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第一話 異世界転移

 長い夢を見ていた気がする。

 知らない場所で目を覚ました。

 なんて美しい場所なのだろう。

 この世のものとは思えない綺麗な場所だ。

 色とりどりの草花が咲き、小さな川がせせらいでいる。

 望遠鏡があり、いくつもある小さな窓の一つから下を見下ろしている。

 窓の外は夜空が広がっており星々が輝いている。

 ここは高い場所なのだろうか。

 あの美しい花はなんという名前なのだろうか。

 望遠鏡からは何が見えるのだろうか。

 そもそもここはどこなのだろうか。

 疑問は浮かぶばかりだ。


 「ようやく目を覚ましましたね」


 声が聞こえたほうを見るとそこには美しい女性が立っていた。

 長いさらさらの金色をした髪の毛、透き通る海のような青い瞳、陶磁器のようななめらかな肌、巨大な胸が特徴的だ。


 「ええっと……あなたは?」


 僕はその美女に声をかける。


 「私は女神ユエリア……あなたは私のいるこの天界まで来た……そうですね?」

 「そ、そうなんですか……僕は桜木希……やばい、何も覚えてない……なんだろう、この状況は」

 「どうやら記憶を失っているようですね……あなたは本を開き、この天界へ来てしまった……残念ですが、元の世界へ戻すことはできません」

 「なぜですか。女神なら記憶を戻して、僕を元の世界へ戻すこともできるでしょう」

 「本当に覚えていないようですね……いいでしょう、あなたにはその代わりにある世界へ行ってもらいたいのです」

 「代わり……ある世界……」


 ユエリアという女神は不思議なことを口にしている。

 なぜ元の世界へ帰してくれないのか、そもそも本当に女神なのか、ここは本当に天界なのか……謎は深まるばかりだ。

 そして、代わりにある世界へ行ってほしいと言っている……どういうことなのだろうか。


 「あなたにはこことは違う異世界、剣と魔法の世界に行ってもらいたいのです」

 「剣と魔法の世界……?」

 「そうです、あなたが暮らしていた世界とは別の世界です」


 女神は僕に真剣な表情で言う。


 「その世界では魔王軍による侵略が行われています。魔族の手下が世界中にはびこり、人々を襲っている……あなたにはその世界を救ってほしいのです」

 「僕にそんな力はないんですけど……」

 「大丈夫です、私が力を与えましょう」


 ユエリアは微笑みながら質問する。


 「一つだけ望みを叶えてあげます。何がいいですか? 魔法が唱えられるようになりたいですか? それとも伝説の剣が欲しいですか?」

 「ええっと……」


 まったく状況が読み込めない。

 世界を救う……僕が……そんなことできるはずがない……

 こうなったら……


 「女神様……その……」

 「決まりましたか?」



 「女神様、あなたのその大きな胸を揉みたいです」



 「……えっ? …………すみません、聞き間違いでしょうか……もう一度言ってください」



 僕はもう一度言う。



 「女神様、あなたのそのたわわに実った果実を揉みしだきたいのです」

 「ちょっと待ってください!? 世界より私の胸ですか!?」

 「はい」

 「即答ですか!?」


 だって僕に世界を救えるわけないだろう。

 それなら胸でも揉んで落ち着こうというわけだ。


 「まったく……仕方ありませんね……」

 「えっ!?」


 冗談で言ったのに本当に揉んでいいの!? 嘘でしょ!?


 「仕方ないです、あなたの望みはまたいつか叶えてあげます」

 「ええ……」


 ちょっと残念である。こうなったら、おあずけもまた一興と考えるしかない。

 

 「それはそうと、あなたにはさっそく異世界に行ってもらいます」

 「えっと、ちょっと心の準備が」

 「大丈夫、言葉が伝わるようにしておきますから。それから数日分の食料も」

 「もしかして怒ってます?」

 「いいえ?」


 まずい、怒っているかもしれない。分からないけど。


 「それではいってらっしゃい」

 「あっ、ちょっと」


 僕の体は光に包まれた。

 まわりの景色が変わっていく。

 どうやら別の世界へと転送されるようだ。


 こうして僕は異世界転移することになった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 結局何ももらえなかった。主人公の残念さがいいですね。異世界で同じ事を言ったら捕まりそうですが・・・。果たして?という所ですね。
2021/10/12 20:01 退会済み
管理
[良い点] こ、これは期待が出来そうです!!
2021/08/08 23:35 退会済み
管理
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