結婚したばかりの夫が愛する人ができたから家を出ていけと私を追い出しました。その真実の愛の相手とやらは私の妹でした。
「愛人の一人くらいは持たないとな!」
私はじいっと夫を見ます。
結婚してからこの人変わりました。優しくて、とても気づかいがある方だったのにねえ。
お金は何も言わずに持ち出す。帰りはいつも遅い。
釣った魚に餌はやらないとやらですか……。
「妻の妹を愛人にする夫なんて聞いたことがないです」
「真実の愛に私は目覚めた、お前と離縁ができないから、仕方なく側におくだけだ!」
妹は父が使用人に産ませた娘でした。実は1年前に身寄りを亡くして引きとったのですが、そのあとすぐうちの両親が亡くなり……。
財産を一応二人で分けて、別で暮らしていました。
一応うちは男爵、爵位はあったので、うちの旦那様はその爵位目当てといわれながらも私を愛しているといってくださったので結婚したのですが。
結婚したとたんこれです。
妹を愛人とする宣言をされて、私は家から追い出されました。
もともとは私の持ち物だったのですが……。
「……もしかしてと思ってましたが……」
帳簿を見て、私はどうも動きがおかしいと思っていましたが、どうも両親の生前から誰かが横領していたみたいです。あと……両親は病死となっていましたが。
「私も今更気が付くなんて……」
両親の墓を掘り返して、調べると、ヒ素がそこからは検出され……。ああ、多分……。
私は魔法を司る機関に申し出て記憶魔法をかけてもらいました。過去視の能力を持つ人が開発した特別な魔法、かなり大金を積み増した。もうこれで手持ちのお金はありませんわ……。
「ああ、あの子と旦那様が……」
両親の死から頭がろくに働いていなかったようです。家も夫に任せ、ぬけがらのようになっていた私でしたが……。こんな結果が出たということはそんなことも言っていられません。
「……イブラヒ・リュークと、マリアンネ・ミネス。証拠は明白だ。ミリアム・ミネスの訴えにより、お前たちをカイラム・ミネスと、リエル・ミネス殺害の犯人と認定する。横領の罪もある。死罪だ」
司法局に訴えた私でしたが、違う違うと夫と妹が思った通り犯人などではないというので、今まで集めた証拠を突きつけ、裁判の場所でも嘘を言いますか? と証人として証言しました。
泣きながら違う違うという二人を見て、私はどうしてもっと早く愛しているという夫の言葉を疑わなかったのか、お姉さまは私のことを嫌いですか? と言う妹にやさしくしてやらなければなんて思ったのか自分を呪いました。
お父様、お母様……申し訳ありません。
きいきいという音が聞こえます。死刑の方法は絞首刑です。
吊るされたその体が二つ、私は婚姻も破棄し、妹が横領した財産も戻ってきましたが、二人の吊るされた遺体を見ながら、むなしい気持ちを抱えていました。
もう少し早くに気が付いていたら……。
「そろそろ行きましょう、お嬢様」
「ええ、クロス」
私を呼ぶ声に振り向くと幼い頃から仕えてくれたクロスがいました。彼が今回のことを調べるのに力を貸してくれましたが、自分が館にいなかったばかりにと悲しげにまた謝ります。
「それもあの妹の企てたことだったので仕方ないですわ」
クロスに乱暴されたと訴えた妹のせいで解雇されたのですわ、私が呼び戻したんですが……。両親が死んだあとになってしまいましたの。
冤罪だと何度言ってもダメでした、あの子は大層口がうまく人を信じさせるのです。もうそんな妹はいない、ぎいぎいと揺れています。
「財産が戻ってきましたわ、これで家を立て直しましょう、手伝ってくれますわよねクロス?」
「はいお嬢様」
私は口に出して言わなかったひとつの想いがありました。いまは言えませんが……。クロスの手をそっと握り私は行きましょうと声をかけたのでした。
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