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悪魔

さらに奥へ進んだ。

広い空間に出る。

小学校の校庭くらいはあるかも知れない。

しかしあくまでも洞窟なので、地面も壁も天も全て岩。


「ここ、いるね」


先生が辺りを見渡しながら言った。


「どこかなあ」

「あの、いるって何がいるんですか」

「悪魔」


ついに、ラスボスの登場ですか。

ゴクリ、と唾を飲み込む。


なんか緊張する。

杖を出して、構える。

先生も懐に手を入れていた。

背中を合わせて周囲を警戒。


と、その時だった。


勝手に、私の体が動いた。

意思と違う行動をし始めたのだ。


…?!


杖の先を先生へ向けて、


ーーフィアンマ!


炎魔法を放った。


……え?


アリス先生は咄嗟に防御結界で防いだ。

そして、目を見開いて言った。


「…助手ちゃん・・・?」


「アクア!」


今度は水魔法を先生に向けて放った。

あれ、なんで?!体が勝手に。

先生はまたもや防御する。


「どうしたの助手ちゃん、怒った…?」

「怒ってないです!体が勝手に…!」


パシッと先生が杖を持つ私の腕を掴んだ。

なおも私は魔法を放とうと腕に力が入っているが、先生の方が力が強い。


「パワー魔法だよ。魔力を体の一部に集中させて力を強化する。…で、助手ちゃんの体は勝手に動いてるんだよね」

「はい」


先生は不安げに首を傾げた。


「…一応確認だけど、それは、助手ちゃんの意思じゃないんだよね?」

「はい、もちろんです」


アリス先生はホッと息をつくと、杖で私の頭をポンと叩いた。

体の力が抜けていく。

勝手に体が動く事はなくなった。


「…これは……」

「助手ちゃんは操られてたんだよ」

「え? 誰にですか…?」

「悪魔だよ」


先生はそう言うと、近くにあった大きな岩の前へスタスタと歩いていき、杖先を向けた。

ぼかああああん

と岩が炸裂する。

中から、一人の男が出てきた。

若い。10代くらいかもしれない。

長いロン毛に、頭には黒い山羊のような角の生やし、黒いマントを羽織っている。


先生が言った。


「悪魔見っけ」


男はじっとアリス先生を睨むと、口を開いた。


「くっく…。ここまで辿り着いたのはお前らが初め………」


どかああああん


男が言い終わる前に、男の地面から爆発が起こった。

男の体は大きく跳ねたあと、ドサっと地面に叩きつけられた。

やったのは、杖を向けるアリス先生。

有無を言わせない気迫。

アリス先生は倒れ込む男の体を足で踏み躙った。

容赦ない。


「君はプート・サタナキアだね。文献で読んだ事があるよ。女性の体を自在に操る能力を持つ悪魔。あってますか?」

「…ぐっ…………なぜ…貴様は女なのに操る事が出来な…」


アリス先生が氷の弾丸を男の顔面に放った。

男の「ゔっ…」という低い呻き声が聞こえた。


「先生は質問に答えない子が大嫌いです」


…完全に先生モードに入ってる。

いやむしろこっちの方が素なのかな。


「『はい』か『いいえ』で答えてください。君はプート・サタナキア?」

「………そうだ…」

「村の女性達をさらったのは君?」

「…ああ………」

「攫われた女性達はどこにいるの?」

「………」


男が黙り込む。

先生がもう一度尋ねた。


「女性達は、どこですか?」

「………」


なおも、男は黙秘。

なんで何も答えないんだろう。


「あ…」


ふと、ある可能性が頭に浮かんだ。

ものすごく突飛な可能性。

だけどもしかすると、もしかするかも。


先生が男への詰問に気を取られているのを確認。

こっそりとその場を離れた。

先生がいる場所とは逆方向を向いて、しゃがみこんで、ポケットからから魔法の手鏡を出す。

パカリと開いた。


よし…。

とある事を確認するために、小声で語り掛ける。


鏡よ鏡ーー


***


「これで最後だよ、女性達はどこさ」


アリス先生は杖を男の顔面に向けて、脅すようにして尋ねた。

しかし、男が答えることはない。


先生は「はあ…」と息を吐いた後、力無く杖をプラーンと下げた。


「脅されているにも関わらず答える気なし、ですか…。さてどうしよう。一度村に連れ帰るか…」


私は先生の方へ駆け寄った。

先生は私に気づき、こちらに顔を向けた。


「助手ちゃん、どうしたの?」

「あ、えっとぉ…」


先ほど浮かんだ突飛な可能性。

鏡で確認すると、なんと当たっていた。

…どう説明するのが良いかなあ。

そのまま言うと、「なんで分かったの?」って聞かれそうだし…。

鏡のことは言えない。

うーん、ちょっと遠回りになっちゃうけど、質問という体でいくか。


「先生、この人の言ってる事って正しいんですか?」

「…どう言うこと?」

「悪魔って、嘘を言うイメージなので…」

「嘘…」


先生は顎に手を当て、考える素振りをした。

うんうん、と頭を縦に動かしている。

男の人との会話を脳内で再生しているのかもしれない。


先生は何か閃いたように言った。


「そうか…そう言うことか…。…いや、まだ決まった訳ではないが…」


このやり取りだけで私の言いたい事が伝わったのかな。


先生は男の側にしゃがみ込んだ。

男は黒いマントの下にシャツを着ている。

先生はそれを両手で掴み、ビリビリと裂いた。


「やはりそうか……」


先生は私の方へニヤリと笑いかけた。


「やっぱり君は優秀な助手だよ。助手ちゃんのお陰でこの件は解決に向かいそうだ」



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