ
「 えと……あのキノコンはカウンターの奥で何をしてるんだ? 」
キノコン
「 マオさまの為にイチゴソーダフロートを作ってますエリ 」
マオ
「 キノコンって料理も出来るのか? 」
キノコン
「 マオさまの口に入る飲食物をカジノスタッフに作らせる訳にはいきませんエリ。
何処で誰が毒を盛るか分かりませんエリ。
可能性や機会を潰すのも護衛の役目ですエリ 」
マオ
「 オレに毒は効かないんだから其処迄徹底してくれなくても良いよ 」
キノコン
「 ボク達の創造主、セロさまの御命令は絶対ですエリ。
マオさまは無防備過ぎますエリ。
貴族から命を狙われている危機感を御持ちくださいエリ 」
耳が痛い事をキノコンに言われた……。
「 危機感が無い 」とか「 無防備だ 」とか言われても仕方無いと思うんだよな。
だってさ、オレは不老不死になったんだぞ。
オレの心臓はセロの体内の中で生きているから、殺されたって死ねない身体になったんだ。
だから無防備だったとしても何等問題はないんだよ。
キノコンにもオレに過保護にならないようにちゃんと説明しとかないといけないよな。
マオ
「 あのさ……、オレは不老不死だからさ、そんなに過保護にならなくても良いんだよ 」
キノコン
「 マオさまの御事情は存じ上げてますエリ。
セロさまの御命令は絶対ですエリ。
欲深い貴族の前で “ 不老不死 ” と言わない方が宜しいですエリ 」
マオ
「 そ…そうだな?
気を付けるよ… 」
キノコン
「 マオさま、御注文のイチゴソーダフロートですエリ。
御待たせ致しましたエリ 」
マオ
「 有り難うな。
上手に作ってるなぁ…。
美味しそうじゃん 」
キノコン
「 御褒め頂き有り難う御座いますエリ。
マオさまの御口に合わなければ作り直し致しますエリ 」
マオ
「 ──そんな事ないよ!
美味いよ。
美味しいイチゴソーダフロート、作ってくれて有り難な 」
キノコン
「 マオさま……(////)
光栄の極みですエリ~~~~(////)」
キノコンが「 うえ~~~~~ぇん 」と泣き出してしまった。
オレ……何か拙い事でも言っちゃったのか??
キノコン
「 マオさま、気になさらないでくださいませエリ。
感極まって感激しているだけですエリ 」
マオ
「 そ、そうなんだ……。
意外と涙脆いんだな…。
ははは…… 」
キノコン
「 マオさま、どうぞボクの上に足を御乗せくださいエリ 」
マオ
「 え?
足?? 」
キノコン
「 足を伸ばした方が楽ですエリ。
遠慮せずキノコンを踏み台にしてくださいエリ 」
マオ
「 踏み台は流石に一寸な…… 」
可愛いキノコンの頭の上──って事は笠の部分って事だろ?
乗せれるかよ!!
無茶苦茶な事を言い出すキノコンだな……。
キノコン
「 ……………………。
マオさまは……ボクの上に足を乗せるのは嫌ですかエリ?
茸菌が付着するのが嫌ですかエリ?
ボクでは踏み台には力不足ですかエリ~~~~ 」
キノコンが今にも泣きそうな顔でオレを上目遣いに見詰めて来る。
まるで飼い主に捨てられる寸前の子犬や子猫みたいに潤んだ瞳だ。
狡いな、もうっ!
何で、こんなにも可愛いんだよ!!
この可愛さは反則だぞ!!
キノコン達の声と姿の愛らしさに心がポッキリと折れてしまったオレは、キノコン達の好きにさせる事にした。
「 もう、勝手に──、好きにしてくれ!! 」って感じだ。
身の回りの事に関する一切合切をキノコン達に任せる事にして、オレは試合のモニタリングに集中する事にした。
因みに1体のキノコンは分裂して分身体を9体迄増やせるらしい。
体の大きさも自在に変えられるんだとか。
便利だな~~~~。
セロはとんでもない新種のキノコンを生み出してしまったらしい。
全く何してくれてんだろうな、セロは!!