第4話 三途の川で美少女と出会う。そしてまた弱虫へ戻る
剛を救ってくれた女の子は三橋優花といった。剛と同じ中学二年生だ。
長くてふわふわした髪に、前髪は花のヘアピンで留めて、可愛らしい雰囲気だ。
「それでね、小さい頃から入院していたんだけど。遂に死んでしまったみたいなの」
優花は三途の川の端を渡っている間、剛に身の上話をした。
「さっきの六文銭はお母さんとお父さんが棺に入れてくれたみたい。あ、もちろん紙にプリントした偽物のお金よ。でも、こんな慣習が本当に死んでから役に立つなんて驚いちゃった」
優花はそう言ってふわっと笑った。
きっと両親に愛されて育ったんだろうな。
彼女の笑顔を見る度に剛はそう感じた。
「じゃあ次は、剛くんの事を聞かせて!」
「ぼ、僕のこと…?」
ウンウンと頷きながら優花は催促する。
「話すまでも……、無いよ。僕のことなんて」
剛はそう言って俯いた。
「……」
優花はぴたっと立ち止まる。
「なーんだ、思ってた人と違った」
「……?」
「さっき、見てたよ。賽の河原で」
「……あの時、君も居たのか?」
「すごく、カッコよかった」
そう言うと優花は剛をまっすぐ見た。
「過去がどうあれ、現在がどうあれ、変わろうとする君は、カッコよかった」
優花の意志を帯びた目に耐え切れず、剛は目を逸らす。
「あの時は、その……なぜか」
「この短時間で何があったのか知らないけど。がっかりした、すごく」
その言葉が剛に突き刺さる。
この短い時間、大したことはなかった。
ただ、母親が自分を愛していたか、不安になっただけだ。
ただそれだけで、ネガティブな剛に戻ってしまったのだ。
「あの…、あの…」
「じゃあね」
剛が弁明する前に、優花は先に行ってしまった。
取り残された剛はまた、弱虫な剛に戻ってしまっていた。