第6話 「コノコ、デンジェラーース!」~美少女の嘘がバレる時~
そして次の人の番となった。
「あ…ああ。閻魔大王……?」
既にパニックとなっているようだ。
そんな状況は慣れっこのようで、閻魔大王は決まったように言った。
「どうだ、俱生神?」
「ウーン、四十九日ノ法要ガ充分ナサレテイルノデ、セーフ!」
四十九日の法要?聞いたことはあるが、残された人が供養することで地獄行きを免れることもあるのか?剛は意外な事実を知った。
「あ、ありがとうございます!ばあちゃんか?供養してくれてありがとう!」
そういってまた一人、裁判が終わった。
そして、優花の番となったようだ。
この時になってようやく剛は、閻魔大王たちを見ることができる位置まで来た。
閻魔大王は、想像よりも小さかった。それが剛の第一印象だ。
人間の男性より少し大きいくらいで、思っていたより小さい。だが威厳がある。
頭に王と書いている赤い帽子を被っていて、深紅の着物を着ている。
巻物がいくつも置いてある重厚な机に座っており、まるで裁判官だ。
そして、横にいる俱生神と呼ばれるものはかなり異質だ。
驚いたのは、顔しかない、ということ。
その赤い顔の下は竿となっており、その竿の状態で閻魔大王に寄り添うように立っているのだ。
そして、そんな二人の前で優花も少し緊張しているようだ。
だが優花に関しては地獄行きなど有り得ない。そう思って剛は安心していた。
しかし何故か、優花はいきなり床に倒れ込んだ。
「私は、小さい頃から入院し十四歳で病死してしまって……。もっともっと生きたかったのに。お母さん、お父さんにも全然親孝行できなくて……、後悔しています。だから、早く来世で生まれ変わって、両親に……、会いたい」
そう言った時の優花の目には涙が光っていた。
周りの人達もその無垢な優花の姿にもらい泣きをしている。
だが閻魔大王はそんな優花には構いもせず、いつものセリフを言った。
「どうだ、俱生神?」
「閻魔大王サマ……、アウト―!デス」
「?」
優花の目からさっと涙が引いた。
周りの人々も意外な結果にざわついている。
優花がアウト?アウトってことは地獄行き?なぜだ?なぜ優花が?
「な、なぜですか?私がアウトって、どういうことですか?」
動揺する優花。それに対して俱生神は無機質に言い放った。
「コノコ、デンジェラーース!」
「久しぶりの危険人物ってことか、俱生神」
「ソウデゴザイマス、閻魔大王サマ」
「ちょ、ちょっと、どういうことですか??説明してください!」
優花はそのふんわりとした髪を振り乱して叫ぶ。
その時だった、優し気な女性の声がしたのは。
「お認めなさいませ」
皆が一斉に声の方向を見た。
それまで置物だと思っていたが、閻魔大王の左隣には、またもや首から下が竿の何かが立っていた。
俱生神とは正反対に、白くて優しい女性の顔をしている。
「同生天」
閻魔大王がその顔だけの女性に向かって呼びかけた。
「どう……しょう……てん?」
優花は不思議そうな顔をしている。
「自らの罪を、お認めなさいませ。ここでは通用しませんことよ」
「罪って、何ですか……?私が何をしたって言うんですか?」
優花はその同生天と呼ばれる顔に向かって抵抗する。
「仕方ないデスネ、ミセテアゲマス」
俱生神はそう言うと、どこからか大きな鏡を出現させた。